本記事は、沢渡 あまね氏の著書『定時で成果 残業ゼロでも目標を達成するチームづくりの教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の中から一部を抜粋・編集しています。
MVVを噛み砕く/または立てる
残業を減らして生まれた余白を次の価値に変えるために、まず必要なのが判断の「軸」です。その軸となるのがMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)です。
ミッション、ビジョン、バリューやパーパス、経営理念など(以降、これらをまとめてMVVと称します)を定義または再定義する企業や部署が増えてきました。人材や働き方の多様化が進む時代、組織やチームの求心力となる「拠りどころ」がいよいよ求められるのはいうまでもありません。
MVVの策定や活用は、ともすれば余裕がある人たちの雅な所作と思われがちですが、そのようなことは断じてありません。MVVは、日々の業務効率や生産性を高めるためにも大きく役立つのです。
MVVについての講釈を垂れる前に、次の2つの観点を示しておきます。
❶ 時間削減の観点
MVVは日々の仕事の「困ったときの拠りどころ」として機能します。
仮に、あなたが飲食店の店舗責任者で、スタッフが顧客からクレームを受けたとしましょう。そのクレームの内容とは「スタッフの説明が丁寧すぎてまどろっこしい」「待たされる時間がもったいないので、ITツールを活用して説明を省いてほしい」というものでした。
その顧客のクレームにどこまで時間をかけて真摯に受け止めるか、対応するか。これはあなたのチームの効率や生産性をも(もちろんスタッフのストレスや働きやすさにも)大きく左右する問題です。
もし、あなたのお店が次のようなMVVを掲げていたらどうでしょう。
「人のぬくもりで、感動体験を」
「すべてのお客様にゆとりあるひとときを」
このMVVに照らしあわせて考えたら、そのクレーム対応に残業してまで時間をかけるべきではなく、お店や会社のポリシーを淡々と説明してクローズするのが妥当ではないでしょうか。クレームがエスカレートするようであれば、いわゆるカスタマーハラスメントとして毅然と対応するプロセスに移行したほうがよいかもしれません。
以降同じようなクレームに遭遇した場合も、淡々と同様の対応をすればよく、スタッフは現場でいちいち悩まなくて済みます。
MVVは単なるスローガンではありません。本来、組織の意思決定や判断の拠りどころであり、チームひとり一人が仕事の仕方や対応などに「無駄に悩まなくて済む」「自分たちで行動の良し悪しを判断する」ための絶対的基準でもあるのです。
❷ 「らしさ」を研ぎ澄ませる観点
MVVにはその組織やチームの「らしさ」を研ぎ澄ませる意義ももたらします。
MVVを参照して日々現場での意思決定をしたり、行動の良し悪しを判断したりするだけでも、その組織らしさ、そのチームらしさが研ぎ澄まされていきます。MVVが、日々の行動のなかで体現されていくからです。
上位のMVVを参照し、チームの言葉に「翻訳」する
とはいえ、MVVは悪気なく「ふわっ」とします。だから、職場単位、チーム単位での日々の人々の行動とリンクしにくく、意識もされにくい。そして「社長室の額縁に飾られただけの美辞麗句を連ねたスローガン」に陥ってしまいがちです。
一方、組織が大きくなればなるほど、あるいはその組織の事業体やビジネスモデルなどが多岐にわたればわたるほど、MVVは抽象的になりがちです。これは言葉の宿命といっても過言ではありません。
MVVは「ふわっ」としたがる。だからこそ管理職やリーダーは、上位のMVVをチームの言葉に翻訳しましょう。
- そのMVVは自分たちのチームの景色に当てはめて考えると、どのような言い換えが可能か?
- 日々の現場での判断や意思決定のスピードを加速するには、そのMVVをどう解釈して、どう生かせばよいか?
これらを自問自答しつつ、メンバーと対話をしてください。メンバーの思考習慣や能力も高まります。
チームのMVVを創る/再定義する
上位のMVVがあまりに抽象的すぎるならば、あなたがチームのMVVを策定しましょう。すでにチームのMVVがある場合も、いまいち皆ピンときていなかったり、時代にそぐわなかったり、日々の仕事の意思決定や判断にまるで活用されていなかったりするようであれば、再定義をしてみるのもよいでしょう。
あなた一人で考えて決めるのもよいですが、可能であればチームメンバーとワークショップなどを重ねて決めていきましょう(あなたが進める自信がなければ、外部のファシリテーターを起用して)。
メンバーの主体性やエンゲージメントを高める効果もあります。なぜなら、それ自体が組織の意思決定に主体的に参画する体験ですから。
行動を促す一言
あなたの組織やチームにはMVVはあるか?
日々の意思決定や判断の際に機能しているか?
大手自動車会社、NTTデータなどを経て現職。500以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。主な著書は『ブリリアント・ジャーク静かにチームを壊す人たち』(三笠書房)、『組織の体質を現場から変える100の方法』(ダイヤモンド社)、『新時代を生き抜く越境思考』『EXジャーニー』『バリューサイクル・マネジメント』『職場の問題地図』(いずれも技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など。趣味はダムめぐり。#ダム際ワーキング推進者。
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