アジアクエスト株式会社

アジアクエスト株式会社は、2012年の創業以来、AIやIoT、クラウドを活用して企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するAIインテグレーターである。単なるシステム開発にとどまらず、戦略立案から実装、現場への定着まで顧客の成功に最後まで責任を持つ「伴走型DX」を強みとし、2021年には東証グロース市場への上場を果たした。

SI業界が抱える生産性の課題を解決すべく、現在は全社的なAIネイティブ体制へのシフトや、単なるオフショアにとどまらないグローバル市場の開拓を力強く推し進めている。

激変する業界において同社が描く今後の成長戦略と、未来を見据えた新たな経営体制の狙いについて、代表取締役会長CEOの桃井純氏に聞いた。

桃井純(ももい じゅん)──代表取締役会長CEO
1970年、東京都生まれ、明治大学卒業。IT業界にてシステム開発や新規事業に従事した後、2012年にアジアクエストを創業。2026年3月、会長に就任。
アジアクエスト株式会社
2012年、創業。AI・IoT・クラウドで企業のDXを支援するAIインテグレーター。戦略立案から開発、現場定着までを一貫して担う「伴走型DX」が強み。2021年、東証グロースに上場。
企業サイト:https://www.asia-quest.jp/

目次

  1. ただシステムを開発するだけではない「伴走型DX」とは?
  2. 上場後に構築した営業組織がさらなる成長の糧に
  3. 顧客のビジネスモデル変革を目指す
  4. 海外はオフショア拠点ではなく市場開拓の前線
  5. これから到来するSI業界の大激変

ただシステムを開発するだけではない「伴走型DX」とは?

── まず会社を立ち上げたきっかけを教えてください。

桃井氏(以下、敬称略) アジアクエストは2012年に創業しました。私はそれまでも長くIT業界におり、数社の経営を経験した後に、あらためて一人で立ち上げたのがこの会社です。

日本のIT業界、特にSI(システムインテグレーション)業界を変革したいという強い思いが、創業の原動力です。日本企業はSIerへの依存度が非常に高い一方で、IT業界全体の生産性が低いという課題があります。

この業界課題を解決し、日本のIT生産性を向上させる存在になりたいと考えました。また、社名に「アジアクエスト」と冠したとおり、当初から海外展開を明確にスコープに入れています。

── 海外市場を重視する理由は何でしょうか?

桃井 日本の人口減少にともない、国内経済が縮小することは避けられません。日本企業が生き残るためには、積極的に海外へ進出する必要があります。

同時に、深刻な人手不足の中で海外の優秀な人材を招き入れることも重要です。日本と海外をITでつなぐ、グローバルなITベンダーになることが私たちの大きな目標です。

── 現在はAIインテグレーションやDXソリューションを主軸にしていますが、これまでの事業の流れを教えてください。

桃井 もともとは受託のシステム開発会社としてスタートしました。クラウド、AI、IoTといった先端技術が登場するたびに、それらをいち早くサービスに取り入れてきました。

2010年代後半から「DX」という言葉が普及しましたが、私たちが提供してきた価値こそがまさに企業のDX支援そのものです。現在は事業領域をDX事業といい換えて展開しています。

── 強みである「伴走型DX」とは、具体的にどのような支援形態を指すのでしょうか?

桃井 顧客視点に立ち、戦略立案から実装、現場への定着までを一貫して支援する体制です。従来のシステムベンダーには、いわれた要件に基づいて開発するだけの会社が少なくありません。

一方でコンサルティングファームは、上流の戦略だけを提示して、その後の実装や結果には責任を持たない場合があります。これは顧客にとって大きなストレスとなります。

顧客の目的は技術の導入ではなく、自社の事業を成功させることです。私たちは顧客の業務や課題を深く理解し、どうすれば顧客が勝てるのかを共に考え、最後まで責任を持って伴走します。

── そのような支援を実現するために、社内ではどのような人材育成を行っていますか?

桃井 当社はエンジニアの比率が非常に高い組織ですが、全員を「ビジネスエンジニア」として教育しています。単にプログラミングができるだけの人材ではありません。

担当する顧客のビジネスモデルや業界特有の課題を理解し、技術を用いてビジネス課題を解決できる人材を育てています。この姿勢が、顧客からの高い評価につながっています。

── AIの台頭により、エンジニアに求められる資質も変化しているのでしょうか?

桃井 そのとおりです。現在は社内体制を完全に「AIネイティブ」へとシフトしている最中です。AIを活用することで、開発の生産性は5倍、10倍へと向上します。

これからのエンジニアには、物事を構造化してとらえる力や、AIに的確な指示を出すための言語化能力が求められます。技術だけでなく、より高度な思考力が重要になるということです。

上場後に構築した営業組織がさらなる成長の糧に

── 2021年に東証グロース市場へ上場されましたが、その主な目的を教えてください。

桃井 SI業界を変革するためには、一定の規模感が必要不可欠です。大規模な案件を安定して受託できる体制を構築するために、上場による社会的信頼の獲得を目指しました。

また、優秀な人材を継続的に採用し、組織をスケールさせるためにも上場は大きな武器となります。私たちの顧客は大手企業が中心であるため、信頼は取引の前提条件でもあります。

── 上場後、具体的な変化や手ごたえはありましたか?

桃井 新規取引の開始が非常にスムーズになりました。引き合いの数も増加し、採用競争力も確実に向上しています。上場企業としての責任を果たしながら、成長を加速させています。

── 今後の成長戦略において、営業体制の強化も重要になりますか?

桃井 実は、上場するまで当社には本格的な営業部隊が存在しませんでした。リピート率が約80%と高く、既存顧客からの紹介や口コミだけで事業が拡大してきたためです。

しかし、さらなる飛躍のためには、戦略的にターゲットへアプローチする「エンタープライズ営業」の力が必要です。ここ数年で構築した営業組織が、現在は大きな成果を出し始めています。

── ターゲットとする業界については、どのように広げる計画でしょうか?

桃井 現在は建設業界において圧倒的な実績と強みを持っていますが、この知見を他の業界へも横展開します。製造やインフラなど、DXのニーズが高い領域を深掘りします。

顧客のビジネスモデル変革を目指す

── AIは今後数年で、顧客の業務をどのように変えると予測していますか?

桃井 まずは人手不足の解消と業務の効率化が第一段階です。特に建設業界などは、熟練者の知見をデジタル化して再現性を持たせることが、急務となっています。

しかし、AIの真価は単なる効率化に留まりません。デジタルテクノロジーによって、これまで不可能だったことが可能になり、ビジネスモデルそのものが再定義されます。

── ビジネスモデルの再定義とは、具体的にどのようなことですか?

桃井 たとえばUberは、単なるタクシーの延長ではなく、移動や所有の概念を塗り替えました。これと同様の変化が、あらゆる業界でAIによって引き起こされるでしょう。

私たちはAIインテグレーターとして、顧客が新たなビジネスモデルを創出するためのリード役を担います。技術を手段として、顧客の事業を抜本的に変革することを目指します。

── M&Aの戦略についても、AIによって考え方は変化しましたか?

桃井 以前はエンジニアの人数を確保するためのM&Aも検討していましたが、現在は方針が異なります。AIによって開発の生産性が劇的に向上するため、単なる人数確保の価値は相対的に下がるのです。

今後は、特定の業界に対する深い知見、すなわち「ドメイン知識」を持つ企業との提携を重視します。AIを使いこなし、顧客の核心的な課題に刺さるソリューションを提供するためです。

海外はオフショア拠点ではなく市場開拓の前線

── 海外拠点との連携や、グローバル戦略の現状について教えてください。

桃井 多くのIT企業が海外拠点を「安価な労働力」として、つまりオフショア拠点としてとらえていますが、私たちは異なります。海外市場そのものの開拓と、優秀な人材の獲得が目的です。

インドネシアやマレーシアの拠点では、現地のローカル企業や日系企業への営業活動を積極的に行っています。日本と同等の、あるいはそれ以上の技術力を持つメンバーが揃っています。

── 拠点間での具体的なシナジーはどのように生まれているのでしょうか?

桃井 私たちは「クロスボーダープロジェクト」と呼んでいますが、国境を越えて最適なリソースを組み合わせたチームを編成しています。

海外の優秀な人材と日本のメンバーが一体となり、グローバルな視点でプロジェクトを遂行します。この多様性と技術力の融合が、私たちの大きな競争優位性です。

── 採用面でも、グローバルな視点は欠かせない要素ですね。

桃井 国内だけでなく、世界中から優秀な人材を集められる体制は大きな利点です。AI時代において、リーダーシップやコミュニケーション能力を備えた人材の価値はいっそう高まります。

営業職についても、AIに代替されにくい領域として引き続き強化します。顧客とのリレーションを築き、潜在的なニーズを掘り起こす力は、今後も成長を支える柱になるからです。

これから到来するSI業界の大激変

── 今年(2026年)3月に社長から会長に就任したそうですが、この体制変更の狙いを教えてください。

桃井 これからの5年間で、SI業界には凄まじい地殻変動が起きます。プレイヤーの数は激減し、勝ち組と負け組が明確に分かれる過酷な時代が来ます。

この大変動の中で勝ち残り、リーディングカンパニーになるための布石が今回の体制変更です。未来をイメージし、そこから逆算して組織や事業をつくる役割に私が専念します。

── 代表取締役会長CEOと、代表取締役社長COOの二人三脚体制ですね。

桃井 はい。変化が激しく未来の予測が困難な時代において、中長期的な戦略立案と、足元の事業執行を同一人物が担うことには限界があります。

役割を明確に分担することで、変化への対応スピードを最大化するのが目的です。私は会長として、アジアクエストが10年後、20年後も価値を提供し続けるための土台を築きます。

氏名
桃井純(ももい じゅん)
社名
アジアクエスト株式会社
役職
代表取締役会長CEO

関連記事