(この記事は2015年1月19日に掲載されたものです。提供: Leeways Online )
米国経済は堅調でゆるやかな景気回復局面へ
米国不動産市況について具体的に触れる前に、まず、現時点の経済状況を見ていきたい。
2014年12月5日、ついに1ドル121円を超える円安となった。実に7年4か月ぶりの円安水準である。1ドル120円を超えて121円まで円安が進行した背景には、12月5日に発表された米国雇用統計の影響が大きい。2014年12月5日の日本経済新聞は、米雇用統計(11月)における非農業部門の雇用者数の前月比伸び率が市場予想(23万人増)を大きく超え32万1000人増となったと報じている。
この11月の雇用統計の発表を受けて、同日のダウ工業株30種平均は58ドル高の1万7958ドル79セントと最高値を更新。ちなみに雇用統計は9月分(25.6万人→27.1万人)、10月分(21.4万人→24.3万人)もそれぞれ上方修正されている。また、米国・労働省のデータでは、「民間部門で雇用されている人々の週平均労働時間は34.6 時間と、金融危機後では最も長期化し」、平均時給も「前月から0.09 ドル増えて24.66 ドル」となり、また「前年比の伸び率は2.1%上昇」となっている。
雇用という実需が数ヶ月に渡って堅調に推移していることから、アメリカ経済の見通しは、「明るい」と見るのが一般的だろう。サブプライムローンのような金融分野の盛り上がりによる「張りぼての好景気」ではなく、あくまでも実需中心の「堅調でゆるやかな景気回復」の可能性が高いというわけだ。
実際に、2014年12月後半に発表された米国のGDPは11年ぶりの高い伸びとなっているし、ドルはすべての主要通貨に対して上昇を強め続けている。
量的緩和の終了 利上げの開始が近い?
次に、住宅市況に大きな影響を与える金利の動向を見ていきたい。これは、日本の金融政策と比較すると分かりやすくなる。現時点のアメリカと日本の金融政策は対極的だからだ。
日本では10月31日に日銀黒田総裁がいわゆる「黒田バズーカ」を発動した。長期国債を30兆円増の年間80兆円ベースで買入れ、ETFは年間3兆円、REITは900億円と、いずれも今までの3倍のペースで買い入れるとしたのだ。
一方、アメリカはその2日前の10月29日に量的緩和の終了を発表した。焦点はいつ利上げを始めるかということに移っている。
米国不動産市況に不安要因は見当たらないが…
ここまで「堅調な景気回復」と「近い将来の利上げ」について触れてきたが、この2つの要因は、不動産市況にどんな影響を与えるのだろうか。
金利上昇は不動産の運用環境を厳しくするため、投資家の意欲を減退させる。利上げは、不動産市況のブレーキとなる要素を含んでいるわけだが、堅調で緩やかな景気回復は、賃料や不動産価値の上昇を生みだし金利上昇分を吸収する。つまり、金利上昇そのものが問題なわけでなく、「金利上昇と賃料・不動産価値が連動するか」がポイントなわけだが、この点については、世界最大級の不動産サービス会社であるクッシュマン社が「テクノロジーやエネルギー、メディア関連企業などが米国のオフィスビル需要を牽引することで、オフィスの空室率が抑制され、2014年から2015年の賃料は大幅な上昇が継続する」と述べるなど、米国の不動産市況全体が安定的に推移すると見る向きが強い。
このように米国の不動産市況にフォーカスすると好材料ばかりが揃うが、経済状況をグローバル視点で見ると、不安定要因も多い。その代表が、ルーブル暴落だろう。実際に1990年代のルーブル暴落は米国の大手ヘッジファンドを破綻させ、米経済に大きな打撃を与えた。これ以外にも、ヨーロッパや中国の経済の停滞や世界的な原油安も見逃せない。グローバル化が進んだ今、米国の長期的な一人勝ちは考えにくい。米国経済や不動産市況の景気回復が本格化したと言い切るには、主要各国の安定化がひとつの条件となるだろう。
(提供: Leeways online )
(ZUU online)
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