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(写真=PIXTA)

日本株が底堅い。昨日も日経平均は200円安まで売られた後、結局16円安まで戻して引けた。今日も大引けは約130円安だが、ギリシャ不安やFOMCを控えた状況のなか下げ渋ったほうだろう。少なくとも欧米株の崩れ方に比べればしっかりしている。

現在、グローバルな株式市場を揺さぶっているのは長期金利の上昇である。もっとも急激な上昇となったのが独10年債利回りだが、これを受けて独DAX指数は高値からの下落率が10%を超えた。定義からすれば弱気相場入りである。

米国10年債利回りは、もともと水準が高い上に1月末からみれば1%弱上昇している。NYダウ平均は年初来のリターンが再びマイナスに沈んだ。年内の利上げが取沙汰される国の株価だけに当然の値動きだろう。

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日本の長期金利も上昇したが、それでも1月のボトムからわずか0.3%強上がっただけ。金利上昇が株式市場の波乱要因となる状況では、金利が構造的に上がりにくい日本株が結局いちばん優位な立場にあるというわけだ。

個人投資家の押し目買いや公的資金の買い支え期待、コーポレートガバナンス改革など日本株を取り巻く投資環境は良好な材料が豊富だが、今後米国の利上げ時期がより明確になり世界の金利に上昇圧力がかかる局面では、「日本の長期金利の構造的な低位安定」が日本株にとって最大の買い材料と評価されるかもしれない。

なぜ日本の金利は構造的に上昇しにくいのか?それは民間部門、すなわち企業と家計の大幅な貯蓄超過のせいである。民間部門の貯蓄超過が政府部門の赤字を埋めてなお資金余剰の状態であり、海外の赤字をファイナンスする格好になっている。

マクロのISバランスで言えば経常収支が黒字であることの裏返しである。これが強烈な金融機関のカネ余りの背景で、日本国債に対する巨額の潜在需要を生んでいる。

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しかし、足元ではROE重視を軸とした企業改革の機運が広がり、企業は内部留保を取り崩し活きたおカネの使い方を模索し始めている。企業部門は貯蓄超過が解消に向かう兆しが出ている。

一方、家計の貯蓄超過はすぐには解消しないが、それでも少子高齢化で家計はいずれ貯蓄を取り崩す方向に向かうだろう。今日明日すぐに、という話ではないが、日本の長期金利が上昇しない前提が崩れる日はそれほど先ではないかもしれない。

ただ、それが民間、特に企業の貯蓄超過が解消し、投資需要が出て銀行貸し出しが伸びるなら、それは健全なおカネの循環である。そのなかでの金利上昇であれば、株式市場にとっては悪材料とはならないだろう。

広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト

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