企業貯蓄率は順調に低下

企業貯蓄率は2010年7-9月期の+8.5%のピークから順調に低下し、アベノミクスによりその低下は加速してきた。6月29日に公表された日銀資金循環統計では、1-3月期の企業貯蓄率は+1.4%へ、10-12月期の+1.1%から、海外景気の回復の一時的な鈍化などで若干リバウンドしたが、7-9月期の水準(+2.6%)よりかなり下である。

4月の新年度入り後の企業活動は、設備投資と雇用の拡大を含め、更に活性化しているとみられる。デフレ完全脱却に向けたアベノミクスの経過報告は、その効果のバロメーターである企業貯蓄率は順調に低下しており、良好であると引き続き判断する。

企業のデレバレッジが完全に止まるとともに、総需要を破壊する力が完全に消滅し、構造的な内需低迷とデフレが終焉するポイントである企業貯蓄率0%までもう一息のところまでたどり着いた。

デフレ完全脱却に向けたアベノミクスの経過報告は、その効果のバロメーターである企業貯蓄率は順調に低下しており、良好であると引き続き判断する。2016年の夏の参議院選挙までには、企業貯蓄率は0%近辺に到達し、構造的な内需低迷とデフレからの完全脱却を安倍首相が宣言し、その成果を国民にアピールしていくことになると考えられる。

しかし、消費税率引き上げや海外景気の回復の一時的な鈍化などで企業貯蓄率は若干リバウンドしてしまった経緯があるだけに、景気回復に慢心して、財政・金融政策によるサポートの継続、そして成長戦略の推進など、企業を刺激し続けることを怠ってしまうと、大きなリスクとなろう。

これだけ長く続いた構造的な内需低迷とデフレからの脱却へは、成果が期待・予想ではなく現実として見えるまでは、過度ではないかと不安になるほどの政策を打ち続けることが必要である。拙速な財政緊縮や金融引き締めがデフレ完全脱却の妨げになってきた失政の歴史を考えれば、政策は拙速な引き締めより過度な緩和の方がましだろう。

さらに踏み込んだ法人税率引き下げと投資・R&D減税(その他の増税でオフセットしないこと)、社会保障費を除いた歳出水準の維持(社会保障費の増加を他の歳出削減でオフセットしないこと)、そして2%の物価目標の達成をより確かなものとするための追加金融緩和などが考えられる。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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