一見、経営難とは無縁のようにみえる国立大学も大学サバイバルと無縁ではない。「マーチ(MARCH)」というくくりで呼ばれる明治大学(M)、青山学院大学(A)、立教大学(R)、中央大学(C)、法政大学(H)の東京都内の私立大学5校に近年、茨城、埼玉など関東近郊の国公立大学の受験生が流れる傾向があるという。

地方都市で大学に通うより、刺激の多い都内で学生時代を過ごしたいというニーズは根強い。国立大学も手をこまねいていては定員割れの危機に瀕し、国からの補助金が打ち切られる恐れがある。

就職率で人気急騰

一方で、人気急上昇の大学もある。秋田市の国際教養大学(AIU)だ。04年に設置された地方独立行政法人が運営する公立大学で、学生数3千人余りのリベラルアーツ(教養)系の単科大学だが、設立10年余りと歴史が浅いのに年を重ねるごとに入学難易度が上がっている。14年度卒業生の就職率は100%で、就職先も大手製造業や商社などが少なくない。

人気の秘密は同大の徹底した英語教育だ。留学生が5人に1人、教官も半数以上が外国籍でほとんどの授業は英語で行われる。新入生は必ず学術英語のプログラムを受けて一定基準以上のレベルに達しなければ次の基盤教育科目へ進めない。その上で必修科目の単位を修めて英語をレベルアップし、海外の提携大学へ留学に出る。1年間の留学で30単位を取得してこなければ卒業できない決まりだ。文科省は昨年10月、同大を「国際的に活躍できる人材の養成」を目指す「スーパーグローバル大学」として認定した。

大学が生き残るにはAIUのように他大学と差別化できるプラスアルファが不可欠のようだ。

18年には大学入学年齢の18歳人口が一気に減る「2018年問題」がやってくる。このままでは大学間格差は広がるばかりだと、国も重い腰を上げた。

そのひとつが90年度から始めた大学入試センター試験の廃止だ。この試験は1点刻みの一発勝負なので受験技術に特化した勉強が主流になり、自ら課題を見つけて解決するための本当の〝学力〟が養えないという指摘が少なくなかった。

そこで政府は新制度「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を20年度から導入する準備を進めている。知識の量ではなく思考や判断など知識の活用力を測るのがねらいで、年1回だった試験回数も複数にして受験生をそれぞれの適性に合った大学に振り分ける。有名大学ばかりに受験生が集中して格差を招いている現状を打破できるのではないかというもくろみもある。

ただ、この大学入試改革が定着するにはなお数年を要する。その間も大学サバイバルレースは間断なく続くのだ。

(この記事は7月7日号「 経済界 」 に掲載されたものです。)