ジンバブエドル
(写真=PIXTA)

2015年6月11日、アフリカ南部に位置するジンバブエのジンバブエ中央銀行は、ジンバブエ・ドルを米ドルに交換し、自国通貨であるジンバブエ・ドルを廃止すると発表した。交換レートは、17京5,000兆ジンバブエ・ドル以内の銀行口座を5米ドル、それを超える場合は3京5,000兆ジンバブエ・ドルにつき1米ドルとなるレートを適用する。

2009年4月12日をもってすでに発行は停止されてはいたものの、これによってジンバブエが自ら発行する法定通貨ジンバブエ・ドルは世界から消えることとなる。いったいジンバブエで何が起きたのだろうか?


ジンバブエ・ドルの歴史

今から35年前の1980年、ジンバブエではローデシア・ドルに代わってジンバブエ・ドルが導入された。このときのジンバブエ・ドルの交換レートは、1米ドルが0.68ジンバブエ・ドル。米ドルより高い価値で交換されるほどであった。

ジンバブエがこれほどのハイパーインフレに襲われることになった要因は、2000年に入り、ムガベ大統領が白人によって経営されていた農園を強制的に収用したことにある。収用した農園は国民に分配されたものの、国民の資金力では農園に必要な機器や肥料といったものを安定的に調達するのが難しく、ジンバブエのメイン産業でもあった農業は徐々に衰退した。財政が悪化する中、中央銀行は財政赤字を埋め合わせるべく紙幣を大量に刷ることになる。その結果、08年には5,000億%という強烈なインフレに見舞われることとなった。物価が1日ごとに倍増する事態もあったのである。

強烈なインフレに伴い、自国通貨であるジンバブエ・ドルは信用を失い、ほとんど使われることがなくなった。市民は信用がなくなったジンバブエ・ドルに代わって、南アフリカの通貨である「ランド」や米ドルを使用するようになっており、現在でもこの状況が続いている。

ジンバブエ政府は、今やほとんど使われない自国通貨ジンバブエ・ドルを完全に回収するため、今回の廃止を発表したものだ。ジンバブエ・ドルは現在、観光客用のお土産として売られている程度となっている。


過去にもあった同様の事例

このようなハイパーインフレによる通貨切り替えは、他にも存在した。ハンガリーの通貨であった「ペンゲー」がそうだ。

第2次世界大戦後のハンガリーは、これまで経験したことがない未曾有のハイパーインフレに見舞われた。翌年の1946年に新通貨フォリントを導入すると同時に、40穣ペンゲー("ゼロ"が29桁並ぶ)を1フォリントとする交換レートを適用。これによってハンガリー経済は安定する道をたどる。


国家財政危機のギリシャも同じ運命か

今後、ジンバブエ・ドルのようになる可能性が高いのはどこだろう。財政危機が表明されているギリシャは、自国通貨ではなく、ユーロに加盟している。ユーロから離脱し、元の通貨「ドラクマ」に戻る可能性もあるが、そうなれば「ドラクマ」がハイパーインフレに巻き込まれる可能性が高いだろう。仮にユーロに残ったたままだとしても、超絶な緊縮財政になり、いずれは破綻しかねない。

国家財政の破綻の影響は非常に大きい。ジンバブエ・ドルの対応を参考に、ギリシャ政府がどう対応するかを見守りたい。 (提供: Vortex online

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