2014年3月に国土交通省住宅局が発表した調査結果によると、2013年3月末時点でのシェアハウスの供給数は約1,400物件、約19,000戸で、近年は年率30%程度で供給数が増加している。その背景としてはシェアハウスが空室対策として有効であると不動産オーナーが認識しているからだ。2013年10月時点の空家戸数は約820万戸、空家率は13.5%で、過去最高となった。2014年11月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が成立したように、不動産オーナーにとって空室対策は待ったなしの状況だ。今回は、これからシェアハウスへのリノベーションを考えている不動産オーナー向けに、その注意点を述べていく。一時期、脱法ハウスが話題となったが、今回は遵法性の話ではなく、気になる収益性について紹介する。


最近のシェアハウスの特徴

最近のシェアハウスの特徴としては、①コンセプトが明確であること、②共用部が充実していること、が挙げられる。この②共用部が充実していること、というのが、新築供給を阻んでいる大きな要素となっている。


シェアハウスは共用部の作り方が鍵

シェアハウスは当初、中古物件の有効利用という発想からスタートしたため、現在でもほとんどが中古のリノベーション物件だ。元々物件に備わっている共用部を利用して、住戸を小割にして改修している。共用部の充実度がシェアハウスの魅力といっても過言ではないため、共用部の乏しい物件は、部屋を潰してでも共用部を作ることが多い。住人が楽しくシェアできる空間を増やしていく事で、シェアハウスの付加価値が高まるのだ。

つまり、共用部が広くて充実しているほどシェアハウスの価値が高まるが、一方で共用部の床は賃料を生まない。そのため、新築でいきなりゴージャスな共用部を作るのは非常にもったいない。通常、新築マンションは目一杯、専有面積を確保して賃料を生む床を増やそうとする。よってムダな共用部を多く作るシェアハウスには取り組みにくいのだ。


共用部の作り方

このことはリノベーションを行う場合も同様である。確かにシェアハウスにすれば、賃料単価が上がるため、収益性が上がるような気もする。しかし実際には賃料を生まない共用部も増えるため、思ったほど収益性は上がらない。これからリノベーションを行う場合、共用部の作り方については、悩ましいところであろう。


管理手数料が高い

また管理会社に払う管理手数料が通常賃貸より上がる点にも注意しなければならない。シェアハウスは管理会社の手間が多くかかるため、一般の賃貸マンションより管理手数料が高く設定されている。賃貸マンションの管理手数料の相場が賃料の3~5%とすると、シェアハウスの管理料は7~8%あたりで設定されている。


管理会社の見極めも重要

シェアハウスにすることで賃料単価が通常の1.5~2倍に上がることもある。また1世帯に貸していた部屋を3人に貸したりするため、全体としての空室率も下がる。そのため魅力的な空室対策のように思えるが、実は上述の賃料を生まない共用部の発生や管理手数料のアップというマイナス要素もあるため、思った程収益性は改善しない。トイレやバスの配管まで取り換えるような大規模リノベーションであれば、工事費が新築建物の半分くらいになる場合も。そのため、シェアハウス向けにリノベーションを行う際は、事前に費用対効果を十分検討しなければならない。

また、収益性が管理会社の運営能力に左右される部分が大きいので、管理会社の実績をしっかり見極めることも重要だ。

以上のように、シェアハウス向けにリノベーションして収益性を向上させていくためには、適度な共用部を作ることと、よい運営会社を選定し、管理手数料をなるべく抑えることが、重要だ。シェアハウスの供給は今後も増える傾向にあるため、コンセプトで差別化することも必要となってくる。共用部を少ない面積でいかに魅力的に作るかの知恵が、シェアハウスリノベーションの成功の鍵となるだろう。(提供: Leeways online )

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