(写真=PIXTA)
不動産投資の中でもサラリーマン投資家などに人気な「中古マンション投資」ですが、中古マンション投資の初心者が見落としがちなのが、マンションの「構造」です。マンション構造は耐震性や耐用年数だけでなく、減価償却費などからキャッシュフローにダイレクトに影響します。今回は中古マンション投資における構造のちがいと、構造ごとのメリット・デメリットについてご紹介します。
マンション構造は大きく分けて4種類
不動産投資初心者でも、マンションに構造のちがいがあることは知っていると思います。マンションの構造には大きく分けて「SRC造」「RC造」「鉄骨造」「木造」の4種類があります。それぞれについてまずは簡単に説明します。
①SRC造
SRCとは「鉄骨鉄筋コンクリート」という意味です。鉄筋コンクリートの中にさらに鉄骨が通っている構造です。つまり鉄筋コンクリート造と鉄骨造をハイブリッドにしたようなものがSRCです。建築する上で非常にコストが高くなりますが、その分耐震性に優れていて強靭な構造になっています。そのため通常のアパート・マンションよりも中高層マンションなどに使われています。
②RC造
RCとは「鉄筋コンクリート」という意味です。SRCほどではありませんが、非常に頑強な構造です。また耐用年数も長く、銀行から長期の融資を受けることができます。多くのマンションはRC造で建築されています。
③鉄骨造
鉄骨造、また「S造」と言われるのは、鉄骨による構造の建物のことです。また鉄骨造の中にも鉄骨の厚みによって2つに分類され「重量鉄骨構造」と「軽量鉄骨構造」とがあります。SRC造やRC造に比べれば頑丈さは劣りますが、木造に比べればずっと耐震性・耐久性に優れています。S造も多くのマンションやアパートで利用されていますが、火災には弱いという一面があります。またRC造とちがって鉄骨の間にコンクリートを流し込むことはありませんので、大きな空間が作りやすく工期も比較的短い特徴があります。
④木造
木造はその名の通り木材のみの構造で、多くのアパートは現在でも木造です。他の構造に比べて強度は落ちますが、増築・改築・補修などはもっとも行ないやすく、コストももっとも安いです。
構造ごとの減価償却費の違い
・減価償却費の計算方法
中古マンション投資においてもっとも大きな経費の一つが減価償却費です。初心者の方は見落としがちですが、建物の構造によって減価償却費は大きく変動します。減価償却とは取得した物件の金額を耐用年数に分けて計上する方法です。これを税金の上では経費として計上することができるのです。簡単には3000万円の建物が30年使用できるとしたら、毎年100万円を減価償却費として計上します。しかし建物の構造によって劣化の度合いが違い耐用年数が違うため、減価償却費にも違いが出ます。建物は構造ごとに耐用年数と償却率が決まっています。
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート)・RC造(鉄筋コンクリート):47年、償却率0.022
重量鉄骨造(S造):34年、償却率0.030
軽量鉄骨造(S造):27年、償却率0.037
木造:22年、償却率0.046
SRC造やRC造は非常に頑丈であるため、耐用年数もかなり長めに設定されています。S造は重量と軽量で耐用年数が異なり、一番短いのは木造になっています。この耐用年数に従って償却率が決められており、減価償却の額は
取得価額×償却率=減価償却の額
という計算式で求めることができます。建物の取得価格が3000万円だった場合
SRC・RC:3000万円×償却率0.022=66万円
木造:3000万円×償却率0.046=138万円
と求めることができます。つまりSRC・RCの場合は毎年66万円を47年間にわたって経費に計上でき、木造の場合は毎年138万円を22年間にわたって経費に計上できるということです。木造の方が償却率が高いため経費が多く計上でき、その分税金のかかる割合は少なくなります。
・中古マンションの減価償却
マンションの場合は取得した金額全てが減価償却の対象となるわけではなく、減価償却できるのは建物部分のみとなります。土地部分は含まれません。さらに建物の本体(建物躯体)とその中の設備(建物設備)を分けて減価償却します。マンションの減価償却費を求める手順は以下のようになります。
①建物と土地を分ける
②建物躯体と建物設備を分ける
③耐用年数と償却率を調べて算出
しかし中古マンションの場合は、耐用年数の算出が新築物件とは異なります。新築ならば耐用年数と償却率が決まっていますが、中古物件はその物件の「使用可能期間」を見積もることで耐用年数を決めます。使用可能期間はその建物を取得してからあと何年使えるか、ということを調査して決める「見積法」があるのですが、この方法は難しく手間がかかるため、一般的には「簡便法」を使います。
簡便法とは耐用年数を簡単な式を使って計算する方法で、築年数が耐用年数以下である場合は「(耐用年数ー経過年数)+経過年数×0.2」、築年数が耐用年数を超えている場合は「耐用年数×0.2」で計算します。
例えば建ててから20年が経過しているRC造の中古物件ならば
(耐用年数47年―経過年数20年)+経過年数20年×0.2=31
と計算でき、耐用年数が31年となります。耐用年数が異なれば償却率も変わってきます。この場合は償却率が0.033になり、3000万円の建物ならば
3000万円×0.033=99万円
となり99万円を31年間にわたって減価償却費として経費に計上できるということになります。
減価償却費は多いほどいい?
ここまでの解説の通りSRC造やRC造よりもS造、そしてS造よりも木造の方が毎年計上できる減価償却費は大きくなります。税金は収入から経費を引いた所得にかかりますので、木造のように償却率の高いものほど支払う税額は少なくなります。しかし減価償却費は帳簿上の操作であり、実際に毎年出費しているわけではありません。そのため手元に残るキャッシュフローは木造が一番大きくなります。
こう説明すると初心者の方は、木造や軽量鉄骨の方が不動産投資として有利なんじゃないか、と考えるかもしれません。しかし実はデメリットもあるのです。木造の耐用年数が22年、RCは47年と設定されています。そのため投資するにあたって銀行でローンを組もうとすると、木造はRCよりも短期のローンしか組めない場合があります。
さらに物件を売却するときにもデメリットがあります。例えば物件を5年保有して売却すれば、その物件は帳簿上5年×減価償却費分だけ簿価が下がっています。毎年の減価償却費が100万円なら500万円安くなっているということです。ということは売却したときは、安くなった簿価の分だけ利益が大きく出ます。そして不動産を売却したときには「譲渡所得税」がかかりますが、譲渡所得税は売却したときの利益が大きいほど、高くなってしまいます。このように減価償却費は大きければいいわけではないのです。
中古マンション投資においては、そのマンションの構造がどのようなものなのか、物件を保有するのは短期間か長期間か、ローンはどのように組むのかなどによって、戦略が大きく変わってきます。初心者の方は、まずは構造ごとのメリット・デメリットを把握した上で、自らの投資戦略を検討するようにしましょう。(提供: Leeways online )
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