(写真=PIXTA)

人口減少傾向が続く中にあって、空き家率の上昇が注目されている。これまでは地方の過疎地域の問題とみられていたが、近年は都市部でも空き家が目立ってきている。安倍政権の発足後、都心部の分譲マンション価格は明らかに上昇したが、賃料水準はむしろ下がり気味である。マクロ・データにはっきりとした傾向は出ていないが、住宅の供給過剰が地価の上昇を押しとどめていると考えられる。

東京の空き家率は11.1%

総務省統計局の『平成25年住宅・土地調査 特別集計』によると、昭和38年以降、5年ごとの調査の度に空き家戸数、空き家率とも上昇しており、平成25年の全国の空き家率は13.5%に達している。

都道府県別にみると空き家率のトップは山梨県(22.0%)で、最下位は震災からの復興途上にある宮城県(9.4%)となっている。首都圏の順位は、千葉県39位、東京都42位、埼玉県43位、神奈川県43位と軒並み低く、相対的にみれば空き家率の上昇は地方の問題と言える。

しかしながら、東京都の空き家率も11.1%に達しており決して低くない。都心5区では、千代田区25.8%、中央区25.4%、渋谷区13.7%、新宿区12.6、港区9.9%となっており、かなりの空き家物件が存在している。

なぜ東京都心部でも空き家物件が存在するのか?

東京都心部でも多くの空き家物件が存在する最大の理由は、新設住宅の供給過剰にある。日本は2008年から人口減少に転じており、東京都の人口も2020年にピークアウトするとみられている。そうした中にあって、人口減少に応じた新設住宅数の調整が行われていないため、余剰住宅が積み上がっている。

人口が減っても核家族化が進めば必ずしも世帯数の減少には至らないが、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、総世帯数は2020年の5305万世帯をピークに2025年には5244万世帯まで減り、その後も減少が見込まれている。

野村総研が6月に公表したレポートによると、新設住宅着工戸数は 26年度の88万戸から42年度には53万戸まで減少すると見込まれるものの、それを上回る世帯数の減少が想定されているため、 45年の空き家数は約2150万戸(空き家率30.2%)に達すると予測されている。