郵政,ロイヤルメール
(写真=PIXTA)

近代郵便制度発祥の国、イギリス。世界で唯一、切手に国名が記されない国でもある。そのイギリスの郵便事業「ロイヤルメール」は日本郵政に先立つこと2年、2013年に民営化を果たした。

日本郵政民営化の今後を占う意味でも、イギリス郵政「ロイヤルメール」と日本郵政を比較してみたい。


欧州郵便事業の流れ

ロイヤルメールについて知る前に、ヨーロッパ全体における郵便事業の流れを理解しておこう。

【 EUにおける郵便事業の変遷 】
欧州連合内では、郵便事業に関しても、統一基準と各国の判断に任せられた部分が存在する。EU内の統一基準によると、宅配事業に関しては早い時点から自由競争が認められ、手紙・ハガキに関しては1997年から段階的に自由競争の許容される範囲が増え、2012年に完全自由競争が実現した。

【ヨーロッパにおける郵便事業とは】
郵便局は単に郵便物を扱う場所にとどまらず、公的書類を発行する場、さらには公的・私的交流の場としても利用されてきた。

郵便事業の自由化とは、営業成績によっては閉鎖される郵便局や失業する郵便局員が生じるということも意味する。EUは当初2009年までの郵便事業完全自由化を目標として掲げていたが、雇用や生活に不安を感じる住民も多く、事業は難航した。


ロイヤルメールとは

では、EUに先立って2006年に自由化を実現したイギリスの「ロイヤルメール」について探っていこう。

【ロイヤルメールの事業紹介(メール・小包・リテール)】
イギリス郵便事業は、切手発行やハガキ・手紙を郵送する「ロイヤルメール」、宅配を扱う「パーセルフォース」、国際郵便を扱う「ジェネラル・ロジスティクス・システムズ」、そして郵便局を含む店舗経営を行う「ポストオフィス・リミテッド」の4分野に分けることができる。

2015年現在、「ロイヤルメール・ホールディングス」の傘下に上記4事業が配置される形態を取っている。

【売上・営業利益率】
民営化前のロイヤルメールの売上高と営業利益率を見てみよう。2012年度の営業利益は1億5200万(※196億4600万円)ポンド、売上高は87億6400万ポンド(※1兆1300億円)であり、営業利益率は1.7%であった。

国営企業として最後の年である2013年度の営業利益は4億4000万ポンド(※692億8000万円)、売上高は92億7900万ポンド(※1兆4610億円)、営業利益率は4.4%に飛躍的に上昇しているのがわかる。

経営の効率化に加え、自由化により競合他社と争っていくために民間の資金を必要としたことから、2013年の民営化に踏み切ることとなる。

※当時の日本円で換算


ロイヤルメール民営化の軌跡

ロイヤルメールが民営化を実現するまでにたどった軌跡を見ていこう。

【2000年以降、深刻な赤字が続いたロイヤルメール】
イギリス政府は赤字の原因を郵便・物流事業ではなく郵便局業務にあると判断し、ロイヤルメールの傘下に置かれていたポストオフィス・リミテッドを2012年に子会社として切り離すことを決断した。民営化後もポストオフィスの株式を政府が保有することで、総体的な利益率の向上をめざした。

【営業効率を上げるために郵便局の削減を提案したが...】
2007年、イギリス政府は約1万4000ある郵便局を1万2000に減らすことを提案。だが、雇用削減と生活への不安から反対の声は多く、2011年イギリス政府は地元のコミュニティーが郵便局を救済する「相互扶助プラン」を代替案として掲げることになった。

このプランは、例えば局長の退職で廃止となる局の代わりに、地元の教会など人が集まる施設を郵便局として存続させるなど、地域住民の力で郵便局を運営していくものだ。このプランによって、国が経営する郵便局は目標の1万2000とし、そのほかの郵便局はコミュニティーに属して存続することとなった。

【郵便局と将来性の高い物流事業を分離させることで経営効率化を図る】
郵便局経営という利益効率が伸び悩む部分をコミュニティーに委託することで、将来性の高い郵便・物流事業を民営化によりさらに押し進めていくというのが、イギリスの郵便事業の基本方針だ。

親会社であるロイヤルメール・ホールディングスの経営陣はほとんどが民間出身で、製造・銀行・電力など多岐にわたる業種からの人材が採用されている。事業を革新していくために、枠にとらわれない経営をめざしているのだ。


ロイヤルメールの上場背景

世界的な流れとして、個人間のやりとりに手紙などが使われることが少なくなった。一方ネットの普及により通販などの小包事業は拡大し、郵便事業全体で見ても小包事業は成長性・将来性ともに高い分野である。

また、国内だけでなく海外物流も今後さらに活発になると予想される。海外物流の拠点確保やシステム開発に必要な資金を集めるために、ロイヤルメールの上場は不可欠であった。


ロイヤルメールの成長戦略とは?

ロイヤルメールの特徴は、収益化が見込めない分野は国営として残しつつ将来性の高い物流事業のみを民営化したことにある。郵便局経営という「お荷物」を背負ってロイヤルメール全体が斜いていくよりも、地元に愛される存在として郵便局を存続させていく方が、収益効率は悪くとも国民の利益になると判断したためでもある。

また経営という面では、親会社のホールディングスに11人の取締役をおいていることが特徴的だ。この11人のほとんどが民間企業の出身者としており、製造、物流、銀行、保険、電力、水道など様々な業種から人材をそろえている。

他業種にわたる民間出身の経営者の力で、競合環境の変化に対応、ロイヤルメール・ホールディングス全体が飛躍することも求められる。ロイヤルメールとポストオフィス。民営と国営。成長と愛着。相対する概念の両立が、ロイヤルメール全体の成長戦略とも言えるだろう。


今後の日本郵政の行方は?

各国の郵便事業を見てみると、国際物流に対してどのような戦略を行うかが成長の大きなカギになっていることが分かる。例えば、民営化は実現していないもののフィンランド郵便は利益を積極的に追求する企業としても知られており、ロシアに特化した部門を持つことで、ロシアと、ロシア経由で中国との物流ルートを確保している。

日本郵政も、オーストラリアの国際物流会社「トール社」を2015年5月に完全買収した。これによりオセアニアとアジアに1200の拠点を有することになったが、これをうまく活用して国際物流分野を成長させることができるのか、そして日本郵政自体を成長させることができるのかに注目していこう。

【上場情報の比較|日本郵政とロイヤルメール】

日本郵政 ロイヤルメール
上場日 2015年11月4日 2013年10月11日
時価総額 約6兆1000円(想定) 33億ポンド(5196億円)
売り出し株式数 4億9500万株 10億株
公募価格 1350円(予想) 330ペンス(518円)
初値 未定 450ペンス(706円)

※当時の日本円で換算

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