ホテル業界の稼働率と供給不足について

東京オリンピックの決定が2013年に決定されたこともあり、2013年の1年を表す漢字が「輪」を国民が選択しました。 東京オリンピックの決定は、第二次安倍内閣による強い経済対策に次ぐ日本国民の期待となりました。

そんな今、東京オリンピックに向けて日本のホテル業界は国内国外関わらず興味関心を引いています。 東京のホテルは世界中からサービスの品質の高さに定評がありますが、 この東京のホテルが不足し需要に対して供給が足りていないとして興味関心を引いています。 現在、東京のホテルは通常の稼働率を平均約80%程度で稼動をしています。 しかし、普段から東京のホテルは高い稼働率を持っており部屋の空室状況に余裕がないのです。

東京オリンピックの大会期間中は800万人から900万人程度が観光客として見込まれます。 この観光客の需要を現在のホテル業界での空室だけでは受け入れることができません。 想定される東京オリンピックの観光需要を受け入れることができないので、 ホテル建設も進められるのではないかという見通しを持っているアナリストも増えているようです。

1940年の東京オリンピックでは、ホテルのベッド数があまりにも不足しているため、 ホテル業界の中で様々なサービスが生まれました。 ホテルだけではなく旅館にベッドを用意して外国人観光客を受け入れるようにしたり、 大学の学生寮や教会・お寺といった宗教施設、東京都内の一般家庭宅などに泊まることができるようにしました。 この時、ホテルのベッド数が不足していることによって民泊というサービスが生まれたりしたのです。 現在、東京オリンピックに向けて日本のホテル業界は必死に新たなホテルの建設や既存のホテル施設を建て直したりしています。

ホテル業界の前回の東京オリンピックの動向

また、ベッドの増強をしてベッド数の確実な確保に向かって努力しています。 しかし、1940年の前回の東京オリンピックのように明らかに需要に対してホテルのみでは供給がままならないのであれば、 前回の東京オリンピック需要への対応のようにホテル業界やその周辺の業界で新たな設備やサービスも生まれるのではにかと考えられています。

そして、1940年の東京オリンピックでもホテル業界全体でスタッフも不足しました。 ホテルの調理スタッフなどをホテル外でホテルの代替として役割を果たしていた施設に派遣したりしました。 日本のおもてなしは、世界中の国々に高く評価をされています。 この日本のおもてなし技術が、スタッフの派遣によって 日本国内のホテル業界に関わる人の技術レベルが上昇するのではないかとも考えられています。

ホテル業界が2020年東京オリンピックに向けてどれだけ必要とされるかそのわけ

ホテル業界は、ホテルボーイ、エントランススタッフ、調理スタッフ、リネンスタッフ、最近ではホテル予約スタッフなど 幅広く人材を必要としています。 これだけの種類の人材を一度に確実にしかも高いレベルの技術を持っているスタッフを早めに確保しておきたい。 人材の確保に切羽詰りやすいホテル業界が今後もさらなる人材不足が想定されています。 これによって東京とその周辺のホテル業界の人材スタッフの雇用環境は、 ホテル業界側からの旺盛な雇い入れ需要によって賃金の上昇や待遇の改善が進むのではないかとも見られています。 幅広い種類の人材を必要としていますので、ホテル業界に職種的にやや業務内容が接している場合は その影響を受けるのではないかとも考えられています。

ただし、2020年の東京オリンピックを終えた後には一気に需要が現在の水準に逆戻りをしている可能性もあります。 そうした時には、ホテル業界の中でホテル過多の状態に陥り、需要に対してホテル数が多過ぎる状態となります。 全体のホテル業界に対する需要も激減し、1人あたりの客単価も下げざるを得ないという状況になれば、 ホテル業界は非常に苦しむのではないかとも考えています。 これを警戒してホテル業界は新たなホテル建設に消極的であったり ホテル業界に関わる人材を新しく雇い入れたりすることにも消極的なのです。 しかし、東京オリンピックに向けてのホテル業界の努力は示すだけではなく 需要に応えていく必要が社会的な責任としても存在しているのです。

また、2020年の東京オリンピックまでは6年を切っているのですが、 首都高の補修修復工事も既に東京オリンピックまでに間に合わない公算となっています。 ホテル業界だけでなく建設、不動産関係の準備も不足が指摘されています。

前回の東京オリンピックでは、各業界でさまざまな工夫を行い 外国人観光客への対応を見事に行いましたが今回は長いデフレ不況によって 供給能力が落ちたところから対応に迫られています。 ホテル業界は、サービス業界として位置づけられていますが、 日本のサービスは世界でも一流のレベルを保ってきました。 これを外国人労働者によって賄うことは私たちが思っている以上に難しいものです。 外国人観光客を外国人労働者によって対応するのも少し違和感が出てくる人もいるでしょう。 最後の手段として考えておくべきことではありますが、 まずは日本人が本来必要な供給能力を取り戻すところから国内外の関係者から求められているのかも知れません。

photo credit: vancityhotshots via photopin cc