(写真=PIXTA)
父がもうすぐ定年退職を迎えます。セカンドライフにアパート経営を考えているのですが、どのように対応したらよいでしょうか?できればやめさせたいと思っています。父は仙台の実家で母と共に夫婦で生活しています。祖父の代からの土地などを所有していて、最近不動産会社から土地の運用としてアパート経営をすすめられています。
確かに立地的には駅から徒歩15分ほどで、繁華街からも近くアパートにするのに悪い場所ではないと思います。しかし将来収入になるとはいえ建設費なども高額なため考え直してほしいのですが、アパート経営について専門家の意見をお聞かせください。
【家族構成】
[父] 59歳 会社員
[母] 57歳 専業主婦
[相談者] 35歳 専業主婦(都内在住)
【資産など】
退職金見込み額:3000万円
金融資産:5000万円
住宅ローンなどの負債:なし
簡単に「もうかる」という話は疑ってみるべき
余った土地の有効活用として脚光を浴びているアパート経営ですが、現実の状況はかなり厳しいといわざるを得ません。アパートへの投資は不確実な要素が多く素人が手をだすのは危険なものです。中でも簡単にもうかるとうたった家賃保証契約を伴ったアパート経営に関する話には特に注意すべきです。
30年一括借り上げ問題というのをお聞きになったことはないでしょうか?簡単にできるアパート経営という勧誘には、不動産会社の長期一括借り上げ制度が絡んでいる場合がほとんどです。
一括借り上げというのは、不動産会社が建築後のアパートをまるごと借り上げて大家へ家賃保証を行う制度ですが、この契約には問題が隠れています。それは、家賃保証が金額までは規定されていないということです。ほとんどの長期一括借り上げの場合、最初の○年は○○円保証で、その後定期的に保証額を見直すとなっているはずです。
すなわち、年数を経るごとに保証額は減少していきます。アパートは築年数がものをいいますから当然年数が経つと家賃の下落は避けられません。さらに大家が家賃の引き下げに応じない場合は、一括保証を行っている不動産会社が契約を解除することすら可能なのです。
アパート経営は不動産会社に有利な「商品」
また経年による修繕やリフォームの費用も大家にのしかかってきます。アパート経営というのは不動産会社に非常に有利にできている契約なのです。
加えてご心配されている人口減少問題も大きいです。現在20数%程度といわれる空室率が30年後には40%にまで上がるという試算結果もみられます。現在仙台市の住宅状況はアパート経営に悪くありませんが、この状況が継続するという保証はどこにもありません。また地方都市での駅から徒歩15分というのは、将来的に築年数が経った後でもある程度の家賃を維持し入居者が確保できるかは微妙なラインです。
ご相談者の場合、土地を既にお持ちということなのでアパートの建設費が初期費用となりますが、現在の金融資産をそのまま建設費に充てるのは老後の生活を考えると不安が残ります。となるとローンで返済をしながら経営ということになりますが、その場合は家賃の保証金額以外にローンの金利上昇リスクも伴います。
このようにご自身が不動産経営に関して知識がある場合をのぞき、アパート経営というのは簡単に始められるものではないことがおわかりいただけると思います。もう一度ご両親とよく話し合いを持ち、反対の意思をお伝えしたほうがよいのではないでしょうか?(提供: ライブリー 退職金と未来のお金 )
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