不動産投資
(写真=PIXTA)

ここ数年、サラリーマン、サラリーウーマンによる不動産投資が増えているという。実家の大家業を引き継ぎ、短期間で収支の建て直しをした経験をもち、99%の顧客先が大家さんという税理士・司法書士の渡邊浩滋氏に、いまなぜ不動産投資なのか、また、どのような点に注意すべきかを伺った。(提供:storie2015年10月20日掲載)


不動産投資を始めている人たちは?

storie:不動産投資を始める方々は、どのような理由で始められるのでしょうか?

渡邊税理士:最近の不動産投資を始められる方は、将来の年金や雇用を心配される方で、お勤めの方が自分の勤務先の会社が今後どうなるのかを心配して、将来に向けての安定収入を求めて始める人が多いです。

storie:富裕層の資金運用の選択肢の一つというイメージがありましたが。

渡邊税理士:確かに富裕層の投資先ではありますが、そうでない方もいます。自己資金があまりなくても参入ができるというところが魅力の一つだと思います。不動産投資は融資をつけられれば、自己資金がなくてもでき、レバレッジをつけられます。いい物件に出会え、融資をつけることができれば、自己資金がなくても不動産投資はできるところは魅力と思います。

storie:自分の預貯金がなくても投資ができるということですか?

渡邊税理士:最低限の頭金はあった方がよいと思いますが、年収や属性と物件によってはフルローンでも購入できる場合があります。


不動産投資のポイント

storie:不動産投資の基本的な考え方を教えてください。

渡邊税理士:どういった物件を選んだ方がいいのかがポイントですが、やはりある程度、利回りが高い物件を選ぶことです。そうでないと回らなくなってしまします。将来的に空室が増えたらどうなるのか。修繕費がかかってきた時にどうなるのか。金利が高くなった場合に、はたしてうまく回るのか。十分に収益がとれるかということが見極めのポイントです。

そのためには、空室にならないような良い立地の物件の選定する必要があります。不動産賃貸を行うのには、将来的に家賃が下がりにくい物件を選ぶのです。あとは運営面ですが、通常の投資というものは、自分では何もできないことが多いのですが、不動産投資は、自分の努力で高い収益率を維持することができるところが魅力でもあります。空室を埋める努力や金利の交渉をしたりといった、経営手腕が問われるところです。

storie:投資用不動産の情報サイトなどでは、かなり高い表面利回りの物件が掲載されていますが。

渡邊税理士:一般的に、利回りが高いというのは、空室が増えるなどのリスクも高い、逆に利回りが低いということは、家賃が下がらずに安定しているといったリスクが低い、といったリスク・リターンの関係があります。そこを自分の経営手腕で、空室がない、安定的な収益が得られる物件にしていくわけです。

また利回りが低い場合でも、売主さんと交渉をして、購入時に価格を下げて低く購入することもできるわけです。


本業と不動産管理を両立させるには

storie:サラリーマン、サラリーウーマンの不動産投資家が、賃貸経営をうまくやるコツを教えてください。

渡邊税理士:ご自身の本業がある方が、それを休んでまで運営にあたるというのは、本末転倒だと思います。そのため信頼できる業者さんのパートナーをみつけ、連携することがポイントになると思います。

まずは管理会社です。入居者さんとの窓口になったり、建物の状態を見てくれ、不具合が出た時に対応してもらいます。また管理会社だけでは、建物の不具合ができた時に対応できないのでその場合はリフォーム会社さんも必要です。こちらは管理会社さんの提携のリフォーム会社さんがよいのか、ご自身の目で選んだ会社を選ぶのか、その見極めも必要かと思います。

storie:委託先として、コストパフォーマンスの高い、信頼できる業者さんにお願いできるかが大事ということでしょうか。

渡邊税理士:どうしてもコストはかかりますので、1棟2棟ならば自分で管理できると思いますが、それ以上になると難しいので、どこかで線引きをする必要があると思います。1棟しか持たないのか、それとも今後も複数、増やす予定があれば、割り切ってコストをかけてパートナーさんとうまく回していく仕組みを作っていかなくてはいけないと思います。


気になる失敗例

storie:不動産投資に失敗された方の例も教えてください。

渡邊税理士:自己破産されるなど、立ち直れないぐらいの失敗された方は知らないのですが、買った後に後悔したという方は少なくありません。利回りばかり気にしていて、将来の空室をみない人が結構多いです。

私が思う一番の多い失敗の事例は、不動産投資が節税になると思っている方に多いように思います。

そもそも基準が投資リターンではなく、節税ということで考えているので、節税ができるということは収益が上がらない、利回りがよくないということなので、失敗してしまう方が多いですね。サラリーマン大屋でも、自己破産をしている人は知りませんが、お給料から持ち出ししている方はいますね。実質マイナスになってしまっているケースですね。

渡邊浩滋氏 プロフィール
明治大学法学部在学中に司法書士試験に合格。卒業後総合商社の法務部に入社。債権回収などを担当するが、税理士試験を目指すため退職。その後、実家の大家業の経営が危機的状況にあることが発覚。税理士試験合格後、親から大家業を引き継ぎ、空室対策や経営改善に取り組み、危機的状況から脱出。大家兼業税理士として悩める大家さんのよき相談役となるべく、不動産・相続税務に強い東京シティ税理士事務所に勤務。

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