ロイター通信によると、金融庁が地域銀行(地銀)の取引先企業による海外進出を支援する策を検討しているとのことです。具体的な方策としては、複数の地銀が共同で海外に銀行を設立する案を検討中です。 関係者筋によると、4月中旬に行われた金融庁と地銀との会合で、畑中龍太郎金融庁長官が複数の地銀が共同出資して銀行を設立する、又はジョイントベンチャーを海外に設立して、現地通貨の決済や貸出を行うスキームを説明したようです。

地場の中小企業が海外に進出するケースが、アジア新興国の経済発展や国際競争力の観点から増加しています。これらの企業と日ごろから深い関係を持っている地銀が共同で拠点を整備することで、こうした中小企業の海外展開支援を一段と強化できると、金融庁は見ているようです。今後金融庁は地銀とさらに議論を深めて具体化する考えを持っているとのことです。

この金融庁の取り組みに対し、筆者は懐疑的な見解を持っております。地場企業の海外進出のケースが増加しているため、地銀が海外進出支援機能を強化したいというのは分かります。しかし、何故金融庁主導で、「海外に銀行を設立」することが海外進出支援機能に繋がるのでしょうか?

全国銀行協会が『銀行の取引先企業の海外進出における支援実績』という報告書を発行しています。そこには、海外進出(主に中国)の際の取引先企業のニーズが書かれていますが、決済や資金需要よりは市場調査、法律・税制面の調査、デューデリジェンスや保険などのノウハウ提供やリスク回避、法律面でのサポートを求めるニーズが多くなっています。ゆえに、「海外に銀行を設立」よりは海外金融機関との提携や法律、税理士法人等の紹介の方がニーズは高いものと思われます。

地銀の海外提携の動きとしては、横浜銀行が中国銀行や東南アジアのスタンダードチャーター銀行と提携。また、JETROに出向者を出している動きもあります。また、JETROや東京商工会議所でも海外進出支援サービスを実施しております。金融庁はまず、これらの動きの事例分析を行い、地銀取引先企業が地銀に求めていることは何か、それを達成するためには何が必要かを明らかにすることが、先決と思われます。

【参考情報】

ロイター: http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPKBN0DE11B20140428