sbw00
銀行口座にある残高の範囲で即時決済されるデビットカード。賢く堅実な消費者を中心に利用者が増えている。ソニー銀行のVisaデビット付きキャッシュカード「Sony Bank WALLET」のサービスが1月4日から始まった。日本で初めて決済できる通貨が円、米ドル、英ポンドなど計11種類もあるなど、他社にはない外貨に強いソニー銀行らしい機能がある。その中身と魅力について商品企画部 マネージャー 中村泰三氏、システム開発部 企画グループリーダー 武田賢樹氏らに聞いた。

貯めた外貨を使いやすくするサービス

「外国などでの買い物やATM利用で、外貨口座にある外貨がそのまま使える、ありそうでなかったカード」と中村氏が控えめながら力を込める「Sony Bank WALLET」。その誕生の背景や過程を聞けば、ソニーグループ、ソニー銀行だからこそ生まれたサービスと感じるはずだ。

sbw04
(左から)武田氏と中村氏

ソニー銀行は「外貨ワールド®」の構築を掲げている。グローバル化が進む時代、貯めた外貨を円に替えることなく自由に移動し、使える世界を実現しようというもの。だから外貨預金などの運用商品は着実にラインアップを充実させてきた。顧客の中でも外貨を「貯めたい」「運用したい」に加え「使いたい」というニーズが高かった。

中村氏は「Sony Bank WALLETはそういったお客さまの『(外貨を)使いたい』という要望にこたえるべく生まれた商品」と話す。日本円はもとより、米ドル、ユーロ、英ポンド、豪ドル、NZドル、スイスフラン、香港ドル、カナダドル、南アフリカランド、スウェーデンクローナの11通貨に対応。世界200以上の国・地域でショッピングに使えるほか、ATMで現地通貨の引き出しが可能だ。

「当たり前」のカード決済の裏側 11通貨に対応するハードル

ITを中心にプロジェクトをリードした武田氏は、これまで同社が提供してきた米ドル決済型キャッシュカードや2通貨決済機能付クレジットカードから、今回は対応通貨が一気に増えて11種類となったマルチカレンシーデビットを技術面で実現させた。また同社はデビットカードの提供がはじめてでありゼロからのスタート、武田氏も「新たな挑戦でした」と振り返る。国際ブランドでもあるVisaの認証やマルチカレンシーに対応した決済のためのインフラなど総合的なサービス実現のハードルは高く、これを超えるために関係者は、相当の時間を費やしたという。

私たちが買い物などの支払いでカードを使う際、待たされることなく会計できるのは当然だと思い込んでいる。しかしこうした金融サービスは、裏側で高度な技術にもとづいた計算、やり取りがタイムリーに行われている。特にこの「Sony Bank WALLET」は、11通貨に対応したカード決済だけではなく、「円からアシスト」という独自の優れた機能を搭載する。米ドルやポンドで決済しようとした際、外貨預金口座の足りない額を日本円(円預金口座)からソニー銀行が提供する為替レートで自動的に振り替えてくれる画期的なサービスだ。(特許も申請中とのこと)

たとえば自分の米ドル口座に90ドルある時、100ドルの商品を買うには10ドル足りない。本来なら外貨預金が残高不足のため、カードの利用ができないところだが、「円からアシスト」だと、自動的に自分の日本円口座から補てんしてくれる。簡単な仕組みのようだが、店頭でカード支払するほんのわずかな時間に、「ドル口座の残高チェック」、足りないから「円口座の残高確認」、そして「ドル/円レートの取得」、「足りないドルの購入」「ドルによる決済」――といった一連の行為を一瞬にしてやってのけている。ITを駆使して「ミリ秒単位」の精度を徹底的に追求して取り組んできた。武田氏は「お客さまは、ほんの数秒でもレジカウンターやATMで待つ時間が長くなれば、それなりのストレスを感じてしまうものですからね」と微笑むが、実現するまでの開発段階はさぞ過酷なものだっただろう。

サービス開始前に社員が米国や英国、スイス、豪州や香港、南アフリカなどに散らばり、実際に11通貨を使ってテスト決済を行った。商品の企画段階から開発に携わってきた中村氏は南アから「使えたことに感動して思わず日本に連絡してしまった」と言うが、中村氏だけではなく各地からも「使えた!」という感動の連絡があったという。日本で見守る開発陣にしてみれば精魂込めて商品開発してきただけに使えて当たり前。「時差の関係で真夜中に連絡もありましたね。なにか問題があったら連絡してくれればよかったんですけど(笑)」と武田氏が向けた視線の先で、中村氏は苦笑する。

コンセプトムービーに見える「モノづくりのソニー」らしさ

こだわりがつまっていることは、商品性やカードデザインだけでなくプロモーション用に制作されたコンセプトムービー「通貨を超えろ」にも現れている。この60秒の動画は、世界最古の貨幣といわれる子安貝から現在の通貨までの「通貨の全歴史」を、実際の貨幣を登場させつつ、時代背景を描写しながら再現。驚きなのがすべてCGではなくミニチュアのジオラマでコマ撮りアニメーションである点。SNSでも「CGじゃないのか!」と相当数のコメントやシェアがつけられた。敢えて“手作り”したところに、モノづくりのソニーの精神が見て取れる。



またカードの券面は世界の通貨をイメージしてデザインされているが、担当したのはソニークリエイティブセンターのデザイナー前坂大吾氏。ソニーグループを挙げて取り組んだプロジェクトなのだ。

社内の仕組みまで変えたプロジェクト

「Sony Bank WALLET」のプロジェクトでは社内外のステークホルダーが多いことから、従来の進め方ではなく、ビジネスアナリシスのアクティビティを有するプロジェクト推進チーム制を導入するなど、社内体制にも大きな影響を与えたという。今回はIT統括(武田氏)、全体推進(奥村常明氏)、業務統括(濱田雄志氏)、営業統括(中村氏)の全方位の役割をもった4人のメンバーが中心となってプロジェクトマネジメントに取り組んできた。

sbw02
(左から)武田、奥村、濱田、中村の4氏

組織が仕事のやり方を変えるのは、「言うは易く行うは難い」。同社の経営陣はプロジェクトの重要性をかんがみ、新しい仕組みを即座に取り入れるだけでなく、コアとなる部門の役員間でも密に連携、現場がスムーズに動けるように最大限アシストした。計画通りにサービスが提供されたことで「今後の新しいプロジェクトの進め方としてポジティブなモデルとなった」と経営陣に直接提案した武田氏は手ごたえを感じている。

国内利用でもお得 自動的にずっとキャッシュバック

こうしてできた「Sony Bank WALLET」は、国内の利用でもお得だ。支払額に応じてポイントがつくカードとは違い、デビットカード払いすれば利用分の0.5%(優遇ステージに応じて最大2.0%)が自動で“キャッシュバック”される。期間限定でもなく、別途申し込みも要らないのは嬉しい。さらに、カード発行月の翌々月末までに国内で累計5000円以上買い物すると、1000円プレゼントするキャンペーンも開始。また3月からは「外貨預金優遇制度」を改定する。対象条件を一部緩和し、外貨送金や海外ATMの利用手数料が無料になる特典などを新たに追加した。

sbw05 sbw03

エアチケットの価格も下がり、海外はより気軽に快適に行ける、身近なものになりつつある。ビジネスでも企業の海外進出は珍しくなく、たとえ現在、進出していない企業に勤めている人でも、今後、出張で行く機会があるかもしれない。

こうしたグローバルでボーダレスな時代に賢いお金の使い方をするには、まず外貨口座を持って、その存在と値動きを身近に感じること。そしてスマートに使える手段を手に入れることだ。ビジネスで訪れた国やプライベートで行った地域のホテル、レストラン、ショッピングモールやブランド店……あらゆる場所で、「Sony Bank WALLET」という選択肢が、快適な滞在と充実した時間をもたらしてくれるだろう。