(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

SMAPのメンバーの一部がジャニーズ事務所を脱退すると報じられているが、そうなった場合、「SMAP」というグループ名の使用権はどこが、誰が持つのか。脱退メンバーが引き続き使用できるのだろうか。弁護士資格を持った筆者が、法律的な観点からこの騒動を検証してみる。

「SMAP」の登録商標はジャニーズ事務所が権利者

まずは商標の登録状況を確認してみよう。日本では、特許庁が(正確には外郭団体の独立行政法人工業所有権情報・研修館)、インターネット上で誰もが簡単に商標の登録状況を調べることができる仕組みを構築している。「特許情報プラットフォーム」(J-PlatPat)である。

J-PlatPatを見ると、株式会社ジャニーズ事務所が6つの「SMAP」の登録商標の権利者となっている。1つ目が家庭用テレビゲームおもちゃやレコード、運動用特殊衣服、運動用特殊靴など(第2286334号)。2つ目が傘や履物など(第2297874号)。3つ目が食肉やコーヒー豆、飲料用野菜ジュースなど(第2340431号)。4つ目が後述の第3047285号。5つ目がお茶やビールなど(第5387025号)。6つ目が主催旅行の実施、旅行に関する契約の代理・媒介又は取次ぎなど(第5389940号)。以上の6つだ。

ジャニーズ事務所はかなり広範な範囲で「SMAP」の登録商標の権利者となっており、用意周到に手堅く権利を保全していることが見て取れる。

商標権侵害となるかは議論の余地がある

このうち重要となる登録商標が“4つ目”として述べた登録番号第3047285号の商標だ。この登録商標は、商品及び役務の区分を41類、指定商品又は指定役務を、演芸の上演、演劇の演出又は上演、音楽の演奏としている。

脱退メンバーが「SMAP」というグループ名やこれに類似したグループ名(例えば「SMAPマイナスキムタク」)を使用して芸能活動を行った場合、登録番号第3047285号の商標権の侵害となりそうに思える。

もっとも、この登録商標が登録された後に定着したとされる現在の日本の特許庁の運用では、音楽の演奏などの役務を指定してアーティスト名を商標登録出願しても、拒絶されるものとされている。

その理由は、アーティスト名は商品の品質(内容)や役務の質(内容)を表示するものにすぎず、商標としての機能(出所表示機能)を発揮しないとみなされるからとのことである。音楽の演奏などを指定役務とする登録番号第3047285号の商標に商標権としての効力はなく、侵害訴訟を提起しても認められないとする見方もある。

要するに、仮に脱退メンバーが「SMAP」というグループ名やこれに類似したグループ名を使用して芸能活動を行った場合、商標権侵害となるかどうかに議論の余地があるということになる。この場合、ジャニーズ事務所側は商標権侵害を主張し、他方、脱退メンバー側は商標権の無効を主張し、全面対決することとなりそうだ。この紛争が裁判所へ持ち込まれれば、音楽グループ名の識別力を認めるかという法的論点を問題提起する、重要な裁判となろう。

契約違反となる可能性大

以上の商標権の問題とは別に、契約上の制約として、ジャニーズ事務所は脱退メンバーとのタレント・マネジメント契約の中で、事務所を脱退した場合に「SMAP」というグループ名やこれに類似したグループ名の使用を禁止していると推測される。

仮に脱退メンバーが「SMAP」というグループ名やこれに類似したグループ名を使用して芸能活動を行った場合、契約違反に伴う損害賠償を請求される可能性が高いであろう。

商標的使用でない場合や「普通に用いられる方法」なら侵害にならない

なお商標的使用(商品の出所表示のための使用)でない場合、商標権侵害とはならない。脱退メンバーがテレビ出演の際などに元SMAPと言うことはこれに該当するだろう。

商標法26条1項1号は「自己の氏名」や「著名な芸名」を「普通に用いられる方法」で表示する商標に対しては、商標権の効力は及ばないと規定している。ただし不正競争の目的で使用する場合は駄目である(商標法26条2項)。

筆者の乏しい想像力からは、脱退メンバーが芸能活動において「SMAP」の名称を「普通に用いられる方法」で表示するケースを想定できないが、もしこのようなケースが認められるのであれば、商標権侵害とならないことになる。

メンバー個人の氏名については登録商標なし

「SMAP」のメンバー個人の氏名については登録商標を確認できず、脱退メンバーが引き続き同じ氏名を名乗って芸能活動を行うことは、商標権上の問題は生じなさそうだ。この点、「加護亜依」という名称そのものを旧事務所(なお、ジャニーズ事務所ではない。)が商標登録していた、加護亜依さんのケースとは異なると見られる。

ただしタレント・マネジメント契約上どのように定められているかは分からない。そもそも契約期間が2016年9月まで残っていると報道されている上、契約上、事務所を脱退した場合の活動の制約についてどのように定められているかも不明である。

いずれにせよ脱退メンバーは契約上の制約にも苦慮しながら今後の芸能活動を行っていかざるを得ないであろう。場合によっては、タレント・マネジメント契約における契約条項そのものの有効性について、争いが問題提起されるかもしれない。例えば、損害賠償額の予定(違約金)が定められているとすれば、その金額の妥当性が論点になることなどが考えられる。(星川鳥之介、弁護士資格、CFP(R)資格を保有)

【編集部のオススメ記事】
2017年も勝率9割、株価好調の中でもパフォーマンス突出の「IPO投資」(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
株・債券・不動産など 効率よく情報収集できる資産運用の総合イベント、1月末に初開催(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)