現代人が知っておくべき法律知識に関する本連載では、これまで社内外での人間関係トラブルを中心に扱ってきた。【第4回】までにお伝えしてきたのは、人と人、そして企業が関わる問題であったが、今回は個人と銀行組織の関係にスポットをあてる。
日本銀行は一般の銀行からの預金に、一部マイナス金利を適用している。では一般企業である銀行組織が、日本銀行と同様に、個人の預金へマイナス金利を適用することは法的に可能なのか、各種法令や銀行の約款を参照しながら迫っていく。
マイナス金利、一般銀行も適用できる?
日本銀行が一般の銀行から預かっている当座預金の一部に、マイナス金利が適用されている。今後、一般の銀行が預金者から預かっている預金にマイナス金利を適用することはあるのか。ビジネス的には難しいと思われるが、法的にはこれは可能なことなのだろうか。
預金への適用は金利という名目では困難
結論から先に言えば、一般の銀行が消費者から預かっているお金にマイナス金利を適用することは、金利という名目では困難といえる。なぜなら、法的に預金契約は金銭消費寄託契約であると解釈されているが、金銭消費寄託契約に対する当事者の合理的な意思を解釈すれば、利息とは銀行が預金者に対して支払うものであり、預金者が銀行に支払うことは想定していないと言わざるを得ないからだ。
金融法委員会は2016年2月19日「マイナス金利の導入に伴って生ずる契約解釈上の問題に対する考え方の整理」というペーパーを公表した。同委員会は、金融取引について実務経験を有する弁護士と金融取引に関する法律を専門とする学者とが、1998年6月に自発的に設立した委員会であり、事務局を日本銀行が務めている。相当権威ある委員会であると言ってよかろう。