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口座管理手数料が徴収される?

マイナス金利で「銀行預金から金利分が差し引かれる」のか?

マイナス金利,預金
(写真=PIXTA)

日本銀行が一般の銀行から預かっている当座預金の一部に、マイナス金利が適用されている。今後、一般の銀行が預金者から預かっている預金にマイナス金利を適用することはあるのか。ビジネス的には難しいと思われるが、法的にはこれは可能なことなのだろうか。

預金への適用は金利という名目では困難

結論から先に言えば、一般の銀行が消費者から預かっているお金にマイナス金利を適用することは、金利という名目では困難だ。なぜなら、預金契約は法的には金銭消費寄託契約であると解釈されているところ、金銭消費寄託契約に対する当事者の合理的な意思を解釈すれば、利息とは、銀行が預金者に対して支払うものであり、預金者が銀行に支払うことは想定していないと言わざるを得ないからだ。

金融法委員会は2月19日、「マイナス金利の導入に伴って生ずる契約解釈上の問題に対する考え方の整理」というペーパーを公表した。同委員会は、金融取引について実務経験を有する弁護士と金融取引に関する法律を専門とする学者とが、1998年6月に自発的に設立した委員会であり、事務局を日本銀行が務めている。相当権威ある委員会であると言ってよかろう。

同ペーパーはこの論点につき、次のとおり述べている。

「金銭消費寄託における利息も通常は、(中略)預金受入金融機関が預金者に支払うべきものであり、預金者が支払うべきものとは解されない。預金約款(規定)上も、預金者からの支払は予定されていない。したがって、寄託の対価又は預金口座を通じたサービスの対価を預金約款に従って徴収する余地はあるにしても、市中金利がマイナスとなった場合に、普通預金・変動金利定期預金などに適用される店頭表示利率としてマイナスの値を定め、その絶対値を用いて計算した金額を利息支払日に預金残高から差し引くことは、預金当事者の合理的な意思解釈によれば、できないと考えられる」

要するに当事者の合理的な意思を解釈すれば、一般の銀行が預かっている預金にマイナス金利を適用して預金残高から差し引くことはできないと言っている。権威ある委員会がこのような解釈を示した以上、日本においてこれに反してマイナス金利を課す取扱いをする銀行が現れる可能性はほぼゼロとなったと言ってよさそうだ。

銀行約款でもマイナス金利は想定外

実際、例えば三菱東京UFJ銀行の預金約款を見ると、「普通預金の利息は、(中略)普通預金に組入れます」(総合口座取引規定第5(1)項)、「定期預金等の利息は、(中略)普通預金に入金します」(同規定第5(2)項)、「この預金の利息は、(中略)毎日の利率によって計算のうえこの預金に組入れます」(普通預金規定第7項)などと規定されている。

預金に利息を組入れることのみが規定されており、マイナスの利息を預金残高から差し引くことを予定しているとは、到底読めない。

同様に、日本全国どこの銀行や農協、信用金庫、信用組合の約款でも、マイナスの利息を預金残高から控除することを予定しているような書きぶりとなっている約款はないであろう。銀行約款でもマイナス金利は想定外だ。もしマイナス金利を想定していた銀行約款があったら、約款作成者の先見の明は賞賛に値する。

今後、一般の銀行が預かっている預金に、直接にマイナス金利を適用することは、法的にも認められないと結論付けていいだろう。預金している読者の方々には、この点では安心して頂きたい。

手数料名目で預金から差し引くことは可能?

もっとも、これで自分の預金残高が減ることは絶対にないと安心してはいけない。なぜなら金融法委員会のペーパーが述べる通り、「寄託の対価又は預金口座を通じたサービスの対価を預金約款に従って徴収する余地はある」からである。

例えば、口座管理手数料などの名目で、マイナス金利に相当する金銭を、実質的に預金から差し引くことは認められる。また現在でも、ATM利用手数料や通帳、キャッシュカードなどの再発行手数料、振込手数料などを銀行は預金者から徴収しているわけであるが、これを値上げすることにより、実質的に銀行口座から得られる収入を増やそうとすることは、当然に認められる。

今後マイナス金利が長期化した場合に、銀行が口座管理手数料の徴収を始めたり、ATM利用手数料などの各種手数料を値上げしたりする動きが広がる可能性がある。

実際、一部報道によれば、三菱東京UFJ銀行は日本銀行のマイナス金利政策への対応として、大企業などの普通預金に口座管理手数料を導入することを検討しているようである。

もっとも口座管理手数料については、レピュテーションリスクや実効性、徴収の手間などを考えると、大口の法人顧客に対してのみの設定はありうるとしても、預金全部に対してはかなり難しいのではないだろうか。(星川鳥之介、弁護士資格、CFP(R)資格を保有)

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