現代人が身につけるべき法律知識を発信する本連載。【第1回】【第2回】ではSNS使用で遭遇する可能性のある法的リスクについて、【第3回】ではパワハラ、セクハラに合ってしまた時の対処法や回避するために会社が実施すべきことをお伝えしてきた。

【第4回】ではマルチ商法、ネットワークビジネスを取り上げる。ねずみ講のようなモデルはさまざまな形態へとを変えながら、現代においても依然として存在し続けている。 ネットワークビジネスの勧誘を受けた場合、個人としてどのように関わり対処すべきか。そして企業はこの手の勧誘の規制にどこまで介入できるのか、判例を交えつつ解説していく。

目次

  1. 「仲間を増やして儲けよう」が合言葉
  2. マルチとねずみ講との違い
  3. 同僚をマルチ商法に勧誘するとどうなる?

「仲間を増やして儲けよう」が合言葉

トラブル
(写真=PIXTA)

「スーパー・ルテインやイズミオを1カ月飲み続けるとどんな病気でも良くなる」、「2人紹介して、片方の人が何ポイントかになると、月に20万から50万円くらいになりますよ」−−3月9日に消費者庁から業務停止命令を受けたナチュラリープラスは、健康食品や清涼飲料水、化粧品などの連鎖販売業者だ。

冒頭のような勧誘して、商品の買い手にさらなる買い手を探させ、買い手が増えるごとに紹介者にマージンが入る仕組みを取っていた、典型的なマルチ商法(ネットワークビジネス)だ。

消費者庁の公表資料によると、会員がこんなうたい文句で次々と会員を勧誘していたようだ。それは「初めに2人友達を紹介さえすれば、あとは紹介した人がまた2人とどんどん増やしていくので、自分は何もしなくても必ずもうかるビジネスです」「会員になって人を増やすと収入になる」「仲間をどんどん増やすといい」「商品を売った金額に応じてボーナスが支払われる」「仲間を増やせばお金の心配は要らなくなる」、そして「ピラミッド式に人を紹介して、紹介された人がナチュラリープラスの会員になってこれらの商品を買ってくれたら収入が増えるのよ」−−といったものだ。

同庁は特定商取引法39条1項の規定に基づき、9カか月間、業務の一部(新規勧誘、申込受付および契約締結)の停止を命じたほか、同38条1項の規定に基づき、指示も行った。健康食品や清涼飲料水を購入していた者に対し、商品の効能について事実と異なる効能を告げて勧誘していたが、当該商品の飲用によって病気の治療や予防、症状の改善ができるような効能はない旨を通知し、その通知結果について消費者庁長官まで報告することを指示するものだ。

マルチとねずみ講との違い

マルチ商法(ネットワークビジネス)と似た仕組みとして、ねずみ講(無限連鎖講)がある。

ねずみ講(無限連鎖講)とは、金品を払う参加者が無限に増加するという前提において、2人以上の倍率で増加する下位会員から徴収した金品を上位会員に分配することで、その上位会員が自らが払った金品を上回る配当を受けることを目的とした団体のことである。 ねずみ講(無限連鎖講)の開設・運営・加入・加入勧誘やこれらの行為の助長は、法律で完全に禁止されている(無限連鎖講防止法3条1項)。

刑事罰もある。開設・運営した者は3年以下の懲役および/または300万円以下の罰金。業として無限連鎖講に加入することを勧誘した者は1年以下の懲役および/または30万円以下の罰金。無限連鎖講に加入することを勧誘した者は20万円以下の罰金である(無限連鎖講防止法5条〜7条)。

これに対し、ナチュラリー社が行っていたようないわゆるマルチ商法(ネットワークビジネス)は、金品配当組織ではなく商品やサービスの販売組織である点で区別される。このため、ねずみ講(無限連鎖講)とは異なり法律で完全に禁止されているわけではない。

もっともマルチ商法(ネットワークビジネス)においても、トラブルが起こりがちである。そこで特定商取引法がこれを「連鎖販売取引」と定義して、様々な規制を設けている。例えば、勧誘に先立って会社の名称と負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨を明らかにすることを求めている。

また事実と異なることを告げての勧誘、公衆の出入りしない場所での勧誘、迷惑勧誘などを禁止している。そのほか、契約書面を受領した日から起算して20日を経過したときを除いて、理由の如何を問わず書面によって契約の解除を行うことができる、いわゆるクーリングオフの制度を認めている。

冒頭の消費者庁によるナチュラリー社への処分も、特定商取引法に基づく行政処分だ。

同僚をマルチ商法に勧誘するとどうなる?