パワハラ,セクハラ,マタハラ
(写真=PIXTA)

【第1回】【第2回】とSNSの使用において注意すべき法令や就業規則についてお伝えしてきた。【第3回】ではビジネスマンが接する身近な法律のひとつである、パワハラやセクハラについて解説する。

パワハラ、セクハラ被害にあった場合の個人に対する慰謝料請求権、そして会社対し生じる損害賠償請求権を解説すると共に、加害、被害の当事者とならないために抑えておくべき、パワハラの6種類について定義をお伝えしていく。

厚生労働省は2016年4月から、都道府県労働局に「雇用環境・均等部」を設置した。同部では、労働相談をしやすくするため、これまで縦割りだったパワーハラスメント(パワハラ)や解雇などに関する相談窓口と、セクシャルハラスメント(セクハラ)やマタニティーハラスメント(マタハラ)などに関する相談窓口とを一つにまとめるとのことだ。

個別の労働紛争を未然に防止する取組み(企業指導など)と、解決への取組み(調停・あっせんなど)を、同一の組織で一体的に進めるという。これにより行政のハラスメント対策が一層促進されることが期待される。

目次

  1. 社会問題として顕在化するパワハラ
  2. パワハラがあった場合、個人や会社が法的にも責任を負う
  3. パワハラの6類例
  4. なくすべきという方針を打ち出し、第三者に相談する仕組みを作ることが大事

社会問題として顕在化するパワハラ

職場のパワハラを定義すると、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為とされている。そこまでに至らないものについても、職場におけるいじめ・嫌がらせとして問題視されている。

ひと昔前であれば、今ではパワハラと言われかねない行為が、業務上の指導という美名の下に横行していたと言われる。それでも社会問題化することはなく、被害者は我慢するか、会社を辞めて出ていくかしかなかったのだ。むしろそのような上司の理不尽に耐えることが評価されたり、ひどいときには我慢に我慢を重ねたあげく、逆に上司の立場になってかつての鬱憤を晴らす者までいたりするという。

しかし今では、職場におけるいじめ・嫌がらせやパワハラは、社会問題として顕在化してきている。その背景には、企業間競争の激化による社員への圧力の高まり、職場内のコミュニケーションの希薄化や問題解決機能の低下、上司のマネジメントスキルの低下、上司の価値観と部下の価値観の相違の拡大など、多種多様な要因が指摘されている。

パワハラがあった場合、個人や会社が法的にも責任を負う

パワハラを行った場合、行った加害者が個人として法的に責任を負う。身体、名誉感情、人格権などを侵害する不法行為が成立するものとして、損害賠償責任を負うことになる。例えば、裁判例では、上司が「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います。」などと書いた電子メールを本人とその同僚に送信した行為は、名誉毀損の不法行為を構成するとして、慰謝料請求権(精神的な損害に対する賠償請求権)を認めたものがある。

また会社も、使用者としての不法行為に基づく損害賠償責任を負うほか、安全配慮義務違反の債務不履行責任を負う。労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と規定している。これが、使用者が守らなければならない労働者に対する安全配慮義務だ。パワハラが日常的に繰り返し行われるような職場環境を放置したことそれ自体が、労働者がその生命や身体などの安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をしていないとされてしまうというわけである。

パワハラの6類例