パワハラ,セクハラ,マタハラ
(写真=PIXTA)

厚生労働省は4月から、都道府県労働局に新たに「雇用環境・均等部(室)」(仮称)を設置する。同部(室)では、労働相談をしやすくするため、これまで縦割りだったパワーハラスメント(パワハラ)や解雇などに関する相談窓口と、セクシャルハラスメント(セクハラ)やマタニティーハラスメント(マタハラ)などに関する相談窓口とを一つにまとめるとのことだ。

個別の労働紛争を未然に防止する取組み(企業指導など)と、解決への取組み(調停・あっせんなど)を、同一の組織で一体的に進めるという。これにより行政のハラスメント対策が一層促進されることが期待される。

社会問題として顕在化するパワハラ

職場のパワハラを定義すると、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為とされている。そこまでに至らないものについても、職場におけるいじめ・嫌がらせとして問題視されている。

ひと昔前であれば、今ではパワハラと言われかねない行為が、業務上の指導という美名の下に横行していたと言われる。それでも社会問題化することはなく、被害者は我慢するか、会社を辞めて出ていくかしかなかったと言われる。むしろそのような上司の理不尽に耐えることが評価されたり、ひどいときには我慢に我慢を重ねたあげく、逆に上司の立場になってかつてのうっぷんを晴らす者までいたりするという。

しかし今では、職場におけるいじめ・嫌がらせやパワハラは、社会問題として顕在化してきている。その背景には、企業間競争の激化による社員への圧力の高まり、職場内のコミュニケーションの希薄化や問題解決機能の低下、上司のマネジメントスキルの低下、上司の価値観と部下の価値観の相違の拡大など、多種多様な要因が指摘されている。

パワハラがあった場合、個人や会社が法的にも責任を負う

パワハラを行った場合、行った加害者が個人として法的に責任を負う。身体、名誉感情、人格権などを侵害する不法行為が成立するものとして、損害賠償責任を負うことになる。例えば、裁判例では、上司が「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います。」などと書いた電子メールを本人とその同僚に送信した行為は、名誉毀損の不法行為を構成するとして、慰謝料請求権(精神的な損害に対する賠償請求権)を認めたものがある。

また会社も、使用者としての不法行為に基づく損害賠償責任を負うほか、安全配慮義務違反の債務不履行責任を負う。労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と規定している。これが、使用者が守らなければならない労働者に対する安全配慮義務だ。パワハラが日常的に繰り返し行われるような職場環境を放置したことそれ自体が、労働者がその生命や身体などの安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をしていないとされてしまうというわけである。

パワハラの6類例

パワハラの種類としては、次のようなものがある。
(1)暴行・傷害(身体的な攻撃)、(2)脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)、(3)隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)、(4)業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)、(5)業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)、(6)私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)--だ。

このうち、(1)~(3)は、普通に考えても業務の指導に必要とは言えないことが明らかだろう。このようなことが業務の指導に必要だという会社があれば、それこそ「ブラック企業」だ。大多数の常識的ビジネスパーソンであれば、そのようなことをしてはならないということを、少なくとも頭では理解しているであろう。

問題は(4)~(6)である。「業務上の適正な指導」との線引きが必ずしも明確でなく、常識的ビジネスセンスをもっても、それがパワハラに当たってしまうのかどうか判断が悩ましいところである。結局は受け手側・指導を受ける側がどのように感じるかによって決まらざるをえない。

なくすべきという方針を打ち出し、第三者に相談する仕組みを作ることが大事

一番大切なことは、会社として「職場のパワハラはなくすべきものである」という方針を明確に打ち出し、周知・啓発を行うことである。こうした明確化は、相手の人格を認め、尊重し合いながら仕事を進めるという職場風土を生み出すことにつながる。指導をする側も気を配りながら指導するようになるし、指導を受ける側やその周囲の人間も、自らがパワハラやいじめを受けたと感じたときに、問題の指摘や解消を求める発言がしやすくなる。

もう1つ大切なことは、第三者に相談をする仕組みを作ることである。どれほど職場風土を良くしても、指導を受ける側からは、どうしても相手に対して遠慮がちな発言しかできないものである。そこで人事部など会社内に相談窓口を設けるのみならず、産業カウンセラーやメンタルヘルス相談の専門機関など外部の相談窓口を設けるべきだ。人間誰しも悩みを感じたとき、相談という名の下、愚痴を聞いてくれる人がいるだけでも、相当痛みが和らぐものである。

冒頭に紹介した通り、行政のハラスメント対策が一層促進されることが期待されることとも相まって、ハラスメントのない「いい会社」がどんどんふえることを期待したい。(星川鳥之介、弁護士資格、CFP(R)資格を保有)

【編集部のオススメ記事】
2017年も勝率9割、株価好調の中でもパフォーマンス突出の「IPO投資」(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
株・債券・不動産など 効率よく情報収集できる資産運用の総合イベント、1月末に初開催(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)