株価は日々、様々な要因で上がり下がりを繰り返している。これまで順調に上昇してきた日経平均株価も、2015年夏場以降は国内外の要因によって不安定な状態が続いており、投資家心理もやや弱気に傾きつつある。企業業績への期待感は依然として根強いため、長期の上昇トレンドは維持していると思われるが、個人投資家にとっては株価の上昇を期待しつつも、相場下落に備えた投資の必要性が増しているのではないだろうか。

近年では、投資商品や取引の多様化により、個人投資家がとれる選択肢は広がりつつある。様々な商品の特徴を知ることで、相場下落局面においても利益を追求することが可能となっているのだ。

下落局面で利益を出すには

株価が下落する局面で利益を出す方法として、まず挙げられるのが「信用売り」だ。株式を実際に保有する現物取引とは違い、証券会社などからお金や株を借りて取引を行う信用取引では、株を売って下落したところで買い戻すことができるため、下落局面で利益を出すことができる。株のインターネット取引が普及した現在では、多くの個人投資家が信用取引による売買を日々行っており、売買代金の過半数を占めている。

では、信用取引でないと下落局面で利益を出すことができないかというとそうでもない。本来、保有株の値上りを期待する現物取引において信用売りと同じ効果が期待できるのが、「インバース型ETF」への投資だ。「インバース型ETF」は相場が下落した局面で値上りするという特徴があり、個人投資家が取引できる複数の銘柄が取引所に上場している。

ETFとは

ETFとは、日経平均株価などの株価指数と連動することを目的にした取引所に上場している投資信託のことだ。日本株指数に連動するETFをはじめ、米国株や中国株などの外国株指数に連動するもの、金や原油などの商品指数に連動するものなど、取引所では様々なETFの取引が行われている。

ETFは近年、商品構成の多様化から取引を活発に行うデイトレーダーなどが好んで投資をするようになってきてはいるが、株初心者にとっても投資のしやすい商品と言える。なぜなら、日経平均株価やTOPIXは、一般のニュースで報道されることが多いため値動きを把握しやすく、個別銘柄ごとの業績や値動きなどを分析する必要性が低いためだ。相場全体の上昇は見込めるが、どの個別銘柄に投資をすればよいのかわからないという時などは、ETFへの投資が有効な手段となりうる。

また、ETFはコストが低く、取引がしやすいといったことも大きな特徴だ。投資信託の運用コストには、運用会社と販売会社に支払う信託報酬と売買手数料があるが、ETFは売買手数料も個別銘柄と同じ扱いとなっている。そのため、銀行や証券会社などの窓口で販売される一般的な投資信託と比べて、運用コストを抑えて投資することができるのだ。

加えて、一般的な投資信託は商品ごとに定められている受渡し日の価格が購入価格となるため、注文時より値上がりした状態で購入しなければならないといったケースが少なくない。一方で、ETFであれば個別銘柄と同じように成行や指値注文が可能であるため、意図した値段で取引を行うことができる。

インバース型ETFの特徴

株価指数などと連動することを目的とするETFだが、指数と反比例した動きを目的としたものが「インバース型ETF」だ。例えば、日経平均株価を参考指数としたものでは、日経平均株価が上がれば下落し、下がれば上昇するという動きを目的としている。

参考指数の「-1倍」の動きをするため、現物取引においても相場下落局面で利益を出すことができるのだ。さらに、より利益を追求するために、参考指数の「-2倍」に動きをすることを目的とした「ダブルインバース型ETF」も存在する。現在、東京証券取引所に上場している日本株関連のインバース型ETFには、日経平均株価やTOPIX、日経400指数に連動する銘柄が10銘柄以上存在している。

このように、「インバース型ETF」への投資は、相場下落が予想される局面で大きな効果を発揮する。また、中長期的な相場下落局面でなくても、相場上昇局面で株価が短期的に下落することはよくあるため、リスク管理という観点でも効果的な商品だ。株価の下落に備えて、株を売却することは大切だが、将来的にまだ上昇が期待できると考えている銘柄を中長期スタンスの投資家が売却するのは簡単にできることではない。

そのように、保有株を手放したくはないが、短期的な相場下落に備えたいと考えている場合は、「インバース型ETF」に投資することで、リスクヘッジを行うことができるのである。

このように、値上りを期待して投資をする商品だけでなく、相場下落局面でも利益を出すことができる商品が上場されるなど、投資家が利益を追求するための選択肢が広がりを見せている。資産を守るためには、株価の上昇と下落の両方に対応できるように、投資対象となる商品の選択肢を増やしておくことが大切なのである。(ZUU online 編集部)