4月にも東京証券取引所が昨年創設した「インフラファンド市場」に第1号ファンドが上場しそうだ。インフラファンド市場は民間資金を活用しての社会資本整備を後押しするものとして、アベノミクスの成長戦略にも組み込まれている。インフラファンドと市場設立の背景について整理しておこう。

インフラファンドってなに

鉄道、道路、空港、港湾といった施設、電力、水道、ガスのような公共施設などの長期で安定した収入が見込めるインフラに投資するファンドだ。インフラ事業が生み出す定期的な収益を投資家に分配金として還元する仕組みだ。

東証のインフラファンド市場は、ファンドがインフラ施設を直接保有する場合と、インフラ施設を保有する特別目的会社などの有価証券に投資する形態を想定している。当面は、太陽光発電などの再生可能エネルギー関連施設を組み込んだファンドが上場してきそうだ。

仕組みとしては不特定多数の投資家が不動産に投資し、その収益を分配する不動産投資信託(REIT)に近い構造だ。REITには、オフィスビル系、レジデンシャル系、商業施設系、ホテル系などがあるように、将来的にはインフラファンドにも、エネルギー系、交通系、公共事業系などのファンドが誕生してくるだろう。大手不動産が、所有ビルをREITに売却したように、電力会社などがインフラファンドに施設を売却する流れがでてくるかもしれない。

上場第1号はタカラレーベン・インフラ投資法人

第1号案件であるタカラレーベン・インフラ投資法人が東証に上場を申請した。東証1部上場でマンション分譲を手掛けるタカラレーベンの100%子会社のタカラアセットマネジメントが資産運用会社となり、国内の太陽光発電施設を組み込んだファンドになる。

上場で得た資金で、現在の約10万キロワットの発電能力を18年度には13万キロワットに増強する予定だという。上場審査は3カ月程度で承認され、4月頃には上場する見通しのようだ。

上場第1号を後押ししたのは、2016年度の税制改正だ。インフラを目的とする上場投資ファンドは、利益に対する法人税の非課税期間が現行の10年から20年に延びる。税制の後押しもあって今後はエネルギー関連ファンドの上場が増加する見込みだ。メガバンク、商社などで、すでにインフラファンドの組成や投資に実績のあるところも多く、ゼネコン、投資顧問会社も参入を狙っている。

年金運用のオルタナティブ投資としてのニーズが高まりそう

世界的にみると、現在のインフラ投資のメイン・プレイヤーは年金基金などの機関投資家だ。

インフラファンドは私募形態で取引されており上場はしていなものが多い。上場市場を整備することで、株やREITと同じように売買され、流動性、換金性が上がる。REIT市場は、個人と機関投資家のニーズに合致し10兆円の時価総額の市場となった。インフラファンドも、利回りも魅力的なものになり、安定性も見込めるファンドになる可能性が高く、市場は拡大する見込みだ。インフラファンドは、他のアセット・クラスとの相関が低く、長期的に安定したキャッシュフローおよびリターンが期待できることから年金資金のオルタナティブ投資(代替投資)の要件を満たしている。

米国の年金資金は2014年で4%程度の資金をインフラファンドに資金配分しているとの報告もでている。日本ではまだ始まったばかりだが、年金資金、地銀などの金融機関からの、代替アセット・クラスとしてのニーズが増えてくるだろう。

私募が多いため統計は取りづらいが、世界の市場規模は40兆円程度まで拡大しているようだ。上場インフラファンド市場も、海外では、オーストラリア、カナダ、アメリカ、イギリスなどで開設されており、時価総額も10兆円以上になっている模様だ。アジアではシンガポールが1番大きな上場市場となっている。

インフラファンド市場整備の背景

本来、インフラ投資は政府がやるものであったが、国の財政悪化から、政府支出で社会資本整備をするのには限界があり、民間資金の活用が必須となってきている。そのためアベノミクスの成長戦略にも組み込まれ、東証に市場が開設された。これからアジアでもインフラ投資が増えていくだろう。アジアの中で、東京が金融市場として生き残るためにもインフラファンド市場の早急な整備が必要なのだ。

インフラファンドのような仕組みがあれば、民間投資家からお金を集め、そのお金によって社会資本整備ができる。投資した物件で収益が出れば投資家にも還元される。インフラファンド市場は、多くの人にとってメリットがあり、今後注目が増えるアセット・クラスだろう。(ZUU online 編集部)