年初来の市場の動揺、世界経済下振れリスク増大にECBは追加緩和の方針を表明

欧州中央銀行(ECB)が21日開催した政策理事会で、3月10日に予定する次回政策理事会で追加緩和について検討する方針を表明した(*1)。

ECBは昨年12月の前回理事会で追加緩和策を決定したばかりだが、2016年に入り、中国の株価下落を引き金とする世界同時株安(図表1)と原油価格の大幅な下落(図表2)のスパイラルが止まらず、外国為替市場の緊張が高まっていることへの対処を迫られた。

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相場反転のきっかけを探っていた市場は、ドラギ総裁の発言を好感、21日の欧米市場、22日のアジア市場で大きく株価が反発した。

ECBの意思表明は、萎縮する世界市場に一定の好影響を与えたのは、ユーロが第2の国際通貨として、ドルに次ぐ役割を果たしているからだろう。ユーロの財政主権の分散という構造的な欠陥が解消する目処は立っていない。国際通貨の世界で、基軸通貨ドルとユーロの地位は、特に為替取引の媒介通貨としての役割の面で大きな差がある。

それでも、ユーロ圏の近隣地域を中心に為替政策のアンカーとして採用する国々は少なからずあり、欧州を中心に調達・投資通貨として浸透している(表紙図表参照)。FRBほどではないにせよ、金融政策の対外的な影響力も大きい。

しかし、ECBの政策だけで、大きな流れを変えることは困難だ。理由は、ECBの追加の政策余地に限界がある、あるいは、ユーロ圏の低成長の原因となっている構造問題に対する金融政策の効果が限られるということだけではない。

より本質的な理由は、ユーロ圏は、世界的な株安と原油安のスパイラルや外国為替市場の緊張の影響を受ける側であって、原因ではないことだ。ユーロ圏の財政危機の連鎖が世界市場の不安定化要因となった2012年と今回は違う。

中国減速と米利上げと同時進行が迫る調整

年初来の市場の動揺の直接の引き金は中国の景気減速懸念の再燃にあるが、底流には、昨年12月に利上げを決めた米国の米連邦準備制度理事会(FRB)が長期にわたる異例の金融緩和からの出口戦略が始まったことにある。

原油は中国の需要鈍化に加えて、石油輸出国機構(OPEC)の減産見送り、イランへの経済制裁解除、米国のシェールガス・オイル等の生産調整の遅れといった供給要因も影響し、大きく値を下げた。エネルギー企業や資源依存度の高い新興国の業績や景気への懸念に加えて、財政を原油収入に依存する産油国の政府系ファンドが保有資産の売却に動くことが、株価の重石となる悪循環が続いた。