(写真=PIXTA)
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山手線の駅は全部で29駅。大規模工事が必要な6駅を除く23駅については今年度中にはホームドアの設置が完了すると言われている。

しかし山手線と並行して走っている京浜東北線ホームには設置が行われていない。他の路線で設置されていない理由、設置にかかる費用や今後の動きを紹介する。

初めて設置されたのはJR東海道新幹線の熱海駅

日本で初めてのホームドアが設置されたのは東海道新幹線の熱海駅。開通当初は、土地の問題で待避線が設置できないという問題があった上、列車が通過時は列車風で危険な状態であった。運転本数や利用者の増加により、1974年にホームドアが設置された。78年には山陽新幹線神戸駅、91年には日本の地下鉄では初めて、東京メトロ南北線に設置された。

遅れること約20年。ようやく山手線にホームドアの設置が始まった。2008年にJR東日本 <9020> からホームにおける事故防止についての発表「グループ経営ビジョン 2020 挑む」では、事故の防止とお客様の安全、輸送障害の減少を目指し20年までに山手線全駅での導入を目指すというもの。

導入されたホームドアの特徴として以下の3点があげられている。戸袋部の一部を「緊急脱出口」として設計し、緊急時には車両からホームへの避難ができる。システムの二重化など耐環境性能の向上。ホームドアの稼働状況をモニタリングし、故障時の体制の強化をはかる。

そしてホームの構造上、可動式ホーム冊の整備が可能とのことから先行導入されたのは恵比寿駅と目黒駅の2駅。導入後は技術的な課題、列車運行に与える影響を検証した結果、12年12月には大崎、13年には池袋など7駅、今年度には23駅まで完了すると言われている。

山手線でも時間がかかる駅

恵比寿駅と目黒駅のホームドア設置、ホームの構造改良などの工事に約30億円、定位置停止装置の設置等の車両改良工事に約20億円と言われている。08年の概算では山手線全線への設備費用は約550億円程度とされていた。

ただすべての駅への設置に時間がかかる理由は、費用だけではない。技術的・物理的にも多くの課題があるからだ。まずは山手線の6扉車を4扉車への取替工事が行われた。そしてホームが古い山手線は大規模な構造改造が必要。可動式ホームドアを床面に固定するには強度の確保も必要となる。

ホームドア設置に伴い、車両のドアを合わせて停止する必要がある。そのため定位置停止装置も設置。新宿を含む大規模工事が必要な残り6駅は20年までの設置を目標とされている。

JRの他の在来線の動き

山手線に平行して走っている駅が多い京浜東北線。ホームドアが設置されていないのは、やはり設備費の問題が大きい。京浜東北線についてはJR東日本が14年11月、「ホームドア第2期設備計画の策定」に取り組むこととして、京浜東北線大井町駅へのホームドアを設置する設計を進めると発表したが、具体的な設置年数などはまだ公表されていない。

これまでは1駅三億〜十数億円、路線によっては2000億円とされる費用がホームドア設置のネックとなっていた。しかし従来の扉よりもコストが低い、ワイヤーやバーが昇降するタイプの新型の導入も始まったことで、コスト削減にもつながっている。

さらに国土交通省は11年からコスト削減や安全性向上、扉に対する技術開発をメーカーなどに計約4億円を交付している。JR東日本も東京の拝島駅でバー方式の試験運転を続けている。今後のホームドア導入の動きが注目される。

ホームドア設置駅は8年で倍になったが……

15年度末までの全国でのホームドア設置は615駅と8年前の約2倍と数を伸ばしている。実際に恵比寿駅や目黒駅では10年の設置以降人身事故も減り、しっかりと結果も現れている。

政府は東京五輪・パラリンピックが開催される20年度までに800駅に増やす目標を掲げている。お年寄りや障害者が移動しやすい社会の実現に向けてのものだ。

ホームドアのドアの位置の相違や停止位置のずれへの対応、コストダウンなどの問題解決に向けて進んでいる。しかし、例えば運転士の場合、車両をこれまでよりも正確に停車させる精度が必要になる。発着時間の制限もある中で、停止位置がずれるとダイヤが大幅にずれるため、自動停止装置の導入は必要だ。

全日本視覚障害者協議会の山城完治理事は、「ホームドアの整備が整ってきたことで、バーの支柱の間隔が広くなり乗車位置が分かりにくくなった。視覚障害者の支柱への接触など不安も感じる」と話している。様々な角度からの課題もまだ残っている。2020年度に向けても機能と低コストを競う新型のホームドアの普及が期待されるところだ。(ZUU online 編集部)