インターネット保険など保険料の安い、掛け捨てタイプの生命保険商品が現在では、たくさんある。その一つに終身タイプの生命保険があるが、加入を勧めたり活用を促進したりする前向きな意見もあれば、「入らないほうがいいよ」とアドバイスする後ろ向きな意見も見受けられる。
ただ、結局、置かれた環境や目的によって、終身保険を活用することを検討したほうがよいケースもあれば、そうではない場合もあるという。そこで、今回は終身保険の主な特徴をまとめるとともに、どういった人が終身保険に向いているのか、逆に終身保険に入るべきではないのか、明確化を試みたい。
そもそも終身保険とは、どんな保険か?
「終身保険」とは、保障期間が10年、20年といった定期保険とは違い、被保険者の死亡まで、ずっと保障が続く生命保険だ。終身タイプの医療保険などもあるが、単に終身保険というと、終身タイプの死亡保険を指す場合が通例だ。
誰もがいつかは死期を迎える前提に立てば、死亡保険の保険金は必ず発生する。そのため保険会社は、契約者が支払う保険料から保険金支払いのための準備金を積み立てており、通例では、同じ保険金額なら定期保険よりも高い保険料が必要になる。
他方で、終身保険を途中解約した場合には、契約後の経過年数に応じて、積み立てたお金の一定割合が「解約返戻金」として払い戻される仕組みを備えており、返戻率(払い込む保険料に対して、払い戻される金額の割合)によっては、支払った保険料よりも大きな金額で戻ってくる。この解約返戻金を得る前提で、終身保険に入るのも一つの手。こうした特徴を踏まえて「貯蓄性のある保険」と言われることもあるとのこと。
特に1990年前後には、返戻率が比較的に高かったこともあり、貯蓄性という意味では、終身保険の魅力は薄れてはいるものの、低解約返戻金型の終身保険への加入や、保険料を年払にすることで、貯蓄性を上げられる。現在では、普通預金金利の多くが0.02%に設定されていることを踏まえれば、今も保障と貯蓄性を兼ね備えていることに変わりはないだろう。
終身保険を検討すべき人、向いているその理由
それでは終身保険に加入してメリットを享受できるのはどのような人物なのでろうか。単純に、死亡保障を得るだけのためなら、掛け捨て型の定期保険のほうが保険料を低く抑えられ、財布に優しいということになる。反対に、次のような条件に当てはまる人にとっては、終身保険への加入を検討する価値がありそうだ。
(1) 不動産をたくさん持っており、子供の相続税支払いが心配な人
高齢社会化に伴い、大きな問題となっている相続が、思わぬ負担にならないか不安であれば、終身保険への加入を検討したほうがいいかもしれない。現金、預金に小さな余裕しかない子供が相続人となり、不動産を相続してしまうと、いざ相続税を支払う段になって、相続税を支払うための資金が手元になく困ってしまう可能性があることだ。最近ではそうしたケースも「珍しくない」とさえ言われている。
そうした相続トラブルを回避するためにも、終身(死亡)保険が役立つ。終身保険に加入していれば、死亡保険金に相続税の非課税枠(500万円×相続人数)があり、これを活用するのだ。相続時の納税資金を残したい相続人を、死亡保険金の受取人に指定しておけば、相続や遺産分割の協議によらずに資金の受け渡しを行える。あらかじめ相続対策を行っておこうとするのであれば、活用を検討する価値もあるだろう。
(2) 現預金を使ってしまう20、30代の独身者
働き始めると、給料が毎月、自分の預金口座に振り込まれ、誰にも気兼ねなくお金を使えるようになる。自分で働いて稼いだお金とはいえ、預金しているだけではすぐに、使ってしまうということもあるかもしれず、特に、20、30代の独身の若者にその心配があるとみられることもある。
もし思い当たる節があるのであれば、終身保険を活用するのがいやすかもしれない。(終身の)死亡保険は本来的には、遺族保障を目的としているが、保険料が毎月、強制に引き落とされるため「貯蓄癖」をつけやすく、解約にも手続きを飛鳥とするため、継続しやすいという特徴があるからだ。
また、終身保険に加入して、毎月保険料を支払っていれば、保険の積立の範囲でお金を借りたり、他のタイプの保障を得ることもでき、柔軟な活用も可能となっている。現在は独身でも、例えば将来結婚して、子供が生まれれば、終身保険をもとに、割安な保険料で一定期間大きな死亡保障を得られる仕組みを備えている保険もあるという。
ほかにも、子供の大学入学時など、一時的に資金が必要な場合にも、「契約者貸付」を受けて資金を用意する余地を確保することもできる。
終身保険に加入しないほうがいい人とは?
終身保険に加入するメリットを見てきたが、反対に「終身保険に加入しないほうがいい」のはどのような人なのだろうか。毎月の保険料を支払いながら貯蓄や相続対策に大きな労力と工夫を要しない、そんな状況にはどのような人々が当てはまるか見ていく。
まず一つ目は、保険料を抑えて大きな保障が欲しい、子どもが生まれたばかりの世帯の働き手である。子育て期がもっとも遺族保障が必要な時期であることから、終身保険ではなく定期保険で備えるほうが、家計にも優しく合理的だからである。
さらに、二つ目は、そもそも保険に入る必要のない程度に潤沢な資産を持つ人たちだ。金融資産であればすぐに現金化できるため、病気やケガをした際の医療費はもちろん葬式代も出せる。不動産であっても、賃貸収入や時間はかかるが売却などを経てお金を用意することができるので、あえて経費のかかる生命保険で準備する必要は無いはずだ。
ほかにも、就職や転職したばかりという人も解約リスクが高い。長く支出が固定される終身保険への加入は、収入が安定して家計収支の見通しが立つまではやめておいたほうがよいだろう。
家計収支が厳しくなる割高な終身保険は敬遠されがちだが、相続対策や柔軟性から活用がむしろ望ましいケースもある。保険加入を検討する際、はじめから終身保険を選択肢から外したりせず、メリットや自分の置かれた状況も頭の片隅に置いて検討をすすめるのがよさそうだ。
海老原政子 ファイナンシャルプランナー
国内生保の生命保険募集人として勤務。ライフプラン全体から生活者視点・女性目線を活かしたアドバイスが好評。コラム執筆や家計相談、個人・企業向けマネープランセミナーを行う。
エムプランニング
代表。(AFP、住宅ローンアドバイザー)
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