株,チャート (写真=PIXTA)

投資家は誰しもそれぞれの判断に基づいて売買を行っている。しかし、成功し続けるには、よほど天才的な勘を持ち合わせていない限り難しいだろう。成功の確率を上げるには、その時々でブレない何かしら明確な基準が必要だ。それでは、どのような基準が存在するのだろうか。

投資成功の助けとなる判断基準とは

株価分析にはファンダメンタルとテクニカルという2つのアプローチがある。前者は企業業績や業界動向、株式需給などをつぶさに調査・分析し、株価の高安を定量的、すなわち数字で判断する手法。一方、後者はチャート分析とも呼ばれ、株価の動きを統計学や経験則に基づいて判断するもので、業績などのファンダメンタルズは一切考慮せず、「株価は株に聞け」というスタンスをとる。

こう言うと、2つの手法は対極にあるように思えるかもしれないが、実はプロのファンドマネージャーはこの2つを巧みに使い分けて運用を行っている。株価の高安は企業業績などのファンダメンタルズで判断し、いざ売買するときはチャート分析でタイミングを計っているのだ。デイトレーダーだけがチャート分析を使うものと思っていたらそれは誤解である。

ここでは代表的なチャート分析手法とその解釈の仕方、そして局所的に有効な判断材料となる日本の伝統的チャートパターンを見ていくことにする。

チャート分析のコンセプトは大きく2つ。トレンド系とオシレータ系といわれるものだ。名前は難しそうだが、前者は株価の方向、すなわち上昇もしくは下落のトレンドを示し、後者は買われ過ぎや売られ過ぎの判断に使い、売買のタイミングを知らせる。いずれも指標グラフを株価チャート(日足が一般的)と重ねるか、上下に置いて株価と対比しながら売買の判断材料にする。

チャート分析手法その1 相場の方向を示すトレンド系

トレンド系で最も直感的なのは株価の移動平均線。これが上向きなら株価は上昇トレンド、下向きなら下降トレンド、横ばいはボックス圏となる。通常は短期(5日が標準的)と長期(同25日)の2本の移動平均線を用い、その上下の向きと相対位置を見る。

この2本がいずれも上向きで短期線が長期線を上抜けるのをゴールデンクロス、ともに下向きで短期線が長期線を下抜けるのをデッドクロスと呼び、トレンド転換を狙う売買タイミングを示唆する。

ボリンジャーバンドも代表的なトレンド系指標だ。株価の移動平均線を中心に上下の値幅を示す線を2本または3本ずつ描き、全部で5本または7本の帯(バンド)状のチャートになる。この幅が広がり始めると新たなトレンドに入ったシグナルになる。

上下の線は過去の株価の標準偏差(σ:シグマ)を移動平均に加減したもので、内側から±1σ、±2σ、±3σの幅を示す。統計学上は±2σの間に株価が収まる確率が95.4%であることから、株価がこのバンドを抜けると買われ過ぎまたは売られ過ぎと判断する。この点でボリンジャーバンドはオシレータの性格も兼ね備えている。

チャート分析手法その2 売買タイミングを示唆するオシレータ系

そのオシレータ系の代表格は移動平均線乖離率で、株式市況コメントなどでよく使われる。25日移動平均を使うのが一般的で、株価との乖離が±5%を超えると行き過ぎの可能性が高く、±10%以上は売り買いのシグナルになる。

RSI(レラティブ・ストレングス・インデックス:相対性指数)も人気がある。0~100%の範囲で動き、50%を超えると上昇局面、下回ると下降局面と見る。70%超は買われ過ぎ、30%を下回ると売られ過ぎの領域に入り、さらに80%超、20%未満はそれぞれ売り買いのシグナルとされる。ただ、これらの水準を超えた直後でなく、再び内側に向けて戻ったところで売買する方がリターンは若干落ちるが確実性が高いという方法論もある。

このほかにもオンライン証券会社など多くでMACDやパラボリックといった代表的なテクニカル指標を提供し、わかりやすく解説しているので、使いやすく納得のいくものを探してみるとよいだろう。トレンド系とオシレータ系から少なくとも一つずつ選び、組み合わせて判断材料にするのが望ましい。

日本は江戸時代からチャート分析をしていた?

以上は主に米国発のものだが、日本にも江戸時代の相場師本間宗久が考案した「酒田五法」に代表される優れたチャート分析がある。わずか数日の価格の動きからトレンドや転換点を予測するものだ。日々の株価の始値、高値、安値、終値を示すローソク足に、それぞれの形に応じて陽の丸坊主、カラカサ、トンカチ、トンボなど身近でユーモラスな名前がついている。

酒田五法のうち、転換点を示す典型パターンのひとつが「三山」で、相場が下落に向かう型だ。上げ下げを3度くり返して3つの天井(山)を形成するもので、相場の大天井を予言する。中央の山が最も高い「三尊天井」は米国でもヘッド・アンド・ショルダーの名で知られている。

「三兵」はローソク足の陽線(上昇)もしくは陰線(下落)が3本続けて現れるもので前者が「赤三兵」、後者は「黒三兵」と呼ばれ、それぞれ大きな上昇相場、下げ相場の前兆のシグナルになる。「三川」は前日の陽線の高値を超える陰線の翌日にこの陽線の安値を下回る長い陰線が続くと「宵の明星」、その逆は「明けの明星」とされ、それぞれ売りと買いのシグナルだ。

このほかにも、相場の流れが休みに入る「三法」と呼ばれるパターンや、上げ相場で売り向かえといわれる「三空」があるので一度調べてみてはいかがだろう。

自分に合った分析手法を探そう

チャート分析は、よほどのパニック相場でない限り、あくまでも補完的な手段であり、これに頼りすぎるのは考えもの。株価の長期的な決定要因はやはりその企業の利益動向、つまりファンダメンタルズだ。しかし、増益が続く企業でも株価が上がり続けることはまずない。チャート分析はその間の上下の局面を効率よく投資に活かすのに不可欠なツールといえるだろう。

実際にチャート分析を行ってみよう

ではチャート分析を実際に行うにはどうすればよいのだろうか。実は、たいていのネット証券会社は口座開設を行うことによって、チャートが無料で使えるのだ。ここでは、評価の高いチャートが使える代表的なネット証券を取り上げ、紹介する。

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