複利の効果
(写真=Thinkstock/Getty Images)

先日、米国にある観測装置「LIGO」の調査チームによって「重力波」の存在が実証され、天才物理学者アインシュタインの100年越しの宿題が解けたと大々的に報じられた。その存在は同博士が1916年に発表した一般相対性理論で予言し、これを確認すればノーベル賞は確実といわれていた。

金融界とは縁遠いと思えるこの天才物理学者が「人類最大の発明は複利(The most powerful force in the universe is compound interest.)」と言ったことは有名な逸話として残っている。いつ、どのようなコンテクストで述べたのか不明だが、当時から意識されていた資本主義の弊害に対する皮肉あるいは批判だったという解釈もある。

前置きが長くなったが、今回は「複利」の話。今さらと思う読者もいるだろうが、これに関しては誤解もあるようなので解説していく。

元金を2倍にするためにかかる期間「72の法則」

ご存じのように、金利の方式には単利と複利がある。金利が適用されるのは、単利の場合は「元本だけ」だが、複利は「元本+金利」になる。例えば100万円を年5%の金利で貯金したとする。単利では10年間の金利が毎年の利息5万円x10年=50万円であるのに対し、複利なら元本+金利が2年目以降の元本となるから合計の金利は(1+5%)の10(年)乗の計算から得られる63万円近くと、単利より2割以上多くなる。

複利に関連して博士は「72の法則」という複利の法則についても絶賛したといわれている。元金が2倍になる年数を計算するには、72を利率で割ればわかるという。例えば、利率が年6%なら12年となる。ただ、金利を仮に72%とすると(1+72/100)の1乗=1.72となることからわかるように、これはあくまでも簡略な計算法。それでも金利が3%や6%ならほぼ当てはまる。

複利の特徴は、最初は雌雄2匹でもその後加速度的に増えるネズミ算と同じだ。筆者が勤務先企業から米国に派遣されていた1980年代半ばは同国の高金利時代で、S&Lと呼ばれる地場の貯蓄貸付組合は20%以上の金利を提供していた。毎月の残高はみるみる増え、その後破綻が続くとはつゆ知らず無邪気に喜んでいた記憶がある。

今の預金金利で2倍にするには3000年

しかし現在は世界的に超低金利の時代。日本の預金金利0.025%程度では複利効果はほとんど期待できない。「72の法則」を使うと、資金が2倍になるのは今から2880年後の西暦4896年と気の遠くなるほど先になる。最近導入されたマイナス金利の導入により更に金利は低下していくことが予想される。

先般、日本銀行は民間銀行から預かる資金の一部にマイナス0.1%金利を導入したが、個人預金がそうなることは当面ないと思われる。それでも仮に100万円の預金に同じ金利が適用され、毎年のインフレ率を現状並みの1%(生鮮食品・エネルギー価格を除く)とすると、10年後には単純計算で実質90万円弱、つまり1割以上減ってしまう。

株式には複利の効果は当てはまらない

それなら株式の方がマシ、と早合点してはならない。そう思うのは恐らくここ数年の日本株のパフォーマンスが良かったからだろう。確かに、TOPIX(東証株価指数)の年間パフォーマンスを単純平均でみると、過去10年間が5%、アベノミクス・フィーバーの影響が大きい過去5年間では約11%のプラスだった。これに「72の法則」を再び当てはめると、それぞれ約14年、7年足らずで手元資金が2倍になる計算だ。

しかしここに落とし穴がある。株価が毎年上昇を続けるなどあり得ないからだ。例えば東日本大震災の起きた11年やリーマンショックの08年はTOPIXがそれぞれ17%、41%の大幅下落、07年も22%下げている。15年末までの累積を見ても、06年や07年の年初からみると2%近く下落、今年年初から直近までさらに20%以上下げる局面もみられた。

つまり株式には72の法則が全く当てはまらないということだ。配当があるじゃないか、と思うかもしれないが、理論上はその分株価が下がるし、東証一部の平均配当利回り2%程度では株価が下がると吹き飛んでしまう。

現在、預貯金も先のような状況のなか、個人が複利効果を享受するにはREIT(不動産投資信託)がいいのかもしれない。ホテルやオフィスビルのREITなら今後も底堅い宿泊・賃貸料が見込めるため、銘柄にもよるが2~4%の複利効果が期待できる。取引所に上場している以上、株価(投資口価格)は上下するが、目減りが確実な預金や、価格の不安定な株式に比べれば、はるかに安全な投資先に思えるのだが。(シニアアナリスト 上杉光)

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