3.対策と今後の行方

中国のシャドーバンキングに対しては、金融リスクや第二のサブプライムローン問題など世間を騒がせておりますが、まず、シャドーバンキングといっても様々な商品や信用供与スキームがあること、また、米国で起きたサブプライムローンとは根本的に投資主体が異なることを述べさせて頂きました。中国の信託融資が崩壊した場合、投資家である家計に大きな打撃となります。銀行と直接関係のない信託スキームですが、融資を受ける側の企業と結びつきの深い金融機関への問題が波及することは間違いないです。不動産関連の信託融資に対して償還ブームが到来した際に、不動産関連企業の返済能力は下がり、結果的に銀行が不良債権を増加することになります。ただし、中国の銀行の大半は国有企業であることや、昨今の中国の財務状況は良好で、シャドーバンキングの規模が拡大しているとはいえ、実際に銀行が影響を受ける場合の損失に十分対応できるという見方が多くあります。
また、中国当局についてもシャドーバンキングに対する規制を強化しており、銀行が販売する理財商品(Wealth Management Products、略称WMPs)に対しても監視を強化しています。

以上のように、話題となっている中国のシャドーバンキングの定義、およびサブプライムローン問題との違いについてご説明させて頂きました。巷ではシャドーバンキングについて、インフォーマルな怪しげな組織が金融業を営んでいるような話が先行していたり、ハイリスクな商品にバブリーに資金が集まっているような報道があります。確かに、シャドーバンキングという概念にはそういった金融業、組織を指す場合もありますが、中国で現在問題になっている信託商品などハイリスクの金融商品は、ある意味直接金融への第一歩であるとの見方もあります。
ただし、直接金融であるがゆえ、個別のデフォルトを招くリスクは高く、2014年中に小規模なデフォルトが起きることは確実です。そのため、金融当局は監視、規制を強化していますが、米国発、世界不況につながったサブプライムローン問題とは構造的に異なることや、中国の閉鎖的金融制度によって、影響は限定的でしょう。

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※参考

中国の金融・資本市場改革 ―シャドーバンキング問題と不良債権問題― 野村資本市場研究所
シャドーバンキングは中国版サブプラム・ローン問題を引き起こすか  李 刊中国資本市場研究

photo:Mao and Washington / Jason A. Howie