中国のGDPは2010年に日本を抜き、アメリカに次いで世界第2位となった。多くの日本企業も中国へ進出している現状があり、中国経済との関わりを軽視することはできない。
中国経済の動向を知ることが、資産運用においても、ビジネスを進めるうえでも重要だ。その中国経済を読み解くひとつの指標として「外貨準備高」の増減が専門家の間でも注目されている。中国の外貨準備高をどのような視点で読み解けばよいか解説していく。
外貨準備高とは
外貨準備高とは、各国の通貨当局が保有する対外準備資産の額である。外貨を保有する目的は、債務の返済や輸入時の決済、為替の急激な変動防止が中心となる。外貨準備は、外貨、IMFリザーブポジション、SDR、金などから構成されている。
IMFリザーブポジションは、IMF (国際通貨基金) 加盟国が出資金に応じて引き出せる額のことだ。SDRとはIMFの特別引出権のことで、加盟国の準備資産を補完する手段として1969 年に創設された国際準備資産だ。ただし、SDR保有額が配分額を下回ると不足分に対して利息を支払うことになる。
外貨準備の活用の一つに為替介入があるが、日本では財務大臣が円相場を安定させるための手段として用いられる。この場合、日本銀行は財務大臣の指示に基づいて実行しているため、「日銀介入」とあってもあくまで財務大臣の指示に基づくものである。
財務省の発表によると、2016年12月末における日本の外貨準備高は、約1.22兆米ドル (1米ドル115円計算で約140兆円) である。外貨準備の約95%が外貨となっているのだ。日本銀行の外貨資産は、高い安全性と流動性の確保が重視されている。主に海外中央銀行への預け金や国債で、米欧主要国の国債が外貨資産の中心である。
世界銀行のデータによると、2015年の外貨準備高順位は、1位が中国 (約3兆4,053億米ドル) 、2位が日本 (約1兆2,331億米ドル) 、3位がサウジアラビア (約6,270億米ドル) となっており、アメリカは5位 (約3,837億米ドル) である。
中国の外貨準備高と対ドル為替レートの関係性
中国は世界の工場であるとともに、巨大な内需を抱えているため世界経済への影響力が大きい。しかし中国は一党独裁体制であり、自由な資本移動にも制限をかけているため、経済政策や金融政策が見通しづらいという意見も多い。
その中国の通貨政策を大まかに測ることができるのが「中国の外貨準備高」だ。米国債が大多数を占めると言われている中国の外貨準備高と、米ドル/人民元為替レートには、ある規則性が確認できる。あくまで過去の推移を大きな視点で見た場合であり、今後の値動きを約束するものではないが、「外貨準備高が増加する局面だと対米ドルで人民元高が進み、外貨準備高が減少する局面だと人民元安が進む」という傾向だ。
実際に数字を確認してみよう。中国の外貨準備高は2014年7月に4兆ドル近い水準から減少に転じている。前述の通り、2016年末では約3兆ドルまで収縮し、約2年半で1兆ドル近く減少した。この間の米ドル/人民元為替レートは、2014年11月の1米ドル=約6.1人民元を高値に、1米ドル=約6.9人民元まで人民元安が進んでいる (2017年2月現在) 。
中国の外貨準備高を読み解く
もちろん為替レートはさまざまな要因が複合的に重なりあって動くので、外貨準備高だけの影響とは言えない。しかし、上記のデータは、止まらない資金流出傾向 (人民元安) に歯止めをかけるべく、中国当局が継続的な「米ドル売り・人民元買い」を行っている可能性を示唆している。従って、外貨準備高から以下のような論理を展開することができる。
それは、「中国当局が今以上の人民元安を好ましいとは考えていない」ということだ。日本人の感覚では自国通貨安は輸出競争力の向上に繋がり、景気押し上げ要因と思いがちだが、巨大な内需を抱えている中国では、そのメリット以上に輸入品の物価上昇などのデメリットが大きいと天秤にかけている可能性がある。ここから「中国当局は、これまでの外需主導の経済から、内需主導の経済に移行したがっている」と読み解くこともできる。
中国の動向を読み解く指標の一つに
いずれにせよ、2年半で外貨準備高が約1兆ドル減少していることは事実だ。2015年夏、中国人民銀行が人民元の切り下げに踏み切り、中国経済の減速懸念から、金融市場が大きく動揺したことは記憶に新しい。
日本や米国に比べて情報開示の制度が整っていない中国の動向を鑑みる際に、外貨準備高は多くの示唆を与えてくれる重要な指標と言えるだろう。(提供: 大和ネクスト銀行 )
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