相次ぐ台風や火災などの災害……。一日も早い復興を願って寄附をした人もいることでしょう。寄付にもいろいろな種類があり、「寄附の種類によって使われ方が違う」ことや「寄附が節税になる」ことをご存じでしょうか。今回は、寄附の違いと節税の種類について整理してみます。
支援金、義援金、寄附……どう違う?
災害などに充てられる善意のお金には「支援金」「義援金」「寄附」の3種類があります。一見どれも同じに見えますが、次のような違いがあります。
●【支援金】被災地で支援活動する団体に送られるお金
支援金は、被災地で支援活動をする機関や団体(NPOやNGO)に送られるお金のことです。実際に活動する機関や団体が集めたお金の使い道を判断・決定するため、集金から活用までのスピードが速いのが特徴です。使い道は人命救助やインフラ整備などさまざまです。
ただ残念ながら、機関や団体によっては支援金の使い方がしっかりしていないところもあるようです。送金前に、支援金の用途や機関・団体の収支報告書を確認するようにしましょう。
●【義援金】被災者に直接渡されるお金
義援金は、被災者に直接手渡されるお金をいいます。実際は、日本赤十字社や赤い羽根共同募金、政府などの機関が受付窓口となってお金を集め、被災地に分配します。
義援金の分配は、活動の中心となる組織が死亡・行方不明の状況や被災の度合いを検討し、公平・平等になるよう分配額を地域ごとに決定します。このため、義援金が被災者のために確実に使われるという利点がある一方、被災地にお金が届くまでに時間がかかってしまいます。
「被災者に分配される」という義援金の性質上、被災地での人命救助や復興作業には使われません。
●【寄附金】支援金や義援金を含むお金で、金銭や財産を無償で贈ること
寄附金は、上で紹介した「支援金」と「義援金」を含み、主に公共団体やNPO、学校法人や宗教法人などに対して金銭や財産を無償で贈ることを言います。しかし、支援金や義援金ほど厳密な定義はありません。寄附先も限定されておらず、政党や政治団体、国や地方自治体へのお金も寄附金になります。なお最近注目の「ふるさと納税」は、地方自治体への寄附金です。
善意のお金でこんな節税ができる
寄付金控除とは、寄附した金額の一部を所得税の課税基礎である所得額から控除できる制度です。控除額は次の算式で計算した金額です。
寄附金控除額=次のいずれか低い金額-2,000円
- その年に支出した特定寄附金の額の合計額
- その年の総所得金額等の40%相当額
つまり、毎年1月1日から12月31日までの間に寄付した金額の大半を、総所得金額等の40%相当額を上限に所得額から差し引くことができるわけです。「総所得金額等」とは、給与所得や事業所得、雑所得などといったほぼすべての所得を合算したものです。
ただし寄附金控除できる寄附は、次のような公共性の高い法人や団体に対するものに限定されます。
- 公益社団法人や公益財団法人など
- 日本赤十字社
- 社会福祉法人(赤い羽根共同募金など)
- 認定NPO法人
- その他所得税法で定める法人・団体
●寄附金特別控除(税額控除)
寄附先が認定NPO法人や公益社団法人の場合、所得控除である寄附金控除の代わりに、所得税額から寄附金の一部を差し引く寄附金特別控除を選ぶことができます。控除額は次の算式で計算した金額です。
税額控除できる寄附の金額=(その年中に寄附した金額-2,000円)×40%
税額控除の上限は所得税額×25%相当額で、100円未満は切り捨てです。
控除を受けるために必要な手続きとは
これらの控除を受けるには、寄附した年の翌年3月15日までに確定申告を行う必要があります。確定申告書には、寄附金の受領証など寄付したことの証明書などを添付します。なおコンビニなどの寄附金ボックスのように、証明書の出ないものは控除の対象にはなりません。
思いが伝わるお金の出し方を考えてみては?
「寄附」といっても、寄附の仕方によってお金の使われ方や使われるまでの時間は異なります。被災地の状況や寄附を募っている団体の情報を知り、「どういうお金の出し方だったら自分のお金と思いがしっかり伝わるのか」を事前に考えてみるとよいかもしれません。(提供=auじぶん銀行)
執筆者:鈴木まゆ子(税理士・税務ライター)
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