過去の大会よりはGDP押し上げ効果は小さい?

過去のオリンピック経済効果の研究によると、開催5年前から2年前にかけて実質GDP成長率が高まり、実質GDPについては開催年までに累積10%程度押し上げられ、さらに、オリンピック開催後もGDPの水準は低下しないそうです。

みずほ総研が、過去のオリンピックにおけるGDP成長率の押し上げ率を日本にあてはめて試算したところ、2015−2020年のGDP成長率は+0.3%押し上げられて5年間の累積効果は36兆円にのぼったといいます。

ただし、日本は高度経済成長を果たした国で、東京は主要インフラが整備された都市です。コンパクト五輪を志向していることも考えると、過去、成長の最中にある国で開催された大会ほど経済効果は大きくないかもしれません。似たような成熟都市であったロンドン五輪では、金融危機に見舞われたという特殊事情もあり、 開催までの9年間合計の経済波及効果は約5−6兆円(1ポンド170円換算)だったと英国政府から公表されています。

五輪後の経済落ち込みは不可避?

一方、国際通貨基金(IMF)によると、過去8大会においては、アトランタ・ロンドン大会以外は五輪後に経済が落ち込んでいるそうです。

オリンピック後にGDPの水準が低下しないとした日銀の見解とは異なります。海外観光客については、五輪による認知度向上やインフラの多言語化で日本の知名度が高まり、その後も経済効果を維持することは可能でしょう。

しかし、前倒しの投資や消費の反動が後に出るのは予想できることであり、財政負担増によるマイナス影響もあり得ます。

五輪後の経済リスクに備えるべき

経済成長について考えると、五輪のもつ一過性のイベントという側面に期待するだけでは十分ではありません。規制緩和による需要創出、労働生産性向上・女性や高齢者の労働参加促進による人手不足の解消、社会保障費抑制による財政再建などに取り組むことで、経済の基礎体力をつけておかなければ、五輪後の景気悪化が現実になってしまいます。

最近はUberや民泊などのシェアエコノミー、外国人労働者の受け入れなど、新しい風をビジネスに吹き込むチャンスも見られます。4年後やその先の、アフター五輪に向けて官民ともに備え始める時期ではないでしょうか。(提供: お金のキャンパス

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