「実績を数字で示す」だけでは十分とは言えない

それでは、組織のリーダーになるような有能な人と、一般社員で終わる人の第一印象には違いがあるのか。井上氏はこう答える。

「組織のリーダーになれる人は、虚勢を張らず、自分への自信があるため、自然体です。いい意味で『素のまま』と言えるでしょう。初対面の緊張する場面であっても、自分をさらけ出し、相手にも興味を示す、オープンマインドな姿勢です。これは、相手と対話をする余裕があるということ。ですから、仮に辛い状況下であっても、周りを見る余裕と強さを持っている可能性が高いのです。

一方、一般社員で終わる人は、自信のなさから、過度にへりくだったりするので、相手との距離が縮まりません。“狭い視界の人"と見なされても仕方のないことです」

もちろん会話の内容にも、能力の違いは如実に表われる。

「それなりに能力の高い人なら、『あなたの仕事における成果を話してください』と言われれば、『社内では常に営業成績トップで、年間5,000万円の売上げを上げています』などと、事実と数字で話すことができるでしょう。

ただ、リーダーになれる人はさらに上を行きます。Fact(事実)、Number(数字)に加えて、Logic(論理)で物事を語るのです。『なぜ、それだけの成果を上げることができたのか』という背景を論理的に説明し、自分のヴィジョンや仕事の内容まで生き生きと語れるのです」

一営業マンとして働いていくだけなら「がむしゃらに飛び込み営業に徹しました!」でもいいかもしれない。しかし、組織を運営していくリーダーの立場となれば、話は違う。

「リーダーは戦略を組み立てて、上意下達していかねばなりません。時代の潮目が変われば、即応した戦略の見直しも必要になります。リーダーは結果だけが求められるのではなく、そこに至るプロセスを具体的に考え、語る力を持つことで、組織を動かしていかなくてはならないのです」

一方、一般社員で終わる人に多く見られる傾向として、物事を形容詞で語る特徴がある。

「たとえば、『どういった成果を残してきましたか』という質問に、『類まれなる結果を残してきた』では困ります。どう〝類いまれ〟なのか分かりませんよね。形容詞では、聞き手は物事の程度を測れないのです」

また、経験は浅いが重要なポストで活躍する人材は「物事を端的に話す」ことに長けている人が多いという。

「とくに多忙な経営者相手には、〝結論ファースト〟が基本。『Aであるし、Bでもある。だから、私はCだと思います』という話し方より、『私はCだと考えます。なぜなら、Aであるし、Bでもあるからです』と結論から述べる話法が好まれます」

話の中身も大事だが、話し方一つでも印象はがらりと変わることを覚えておくべきだろう。