理想とする人物の振る舞いを真似てみよう

第一印象とは、見かけだけでなく、思考や実践の積み重ねの上に作られるものでもある。「第一印象からはその人の日頃の考え方や取り組みが透けて見えます。その意味では、これからの心がけ次第で、第一印象を変えていくことも可能です。

その方法とは、理想とするリーダー像やビジネスマン像を日頃から意識し、振る舞いや発言を真似て、思考を重ねていくことです。人間は習慣の生き物ですから、やがてはそれが、あなた自身の印象へと変わっていくはずです」

また、論理的な思考力や説得力を身につけるには、「言語化トレーニング」が最適だという。
「ビジネスでの方針や戦略、ヴィジョンを文字に書き起こしてみましょう。すると、頭の中では論理立てているつもりでも、曖昧で足りないヴィジョンが見えてきます。言葉を組み立てることで、そうした部分を補完し、人を納得させる力を磨くことができます」

有能な経営者やリーダーは、まるで一枚の絵を広げるかのように鮮やかにヴィジョンを語ることができる。それは、彼らが常に、言語化と思考する習慣を積み重ねてきた結果なのだ。

「また『言語化』という意味では、自分の能力や思考、得意分野についても、率直にアピールできるようになるべきですね。『能ある鷹は爪を隠す』ということわざがありますが、日本人は周囲に自分をアピールすることを遠慮しがちで、それを良しとする風潮すらあります。

しかし、この『美徳』はもはや現代では通用しません。海外においては、自分の武器を見せない人は無能と見なされ、グローバルリーダーになることはできません。

日本においてさえも、じっくり育てようと悠長に構える時代は過ぎ去り、即戦力として使える人間が求められています」

自分の武器を相手に見せずに終わるのは、大きな機会の損失である。オーバープレゼンテーションではなく、自分の価値を素直に示せるフラットな感覚と表現力は、身につけておいて損はない。

「第一印象とは、あなたをわかりやすく伝えるショーウインドウのようなもの。それを意識して、日頃の取り組みから第一印象を磨いていけば、人生のあらゆる場面で、より多くのチャンスを手にできるはずです」

井上和幸(いのうえ かずゆき)㈱経営者JP代表取締役社長・CEOエグゼクティブコンサルタント
1966年、群馬県生まれ。1989年、早稲田大学政治経済学部卒業後、㈱リクルート入社。2000年、人材コンサルティング会社取締役に就任。2010年、「経営者JP」設立。1万名超の経営者・経営幹部と対面してきた実績と経験から、エグゼクティブ向けの人材コンサルタントとして活躍中。近著『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)。

(取材・構成:麻生泰子 写真撮影:永井浩)(『 The 21 online 』2015年12月号より)

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