節税
(写真=PIXTA)

突発的な利益増大は「税率アップ」など予期しない納税に?

多忙で日常の仕事に追われている経営者にとって、決算間近で今期の利益が想定を超えていることに気が付くということは、よくあるパターンです。想定を超える利益が出たことは決して悪いことではありませんが、そのまま何も節税対策せずに看過してしまうと、納税額が高くなります。中小企業の場合、日常的に資金繰りに苦しんでいる企業も少なくないため、来期以降も今期のような収益が見込めれば別ですが、ある日突然資金難に陥ることもあるでしょう。

具体的には税率の上昇などがあります。法人税を例にあげると、課税所得金額が400万円以下、400万円超800万円以下、800万円超と3つに区分されており、800万円以下までは税率15%ですが、800万円超になると税率は一気に25.50%に上昇します。同様に、地方法人税も0.66%から1.12%へ上昇。法人住民税なども適用税率が2倍近くに跳ね上がります。

決算間近でも可能な節税方法とは?

具体的な節税方法は、税理士などと相談して決めることが大切ですが、節税対策は大きく分けて「経費の掛かる節税対策」と「経費の掛からない節税対策」があります。それぞれの方法について簡単に紹介しておきましょう。

<経費の掛かる節税対策>
「決算賞与」の支給……節税対策で良く取られる方法ですが、税金逃れと思われないためには、支給する前に決算賞与の社内規定を定めておくことが大切です。また、たまたま決算月に現金がないような場合は、従業員一人一人に支給額を通知しておけば、決算月内での「損金」として計上が可能になります。

30万円未満の備品購入……資本金1億円以下の青色申告法人には、30万円未満の「小額減価償却」が認められています。パソコンなど1台30万円以下の備品であれば、決算前に買っておけば一括して損金として計上できる制度です。ただし、取得価額の合計は300万円まで。取得価額はセットで計上可能です。たとえば、机と椅子をセットで計上できます。

決算月の社員旅行を実施する……社員旅行と言ってもいくつか条件があります。具体的には「社員全体の50%以上が参加」「4泊5日以内の旅行期間」であることなどが求められます。また、旅行代金は社会常識の範囲内であることなども求められます。

生命保険の加入や見直し……節税方法としては割と一般的であり、かつ将来を考えたときに効果的な方法です。たとえば、経営者自身も含めた役員自身の「役員退職金」を保険によって蓄えておくという方法です。具体的には、定期保険や養老保険を使った方法で、法人が契約者となり被保険者を役員や従業員にする方法です。

こうした法人保険は、たとえば1000万円の保険料を支払うと、その全額もしくは半額を損金として計上でき、一般的な節税方法に比べて費用対効果が大きいと言って良いでしょう。さらに、法人保険は緊急時の予備資金を「簿外」にプールできるというメリットもあります。将来の資金繰り困難にも対応できるメリットがあるということです。

法人保険の加入は、2週間もあれば手続きができるために、決算直前の節税対策としては向いている方法と言って良いでしょう。ただし、法人保険は節税というよりは「納税の繰り延べ」に過ぎないというデメリットがあります。保険金受け取り時には利益として計上しなければなりません。また、解約のタイミングを誤ると損失を出す可能性も否定できません。加入の際は専門家に相談することが大切です。

「中小企業倒産防止共済」への加入……取引先の経営破綻などで中小企業が連鎖倒産するのを防ぐために設けられた制度で、国が100%出資しているため安心できます。月額の掛け金は5000円~20万円ですが、掛け金の前払いができるため決算直前であっても最高で240万円の損金または必要経費に計上できます。

「小規模企業共済」への加入……従業員20人以下の個人事業主であれば、退職金代わりに掛け金を積み立てられる「小規模企業共済」に加入することができます。掛け金は月額1000円~7万円で課税対象金額から控除されます。1年以内の前納も可能ですから、決算直前に加入すれば、1年分の掛け金を前納することで節税できます。

<経費の掛からない節税対策>
給与の未払い計上を行う……たとえば20日締めの企業の場合、21日から月末までの従業員の給与を経費として「未払い計上」ができます。ただし、取締役は除きます。

修繕費を前倒しで計上する……来期に予定している修繕を行い、今期の決算で修繕費を計上する方法です。もともと予定していたものであれば資金的にも無理はないはずです。

具体的には、支出の額が20万円未満、もしくは3年以内のものであれば無条件で経費計上が可能です。修繕の内容が新たな設備投資(資本的支出)と混同されるようなものについても、支出額が60万円あるいはその資産の取得金額の10%以下の場合は修繕費として損金計上できる場合があります。詳細は、税理士などに相談しましょう。

来期の広告宣伝費を前倒しで計上する……修繕費同様に、支出時に無条件で必要経費として計上できるのが広告宣伝費です。来期に予定していたポスターやカレンダーの作成などを前倒しで発注して必要経費として計上してしまう方法です。また、契約中の広告なども決算時に前払費用として計上することができます。

家賃を1年分前払いする……決算月に最高で1年分の家賃を前払いしてしまう方法があります。家賃の前払いは、大家さんとの間で契約を交わすなど、一定の手続きが必要ですが、検討してみる価値はあります。

専門家に相談して、行動は素早く

こうしてみると、決算直前であっても、節税対策の選択肢は数多くありそうです。しかし、時間をかければもっと効果的で、将来の成長に役立つ節税対策が取れることも事実です。多忙な経営者の場合、なかなかそこまで対応できないかもしれませんが、税理士などと定期的にミーティングの機会を持って決算対策を話し合うことが大切です。

四半期ごと、半期ごとに、税理士とミーティングして、今年の決算の見通しについて話し合っておくと、期末間際になっても落ち着いて対応することができるでしょう。(提供: TRUSTAX

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