「昨今の住宅取得事情」の第5回は、近年取得者が増えている中古住宅に着目する。
最近の中古住宅取得の傾向
◆中古住宅取得者の増加
第1回で見たように、新築住宅に比べて、中古住宅を取得する人は少数派である(*1)。
ただし、図表1に見るように、中古住宅の成約件数は増加傾向にあり、今から15年以上前の1998年と比べると2倍近くに達していて、特に最近の伸びが大きくなっている。中古住宅を取得する人は、年々増えていると言えそうである。
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(*1)最近の住み替え方法では、新築注文住宅が11.3%、新築分譲住宅が8.2%、中古住宅が8.6%(平成25年住生活総合調査)
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◆中古住宅に対する消費者の意識
中古住宅を取得する人が増加している背景には、中古住宅に対する消費者の意識の変化がある。図表2は、持ち家への住み替え意向を聞いた調査結果だ。平成25年の調査では、「新築住宅」への住み替えが55.8%、これに対し「中古住宅」への住み替えは13.9%と開きが大きい。
しかし、中古住宅の割合は調査時点毎に高くなっている。「こだわらない」も同様である。いまだに新築志向が強いものの、新築、中古にこだわらない層が増え、中古住宅を積極的に選択する人が着実に増えている。
中古住宅の魅力と懸念
◆中古住宅にした理由
図表3-1は中古住宅取得者が中古住宅にした理由について複数回答した結果である。「予算的に見て中古住宅が手頃だった」が約75%で最も高くなっている。次に「新築住宅にこだわらなかったから」が約43%で高くなっている。中古住宅取得層にとって、新築か中古か以前に価格が安いことが、中古住宅の魅力になっていると理解できる。
「リフォームによって快適に住めると思った」(約31%)、「間取りや、台所、浴室等の設備、広さが気に入った」(約27%)の割合が比較的高い点も、積極的に中古住宅を選択している昨今の傾向を示している。
◆中古住宅にしなかった理由
注文住宅、分譲住宅取得者が中古住宅にしなかった理由(図表3-2)を見ると、「新築の方が気持ち良いから」の割合が最も高くなっているが、これを除けば、「リフォーム費用やメンテナンス費用で結局割高になる」、「隠れた不具合が心配」、「耐震性や断熱性など品質が低そうだから」、「給排水管などの設備の老朽化が懸念された」などの理由が高くなっている。総じて古いことからくる品質面への懸念と読み取れる。
こうした中古住宅に対する懸念点を取り除くことができれば、若く、年収が低いファミリー層が、新築より安い価格で、安心して良質な中古住宅を購入することができるようになるであろう。
塩澤誠一郎(しおざわ せいいちろう)
ニッセイ基礎研究所 社会研究部
准主任研究員
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