スマートフォンのモバイル指紋センサー人気が発端となり、一気に市場が拡大された「バイオメトリクス(生体認証)」。昨年の138億ドル(約1兆5552億円)という収益に加え、5年以内には年間収益300億ドル(約3兆3810億円)の巨大市場に成長すると予想されている。

特に欧米の政府はサイバー・セキュリティー対策の予算を大幅に引き上げると見られており、バイオメトリクスへの需要がさらに高まるといわれている。

北米とアジアで盛り上がる市場

バイオメトリクスは、人間の身体的特徴や動作から本人確認を行う技術。かつては警察や軍隊といった国家組織でのみ利用されているイメージが強かった。

しかし近年その用途はスマートフォンやPCのログインから、銀行口座、ATM、決済などを含む金融業務にまで急速に広がりを見せている。

通信関連情報を専門とする米調査会社、ABIリサーチの分析によると、北米とアジア太平洋地域における高需要は今後もペースを維持。その一方で、FinTechの新旗手として注目されている南米や中近東でも、バイオメトリック市場の成長が期待できるだろう。

現在最も手軽に利用されているのは指紋センサーだ。2014年から2019年にかけての年平均成長率予想は215.49%。2021年には販売数が20億に達するといわれている。

ABIリサーチのアナリスト、ディミトリオス・パブラキス氏は、5年以内には監視カメラの3割がネットワーク・カメラとして利用され、顔認証の需要も伸びると見ている。

金融業界ではすでにマスターカードや英アトムバンクなどが、顔認証ログイン・システムの開発を複数のテクノロジー・スタートアップと進めている。

なかでもマスターカードは顧客が2つのオプション(声帯認証と顔認証)からログイン方法を選べるモバイル決済「selfie pay」のサービスを14カ国開始するほか、心拍数による認証システムも検討するなど、決済業界での地位を獲得したい狙いがあるようだ。

iPhoneの「Touch ID」も若い世代で浸透しつつあるなど、消費者も徐々にバイオメトリクスを受け入れ始めている。「顔認証は顔の表情や加齢に、声帯認証は体調に影響されやすい」といった弱点が克服される日が訪れれば、予想を上回る結果が市場で見られるかも知れない。( FinTech online編集部