中国,習い事,
(写真=PIXTA)

中国沿海部のQ市では、小学校の門前に1日2回、車が列をなす。平日の朝と午後3時ころ、子弟の送迎のためだ。

中国では子供の誘拐されるリスクが高い。実際個々のケースは地方紙にすら載らないほどだ。そのため低学年の公共バス通学では両親または祖父母が付き添う。

また某金持ちは、有名小学校まで、毎日片道1時間アウディを飛ばす。通学のため1日4時間失っている計算だ。

中国人は子供のために、一族総動員体制を敷いている。その実態を探ってみよう。

教育にかける中産階級

同市は昨年8月、夏休み過ごし方アンケートの調査結果を発表した。それによると休み中、子供のために消費した金額は、3000元以下25%、3001〜5000元18%、5001〜10000元38%、10001元〜15000元15%、15001元以上4%という結果だった。

主な使途はキャンプその他野外活動20%、観光旅行41%、学習指導及びその合宿39%だった。結果として生徒の80%が旅行を体験した。十分な金額だと思うか、との問いには77%が十分、23%が不十分という答えだった。

また小学4年生を対象とした「学業水準観測調査」によると、自室を持っている81.4%、独立の学習机がある91%、パソコンがある82.1%、ネット環境がある45.4%、携帯を持っている39,4%だった。校外の学習には79.4%が通っており、週平均は8,1時間だった。なお宿題に当てる時間は、週6.2時間だった。最も多かったのは英語塾で、44.2%を占めた。

ある小4男児のあまりにハードな週末

Q市の小学4年生男児を詳しく取材した。両親は幼なじみの同級生、41歳で2人とも大卒。夫は外資系食品(菓子)会社部長職プラス副業あり、妻は紅十字会(赤十字)事務職。マンション所有、ローンは既に終了している。

昨年車をフォルクスワーゲン・ゴルフから小型のアウディに乗り替えた。価格は2.5倍以上したはずである。昨年の大型連休、2月の春節はベトナム、カンボジアへ、10月の国慶節は日本へ家族旅行している。典型的な都市型中産階級といってよい。

さて息子のスケジュールである。平日は宿題に追われ、週末のみである。

土曜
午前 国語教室(1回100元)、ダンス教室(同50元)
午後 英語教室(10カ月9960元)
夜 アイスホッケー教室(1回150元)

日曜
午前 なし
午後 ピアノ教室(1回200元)書道教室(同100元)
夜 水泳教室(1回150元)

7項目に1カ月4000元以上の費用をかけている。英語教室が一番高額だ。一度覗かせてもらったことがある。都心のマンション10階、満席で20人くらいだろうか。始業直前でも5〜6人しか集まっておらず、需要はあっても競争は厳しいようだ。

日曜の午前が空いているのは、通っていた台湾人経営の科学教室が終了したためで、来月になれば、ここも埋まっている可能性は十分ある。両親は息子の移動のため、1日中車で走り回り、食事はファーストフードで済ませる。

当の4年生本人は、へこんでいるようには見えない。かといって元気一杯でもない。ときに疲れたような表情を見せる。かつて彼は、「本当はカレーとスパゲッティが食べたい、でも両親にダメ出しされるのはわかっているから言わない。」と自嘲気味に語った。早くも中国的諦観が表れているようにも見える。やはり土日の“苦行”は、子供らしい溌剌さを消している。しかし両親はやりすぎとは思っていない。