上海の小1の子を持つ母親の場合
いつから“苦行”は始まるのだろうか。上海で小学1年生、9月から1年生という6〜7歳の子供を持つ母親3人にインタビューできた。
某1年生の母親(吉林省出身、夫は上海人)は、田舎の大自然に囲まれて育っただけに、子供を1年生から塾通いさせるつもりは毛頭なかった。
しかしあるとき、学校から呼び出される。成績表は5段階で、優プラス、優、優マイナス、良、合格、と付けられる。“合格”とは最低評価のことである。「お宅のお子さんは“合格”が複数ある。一体どうなさるお積りか」という面談だった。
上海では小学1年生から英語の授業がある。“合格”の1つはその英語だった。彼女はその教師の脅しに屈する形で、英語塾に通わせることした。
教師にしても子供たちのため、というより自分の評価・保身のため、の匂いが濃厚で、いかにも中国らしい。1年生の子供は毎日夕食後、夜9時まで勉強しているという。
上海での競争は厳しい。残り2人の母親は生粋の上海人で、そんなことはわかっている、という口ぶりだった。9月に新入学を控えた母親は、すでに塾、習い事教室の選定に余念がない。“合格”の発生にもすぐに対処できる。闘志満々である。
必死の中産階級
このように中国の都市型中産階級は、子弟の教育に必死に取り組んでいる。親の金で遊び呆けている富豪2〜3代目たちとは比較にならない。
今後の中国を支えるのは彼らの子弟に間違いない。懸念は、すでに人生逃げ切りを果たした富豪層と違い、経済状況しだいで、富豪・労働者のどちらに転ぶかわからないことである。
またそれを自覚すればこそのひたむきさであり、ちょっと痛々しい。中国人にはもう少し落ち着いてもらうしかない。日本の人情、風景に触れリラックスしてもらうのも一案だが、根本的解決にはなりそうもない。(高野悠介、現地在住の貿易コンサルタント)