前回のコラム「
外資系金融機関に転職するには
」では、「自分が何ができるか」また「何をしたいか」を明確にした上で、相手がチームの一員として欲しがる人財となる事が必要だと述べた。今回はより具体的に、外資系金融機関ではどの様な人材を求めているかを見たい。
フロント部門は結局、「いくら儲けられるか」
外資系に限らず、投資銀行や証券会社の営業部門では「数字が人格」といわれる事がある。極端に言えば、営業能力が高く、実際に会社に利益として貢献しているのであれば、どれだけ、人格が破たんしていようと評価とは関係ないこともある。成果を出していれば「勝手にさせておけ」といった対応をする場合がある。
外資系金融機関の多くのフロント、営業部門においても営業結果は極めて重要視される。俗に外資系は給与が高いといわれるが、その理由が営業部門での利益に対するインセンティブが大きく、そのイメージから給与が高いといわれている。彼らは営業成績、自社に儲けさせた金額から明示される金額がインセンティブ、ボーナスを受け取ることができるのだ。
多く稼ぐことができる者はその分、多くのボーナスを受け取ることが出来る。当然に彼らも月収も受け取っているが、ボーナスのみで十二分に生活ができるため、月収は触っていないという営業は数多く存在する。
フロントは結局、営業力での勝負だ。営業力が高い者同士の争いの中で、勝ち残った者は高いボーナスを受け取り、敗退したものは転職する。営業の能力事態は日系でも構築でき、実際に外資系金融機関には中堅の証券会社や保険会社出身者が数多くいる。企業名ではなく自身の名前で戦うことが出来る人脈と営業能力を高めることが王道であり、一番の早道だ。
ミドル・バック部門は専門性とコストパフォーマンス。
ミドル・バック部門、非営業部門である部署では、専門性とコストパフォーマンスが求められる。日系の多くは転職の際にオファーを受ける際、「○○部門で△△(部長・課長などの役職)をお願いしたい」といった、抽象的な業務内容で話が進む場合が多い。
しかし外資系金融機関においては、役職は当然ながらより具体的に、担当となる業務のタスクまで話を行う。例えば「経理部門の日本会計基準チームでオフサイトモニタリングの主要勘定の作成と……」といった形だ。
これは外資系においては業務内容・タスクがしっかりと明示化されており、マニュアル化もされているためだ。外資系は一般的に社員の流動性が極めて高い。クビとなる場合もあるが転職も多く、トップが転職した場合チームごと転職していってしまう事も珍しくない。
その為、ある日いきなりに重要部門が全員退職してしまう可能性がある。その様な場合であってもすぐに対応ができるようにマニュアルがしっかりできており、業務の属人化、「○○がいないと業務が回らない」といった状況を排除している。
日本企業においては、この様な状況となることを、自身が頼りにされているかの如くポジティブに捉える者が多いが、業務をブラックボックス化するものとして外資系ではネガティブにとられる。また、担当しているタスクが明確となっているため、毎月の想定される業務量、業務時間が算出されており、それに基づいて年棒が払われている。
「……これらのタスクをお願いするので年棒700万でお願いしたい。」といった形だ。そしてこの場合、残業については極めて悪評価となる。例えば毎月に残業代が6万円出ていたとする。その場合、そのスタッフを使う事で、本来年間700万で済む業務が、残業代年間72万を加えて772万円かかっている事になる。
つまりこのスタッフを雇用していることで本来想定される費用よりも1割程度費用が過剰にかかっている。当然にこのスタッフの評価は良いものにはならない。
「英語ができれば転職できる」という誤解
日系企業にて勤務しており、外資系金融機関に転職を望む者の多くは、英語ができないから転職できない、もしくは転職するために英語を勉強している者が多い。これはよくある間違いだ。
逆の立場で想像してみると良い。日系企業の海外法人で現地のスタッフを採用する場合、どの様な人材を採用するであろうか? 日本語を話すことが出来れば誰でもよいであろうか? 英語を話す能力だけであれば、英語が堪能な日本人よりも、欧米の子供たちのほうが流暢に英語を話すことができる。
採用の際に求めているのは英語の流暢さではなく、仕事ができるかどうかだ。まして外資系金融機関の多くは、本社は欧米であっても、各種本社機能は中国やインドにて行っている場合が多い。
もちろん中国やインドのスタッフとコミュニケーションをとる際には共通言語である英語を利用することになる。しかしそこでは流暢さが求められているのではなく、仕事の中身が求められる。結局は仕事ができるかどうかが重要だ。英語が仕事で利用するツールの一つに過ぎない。
外資系に転職するというと身構える者が多いが、求められている事は極めて根本的なことだ。
しかし例えば「残業をするべきではない」といった事を頭では理解していても、実際には様々な理由で残業を行っている人が多いのではないだろうか。最終的に外資系に転職できるか否かは、それらの理由をいかに突破できるか、結局はいかに仕事ができるかという至極当たり前な事実にかかっている。(ZUU online 編集部)