2016年現在、日本の外資系金融機関ではいまだ嵐が吹き荒れている。ここ数年間で香港上海銀行やスタンダードチャータード銀行などが日本国内の富裕層向けビジネスから撤退した。また日本における最大の外資系金融機関であったCitiグループも投資銀行・証券部門はSMBC日興証券となり、商業銀行のリテール部門もSMBC信託銀行統合された。しかしいまだ日本で活躍している外資系金融機関は数多く存在しており、我が国の経済を少数精鋭でけん引しているのは間違いない。

外資系金融機関は就職先として人気のところも多く、金融業界のビジネスパーソンで「転職先」として魅力的に思っている人も多いだろう。

そもそも「外資系」とは何なのか

まず「外資系企業」と聞いてどの様なイメージをするだろうか。2000年頃から特に米国籍のコンサルティング企業や金融機関が、成果主義によって莫大な給与を得ていることが賛否も含めて報道された。その分、早朝から深夜までの厳しい勤務形態となっている。

「外資系」は、経済産業省がまとめている「外資系企業の動向」の定義を使うとすると、「外国投資家が株式又は持分の3分の1超を所有している企業」ということになる。

しかしこの定義では、日産自動車やラオックスのような既に海外の企業の傘下となっている企業は言うまでもなく、中外製薬やソニー、任天堂、ドンキホーテも外資系となる。三井住友フィナンシャルグループも外国人投資家が約半分を所有しているから、三井住友銀行は「外資系金融機関」となる。保険業界で大々的にCMを行っている企業の多くは外国資本の外資系だ。

一般的な「外資系企業」「外資系金融機関」のイメージとはおそらくズレているだろう。完全ではないが、むしろ「外国運輸金融健康保険組合」に所属している金融機関として考えるとイメージに近しいであろう。この定義で外資系金融機関への転職について考えてみたい。

「外資系」という会社に就職するイメージ

外資系金融機関では転職が多いと言われている。これについては「クビを切られやすい」、「使い捨てられる」といった悲観的なイメージで語られることが多いが実際はそうではない。例外となる企業は多々あるが、多くの外資系金融機関では転職することも前提で採用している。

また採用自体も部署もしくはチーム単位で行われる為、担当役員や部長が転職した際には部署ごとその企業へ転職する事も珍しくない。1つの企業で知り合った同僚が数年後には様々な企業へ転職している為、みなそのコネクションから「○○では△△のポジションを募集している」といった話が広まる。

外資系への就職とは、個別の企業への就職を意味するだけでなく、「外資系」というジャンル・カテゴリーに入った格好ともとらえられる。その「外資系」の中で様々な企業へ異動する様なイメージだ。

もっとも、上司が自分の理想の部署・チームを組むために様々な企業から人員を集める以上、上司から「欲しい」と思われる能力が認められなければ、「外資系」のムラから出ていくほかない。スキルと声をかけられるネットワーク・コネクションが重要だ。

ジェネラリスト育成の「日系」から「外資系」にどう入るか

「外資系」というと多くの人が一歩引いてしまう。しかし冷静に考えると、例えば銀行であれば、外資であろうと日本で活動している以上は日本の銀行法に束縛される。金融商品取引法も同様だ。

日本で活動をする以上、規制法は日系だろうと外資であろうと基本的には同一の規制がかかる。財務報告やリスク管理などで母国の会計基準などに合わせて送付することも当然多いが、規制当局である金融庁および日銀、各種報告は基本的に日本の会計基準だ。税金計算も日本の税法。クライアントも日本で活動する場合、母国から日本へ進出する企業の対応もあるであろうが、それ以上に海外に進出しようとする日系企業となる事も多い。外資だからと言って仕事が特殊であるわけではない。日系と基本的に同様の業務をしているのだ。

しかし「日系から外資系への転職は難しい」と言われている。その理由はパイの小ささもあるが、それ以上に日系に勤務している者が「自分が何ができるか」、また「何をしたいか」を明確に語る事が出来ない事が理由だ。

日系の多くは何でもできるジェネラリストを育成しようとするが、これは何のスペシャリストでも無いことと同じだ。外資の場合は職務に合わせて行う業務タスクが極めて細かく定められている。

少数精鋭のチームの一員として採用する場合、器用貧乏ではなく、業務タスクに対して即戦力となる人員を求められていることが多い。

また転職は当然に行う事として認識されているので、その者のキャリアとして一貫しているのか、意味があるのかも確認される。しっかりとした専門性を持ち、また将来についてしっかりと意識をしているのか、これが外資系企業へ転職する最低条件だ。

外資系といっても、日系と業務内容はさほど変わるものではない、しかし仕事に対する価値観が日系とは大きく異なる。外資系金融機関へ転職を考えるのであれば、まずは自分が今、何ができるのか、そして将来何をしたいのかを考える事が転職の最初の一歩となる。

次回は転職に向け具体的に必要な事項について考えてみたい。(岸泰裕、元外資系金融機関勤務・大学非常勤講師)

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