優良物件
(写真=PIXTA)

株価と不動産価格は、短期的には異なった動きをすることもありますが、中長期的には両者は密接に連動しています。株は景気に対して敏感に反応する資産である一方、不動産価格は景気や株価よりも1年から2年の遅行性があると言われています。今回は、株価と不動産価格の連動性について、また、株安の時に不動産投資はどうするべきかについて解説します。

不動産価格は、景気変動への反応に時間がかかる

株式は同じ銘柄の普通株であれば一株当たりの価値は同じですが、不動産はまったく異なります。物理的に同じものはなく、その価格形成も、積算価格、比準価格、収益価格などから導き出されます。さらに不動産取引は流動性が低く、景気などの変化に対する反応に時間がかかる理由となります。では、株価が上昇または下落した場合に、不動産価格にはどのような影響があるのでしょうか。

1. 株価が上昇している時

景気が良く株価が高い時は、個人でも企業でも多くの利益があがります。利益があがれば、当然多くの税金がかかります。企業は財務戦略上、多くの利益を会計的に計上しようとはしません。節税や安定的な経営のために、将来にわたって利益を繰り延べようとするのが一般的です。その際、利益を繰り延べるための一つの手段として不動産を購入することがあります。不動産を取得することで減価償却費というコストを計上できるからです。

しかし、不動産(建物)はすぐには建築できません。当然、現存する不動産に需要が集中します。需要が集中すれば価格は上がります。株価の上昇と不動産価格はこのように連動していると言えます。

また、企業だけではなく、個人投資家にも同じようなことが起こります。都心部のマンションや不動産は、株価との連動性が高いと言われます。これは株高によって資産が膨らむ「資産効果」が生まれ、富裕層が相続税の節税などを意図し、資産性の高い(将来も価格が落ちない、また値上がりする可能性のある)エリアへの不動産投資を拡大するためです。

2. 株価が下落している時

次に、株価が下がるケースについて考えてみましょう。株価の急激な下落によって、一部の投資家は手持ち資産を整理する必要に迫られることがあります。

企業でも個人でも、基本的に損失が出れば、何かの資産で穴埋めします。企業の場合は投資家や金融機関、上場企業ならば上場維持のためにも損益計算書の数字の調整目的があります。他にも資産保有リスクの調整、ポートフォリオの維持などもあります。個人ならば資産保有リスクの調整もありますし、納税額の調整、ポートフォリオの維持もあります。

また、資金を短期で借り入れて、建玉(たてぎょく:信用取引などで、売買約定したまま、決済をしていない契約のこと)を残すこともあるかもしれませんが、その場合は、他の利益の出ている資産を売却し、返済に充てる間の時間稼ぎの場合が多いでしょう。

つまり、株安で損失が発生した場合、その損失額を補てんするため不動産も売りに出されるようになります。優良な不動産でも処分せざるを得ないという事態になるのです。このため株安の後で、半年から1年後に不動産価格が下落に転じる、または局所的に(個別に)不動産売却が進む現象がみられるようになります。

株式の利益でも、不動産と同様に、キャピタルゲインとインカムゲインの2つがあります。株式市場は、時価総額の中でインカムゲイン目的よりもキャピタルゲイン目的が大勢を占めています。株式だけでなく、不動産、債券、商品など金融商品全てを対象としており、不動産価格の急激な変動の影にはこれら投資家が関連しています。

ですから、株安の時に連動して売られる不動産には、キャピタルゲイン目的の投資家が、不本意ながら売らざるをえない、もしくはポジション調整のために売却する不動産が含まれています。

アパート経営はインカムゲイン

不動産投資でも、インカムゲイン目的もあればキャピタルゲイン目的もあります。では、アパート経営はどうでしょうか? アパート経営の場合は、長期にわたって一定の家賃収入を得ることが主目的でしょう。短期間で大きく資産状況が変動するキャピタルゲインとは違い、少しずつ確実に資産が成長していくインカムゲインです。

そして、キャピタルゲイン目的の売却による一時的な不動産価格の下落は、インカムゲイン目的の投資家の絶好の買い場なのです。ですから、株安の後でやがて不動産価格が下落に転じた時こそ、優良物件が市場に増える可能性が高く、まさに購入のチャンスと言えるでしょう。(提供: 不動産投資ジャーナル

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