資格,コンサルタント
(写真=PIXTA)

4月1日から国家資格になった「キャリアコンサルタント」。どういう仕組みなのだろうか。また日本の就業環境や転職市場にどういう影響を与えるのだろうか。

2024年度末までに10万人を養成

厚生労働省はキャリアコンサルタントの養成機関として、日本マンパワーなど13機関を認定。さらに国家試験の実施機関として、特定非営利活動法人キャリア・コンサルティング協議会と日本キャリア開発協会の2機関を認定した。国家資格として初となる試験は今年夏に実施される見通しとなっている。

各機関の講座は厚労省が定める項目を満たす140時間のカリキュラムを盛り込み、試験には学科試験と実技試験がある。厚労省はその既存資格保有者の移行も含め、2019年度末までに7万9000人、2024年度末までに10万人の養成を目指している。

無資格では「キャリアコンサルタント」を名乗れなくなる

キャリアコンサルタント試験を受験するには、養成機関での講習の受講とキャリアコンサルティングに関する3年以上の実務経験が要される。

試験に合格すると指定登録機関による登録を経て「キャリアコンサルタント」資格が付与され、独占的にこの名称を用いることができる。つまりこの資格のない者が「キャリアコンサルタント」やそれと紛らわしい名称を名乗ることはできなくなる。

資格を得たキャリアコンサルタントは、守秘義務や信用失墜行為の禁止などが課せられた上で、労働者などへのキャリアコンサルティングが実施可能だ。ただし、キャリアコンサルタントの登録を継続するには5年ごとに更新を受ける必要があり、知識と技能の維持を図る目的で、厚生労働大臣指定の更新講習を受講しなければならない。

では既存のキャリアコンサルタント資格所持者はどうなるのか?

これまでキャリアコンサルティングに関する資格には、国家検定としての「国家技能検定1級・2級 キャリアコンサルティング技能士」のほか、民間資格の「標準レベルキャリア・コンサルタント」、資格はなく講習のみの「登録キャリア・コンサルタント」があった。

今回、国家資格となるキャリアコンサルタントには、「標準レベルキャリア・コンサルタント」と実質的に同等の能力範囲・水準が求められることから、3月31日までに既存の「標準レベルキャリア・コンサルタント」の試験に合格した者は、経過措置として、5年間はそのまま国家資格合格者とみなされる。

またキャリアコンサルタントの上位資格である「国家技能検定1級・2級 キャリアコンサルティング技能士」の取得者は、キャリアコンサルタント試験を免除され、指定登録機関に登録するだけで「キャリアコンサルタント」を名乗れるほか、上位資格としての位置づけも維持されることになる。

国家資格化で期待されることは何か

今回、複数ある既存のキャリアコンサルタント資格の中でも資格取得者が最も多い、つまり層の厚い「標準レベルキャリア・コンサルタント」がそのまま国家資格にシフトすることになるが、それによるこれまでにないメリットとは何だろうか。

アクシス社長で、これまでキャリアコンサルタントとして転職支援を行ってきた末永雄大氏によると、転職エージェント・人材紹介会社の事業者の中には「儲かるから」というだけの理由で異業界から参入する事業者が増えており、それらのエージェントは企業から報酬を得ていることから、求職者に向いていない企業へ誘導するケースも多いという。

そのような状況を踏まえ、末永氏は「今回の法案により、5年毎にキャリアコンサルタントの免許を更新しなければいけなくなるので、転職エージェントへのサービスレベルの向上と均質化が期待できるかもしれません」と書いている。

就業環境の改善、よりよい転職の実現というメリットも

この国家資格化に関する法律「職業能力開発促進法」では、事業主は雇用者に対して、キャリアコンサルティングの機会の確保、その他の援助を必要に応じて行うこととされている。

具体的には「キャリアコンサルティングに関する専門的な知識および技能を有する者」や「キャリアコンサルティングの専門的サービスを提供する機関」を効果的に活用することが求められる。

これが実現すれば、労働者はキャリアコンサルタントに相談しやすい環境を得られ、自身のキャリアについて積極的に考えるようになり、一方、事業主側は労働者の求めるキャリアプランに応じた事業計画を立てられるようになる。

場合によって、労働者の転職を事業主側がサポートすることもありうるが、終身雇用制や年功序列制がすでに崩壊している日本では、働きやすい環境作りや、適材適所の就業を実現する上でメリットが少なくないだろう。

少子高齢化の進む中、今回のキャリアコンサルタント国家資格化と関連法案には、労働人口減対策としての意味合いもあると考えられ、その意味で、単に青少年の適職探しというだけでなく、中高年者が働きやすい環境作りを狙ったものともいえそうだ。(ZUU online 編集部)