買い物難民,過疎化,地方創生,人口減少
(写真=PIXTA)

人口減少と高齢化社会の進行に悩む自治体の悩みに、買い物難民の増加が急浮上してきた。秋田県では県の助成で地域住民が運営するスーパーが相次いで開店した。兵庫県淡路島では、社会福祉協議会が過疎地を回る移動販売車を運行し、住民に喜ばれている。

過疎地の買い物難民対策を新たなビジネスチャンスと受け止め、民間業者の参入も目立つようになったが、急激に進む地方の衰退ですべての地域をカバーしきれないのが実情。厳しい財政事情の中、買い物難民対策に乗り出さざるを得ない自治体の苦悩もそこにうかがえる。

秋田では住民運営のスーパーが開店

秋田県が展開するスーパーは「お互いさまスーパー」の名称で、羽後町、五城目町、由利本荘市に3月、3店舗が開店した。

1号店がオープンしたのは羽後町仙道地区。370世帯約1100人が暮らす山間地で、地域唯一の食料品店「仙道てんぽ」が県の助成金800万円を受けて改修し、リニューアルオープンした。新たに産直コーナーや休憩場所の「おひさまサロン」を新設、約90平方メートルの店舗内に1000点の商品が並ぶ。

店は2003年、JAこまちの購買部が廃止されたのをきっかけに、住民らが出資金を出し合って開設していた。しかし、売り上げが次第に減少し、存続の危機が迫ってきたことから、県の助成を受けて再スタートを切った。

3地域では、買い物もままならず、自宅へ引きこもりがちな高齢者が増えている。県が店舗方式を導入したのは、そうした高齢者に店舗へ集まってもらい、交流の場にしてほしいとの狙いも込められている。

秋田県活力ある集落づくり支援室は「地域の活性化に責任を持てるのは最終的に住民だけ。そのために住民が運営する店舗方式を採用し、モデルケースとした。3店舗の運営がうまくいくようなら、さらに店舗を増やすことも検討したい」と意気込んでいる。

淡路島、鳥取で移動販売車がスタート

淡路市社会福祉協議会は2月、食料品や日用品約300点を軽トラックに積み、山間部の集落を巡回する移動販売を始めた。移動販売車は毎週月~金曜日に曜日を決めて山間部の各地区を回り、買い物難民の高齢者に喜ばれている。

市は人口約4万5600人。淡路島の北側3分の1を占め、多くの過疎集落を抱える。市社協は2014年、市内の保育園跡を利用して地域生活多機能拠点施設「いづかしの杜」を開設し、食料品や日用品を販売するとともに、調理室で弁当を作って配達してきた。しかし、高齢化が進んで買い物に来れない人が増えたため、移動販売を始めることにした。

鳥取県は、日本財団(東京)との共同プロジェクトとして新しい移動販売車を3月、江府町など4町に配備した。週に2回、生鮮食品など約500点の商品を軽トラックに積み、高齢者らの買い物を支援している。

大山のふもとにある江府町は人口約3100人。65歳以上の高齢者が43%を占め、高齢化の進行が深刻さを増している。新車両は地元で移動販売を手掛ける民間業者が運行し、江府町のほか、日野、日南、伯耆町を巡回、高齢者の見守りも進める。

鳥取県とっとり暮らし支援課は「県内は規模の小さい集落が多く、買い物弱者が増えている。移動販売車は買い物難民の高齢者にとって命の綱。民間業者が事業を継続できるよう行政として手助けしたい」と狙いを語った。

買い物難民、4年間で100万人増加

経済産業省によると、買い物難民は一般に最寄りの食料品店まで500メートル以上離れ、車の運転免許を持たない人と定義されている。経産省が2014年10月時点のデータを基にその数を推計したところ、全国で700万人が該当した。

2010年の推計値が600万人だっただけに、4年間で100万人増加した勘定だ。過疎地の人口減少で商売が成り立たなくなったり、店主が高齢化して営業を継続できなくなったりするケースが相次いだためとみられている。

買い物難民が多いのは今のところ、過疎の農村や山間部が中心だが、今後は地方都市や大都市圏でも高齢化が進むのに伴い、増加する見込み。高齢者の単身世帯が増えていることも、その傾向に拍車をかけそうだという。

ビジネスチャンスと受け止める民間業者も増加

買い物難民の増加を新たなビジネスチャンスと受け止める民間企業もある。徳島県徳島市に本社を置く移動スーパー「とくし丸」は全国27都府県で約100台の移動販売車を運行、売り上げを伸ばしている。

高知県の大豊町ではヤマト運輸(東京)が町商工会とともに宅配サービスを進めている。町内の店舗に電話で注文すれば、ヤマト運輸が自宅まで配送してくれる仕組みだ。

日本郵政〈6178〉四国支社はチェーンストア大手のフジ(愛媛県松山市)〈8278〉と連携、四国4県の一部で郵便局員が訪問して注文を取り、フジに発注したうえで局員が商品を配達している。

東北の被災地では、コンビニのセブン‐イレブン(東京)やローソン(東京)〈2651〉が、店舗のない地域に移動販売車を走らせてきた。愛知県豊田市ではスーパーのヤオミが食料品、足助商工会が日用品を積み、移動販売をしている。

しかし、人口減少に伴う商店の廃業は民間業者の新規参入を上回るペースで進んでいる。移動販売や宅配はコストがかかり、利益の薄い業態だけに、さらに人口減少が進めば手を出せない地域も増えてくるだろう。

人口減少に歯止めをかけることが難しい以上、買い物難民を解決する特効薬もない。自治体と企業が知恵を出し合い、新しいサービスを生み出す一方、住民も地域の商店や移動販売を守り育てる努力が必要だ。

高田泰 政治ジャーナリスト
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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