かつての日本ではマイホームを建てることがステータスとされていました。「新築の家」を手に入れることが、人生における大きな目標であり、実現できることが「幸福」だと思われていた時代があったのです。しかし、長らく続いたこの「新築至上主義」も、バブル崩壊後、随分と変化してしまったようです。近年では、中古マンションのリノベーションが注目を集め人気が高まっています。
そこで今回は、中古マンションのリノベーションが人気を集めている背景や魅力、今後の潮流などについて考えてみます。
中古マンションのリノベーション 人気の理由
1. 新築を購入するよりも安い
何といっても中古マンションの魅力は、新築に比べて価格が安いことでしょう。物件によっては、立地も広さも同等であるのに、価格差が数百万円になることも珍しくありません。その差額分から間取りや設備のリノベーション費用をねん出すれば、新築のように生まれ変わったマンションを手に入れることができるのです。これが、中古マンションをリノベーションする事の大きな魅力とメリットであり、人気の理由と言えるでしょう。
かつてのような「成長する経済」は、人々の住宅購入意欲を後押ししましたが、長い経済低迷期を経た今は、人々の心に先行きへの不安感が広がっています。東日本大震災の影響もあり、多額の資産を払いローンを組んで住宅を購入することは、人生におけるリスクだと考える人も増えてきています。また、土地価格や建材価格が高騰しており、新築マンションの価格は高くなっています。こうした背景から、中古マンションのリノベーションに注目が集まっていったのです。
2. 環境保護
地球環境保護の観点から、今ある住宅ストックをいかに再生利用するかが住宅市場の重要なテーマとなっています。取り壊しで多くの廃材を出し、新たに建築材料が大量に必要となる新築物件と比較すると、限りある資源を有意義に使うリノベーションは、エコロジーと言う点でも高く評価されています。
3. 欠陥マンションを回避
一級建築士による耐震強度偽装事件や、大手デベロッパーの傾斜マンション問題など、欠陥マンションの発覚が購入者の不信感を高めています。マンションに欠陥がある場合、建築後10年間で何らかの不具合が現れると言われています。建設中や新築竣工時に欠陥を見抜くことは大変難しいとされています。そのため築後10年が経過し、何も現れないマンションは欠陥のない安心できるマンションといえます。このような観点からも、中古マンションが見直されています。
中古マンションリノベーションは「注文住宅」だ
新築マンションの間取りは規格通りに造られるので、自分の理想通りにはなかなかなりません。ですがリノベーションの場合は多少の制約はあるものの、自分の好みに近づけることができます。例えば、
・ 壁一面の大きな壁面収納
・ 人気のアイランド型キッチン
・ 和室の併設ではなく、広々大空間のLDK
・ ガラス張りで開放感のあるバスルーム
・ 大きな鏡のある、ホテルのようなサニタリールーム
・ 一部屋分ぐらいの大きなウォークインクローゼット
など、既存の構造を生かしつつ全面的に変えることも可能です。つまり、マンションでありながら自分の理想の間取りを実現できるかもしれないのです。注文住宅のように自由度が高いこともリノベーションの大きなメリットとなっています。
しかし、「できること」と「できないこと」があります。リノベーションの注意点は、物件の構造による制約です。中古マンションを購入する際は、その構造をしっかりと確認しましょう。
リノベーションやリフォームの専門誌などが多く刊行されているので、それらの情報に目を通して基礎知識を得ておくのもポイントです。リノベーションの「ビフォー・アフター」や、掛かった費用、室内写真などを見てみると思わぬひらめきがあるかもしれません。
「スクラップ&ビルド」と「新築至上主義」からの脱却
新築住宅の寿命を欧米諸国と比較してみると、日本の住宅の平均寿命が30年であるのに対して、アメリカは55年、イギリスは77年となっています。これは木造住宅も含めた平均値ですが、アメリカ、イギリス、ドイツなど欧米諸国の住宅には、寿命が150年を超えるものも存在します。やはり、欧米諸国と比較して、日本の住宅は短命なのです。
また、RC造マンションの法定耐用年数は47年とされていますが、現実的には、築30年を超えるマンションは老朽マンションとして扱われて、40年以内に取り壊し、建て替えが行われます。しかし、主要構造部分である鉄筋コンクリートは本来耐久性が高くこまめな修繕と適切な維持管理を行えば、マンションの寿命は80年~100年を超えると言われています。
日本では高度経済成長の頃からまだ住める住宅も取り壊し、およそ30年サイクルで建て替えるという「スクラップ&ビルド」を繰り返してきました。「スクラップ&ビルド」とは、その言葉通り「壊して建てる」という意味です。当時のマンションブームで建造されたマンションが築40年を超えた近年、都市圏のマンションストック数が急増加しています。日本の人口減少は本格化し、既存住宅の約1割が空き家となり大きな社会問題になっています。その一方で、都市圏の住宅は供給過剰です。日本政府はこの状況を解決するため、良質な住宅を循環的に使うストック型社会に転換する方針を打ち出しています。
今後、リノベーション市場は、新築市場を超えるぐらいに活発化すると予想されています。 (提供: 不動産投資ジャーナル )
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