賃貸不動産を個人で所有している場合、法人所有に変更すると子供や妻への相続税対策になることがあります。今回は、相続税対策として賃貸不動産を個人所有から法人所有にする方法や効果について確認しましょう。
賃貸不動産を法人所有にする方法
賃貸不動産を法人所有に変更するにあたり、まずは同族会社を設立します。同族会社とは、会社の株主3人以下と、これらと特殊な関係にある個人や法人の議決権が50%を超過している会社です。例えば、賃貸不動産のオーナーとなる自分以外に、相続人となる妻や子供に会社役員兼出資者になってもらいます。
続いて個人で所有している賃貸不動産を設立した会社に売却します。賃貸不動産を法人所有にすると、個人で受け取っていた家賃収入は会社で受け取ることになり、売上計上されます。この売上から役員である自分、妻や子供に給与(役員報酬)を支払うのです。
相続税への効果
では、賃貸不動産を法人所有にすると、相続税の節税において、どのような効果があるのでしょうか。
オーナーが個人で賃貸不動産を所有している場合、その妻や子供に相続すると、相続財産として相続税の課税対象となります。多くの不動産を所有するほど課税対象が増え、相続税の負担は増えます。これをあらかじめ法人所有にしておくと、課税対象財産にならないため相続税の負担が減少します。そして、相続人となる妻や子供が法人の役員であれば、会社の経営権を獲得することで不動産という財産を引き継ぐのです。
また、賃貸不動産を法人所有にすることで、その不動産がある土地の相続税評価を引き下げられます。具体的には、土地オーナーから法人への不動産の賃貸借契約とすることで、土地の相続税評価額は約20%引き下げられます。更地である土地の相続税評価額が5,000万円であれば、4,000万円になるのです。
さらに、生前に家族などに財産を贈与した場合は贈与税の対象となります。通常は非課税となる年間110万円(基礎控除)を考慮して贈与を行います。しかし、上述のような法人の役員報酬という形式で妻や子供に支給していれば、贈与には該当しません。そのため、贈与税の非課税枠110万円にとらわれる必要がありません。
万が一、オーナーである自分が亡くなった後でも、会社を継続すれば役員報酬という形で家族に不動産による収入を支給し続けることができるので、財産相続を行うよりも合理的なのです。
法人税や所得税の節税効果もある
賃貸不動産を法人所有として家賃収入を分散化すると、法人税や所得税の節税にもなります。
家賃収入をオーナー1人で受け取ると不動産所得となり、所得税が課せられます。この時、不動産所得は家賃収入から必要経費を差し引きますが、必要経費は限定される上に家賃収入が多いと所得税の負担は大きくなります。
一方、この家賃収入を法人で受け取ると、法人の売上になります。法人税が課税されますが、売上は役員報酬という形で、オーナーである自分や役員(妻や子供)に分配し、これを会社の経費にすることができます。なお、法人所有にすると個人所有では経費とならないものも経費として扱えることがあります。
また、役員報酬は給与所得なので、最低65万円の給与所得控除があります。個人の不動産所得とする場合よりも所得税を減少させる効果があります。
不動産の法人所有にかかる注意点
上述の通り、賃貸不動産を個人所有から法人所有にすることで、様々なメリットが享受できますが、注意点もあります。
賃貸不動産を法人所有にすると、名義変更のための登録免許税および不動産取得税が掛かります。仮に賃貸不動産の固定資産評価額を5,000万円とすると、名義変更のための登録免許税が5,000万円×2%=100万円、不動産取得税が5,000万円×3%=150万円が必要です。またこの他にも、法人設立のための諸費用として20万円程度かかるので注意して下さい。
まとめ
さて、今回は賃貸不動産を個人所有から法人所有にする効果についてご説明しました。家族を役員とする法人を設立し賃貸不動産を法人所有にすると、賃貸不動産の家族への移転がスムーズとなります。これは相続税対策としてだけでなく所得税や法人税対策にもつながります。
この手法でメリットがあるのは、特に家賃収入が毎月100万円を超えるようなケースです。もしあなたの不動産収入が毎月100万円を超えているのなら、ぜひ検討してください。また、法人を設立するには費用がかかります。税理士などの専門家に相談した上で、どれくらいの期間で諸費用を回収できるか確認した上で方針を決めてください。(提供: 不動産投資ジャーナル )
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