利回り
(写真=PIXTA)

安倍政権は本格的なデフレ脱却に向け、約3年前から日本銀行による「量的・質的金融緩和」と呼ばれる大規模な金融緩和を実施してきました。先月からは銀行が日銀に預けている当座預金の一部の金利をマイナスにする「マイナス金利政策」が実施されています。

こうした状況を受けて一部の不動産投資家の方々は、「今が投資をするには絶好の機会」ととらえているようです。

今回は不動産価格や表面利回りの動向をみながら、マイナス金利導入後の不動産投資についても考えてみたいと思います。

中古マンションの価格上昇に陰り? 価格推移から読み取れる高止まり

政府主導による日銀の「異次元緩和」や2020年の東京オリンピック需要、さらには都市部での地価上昇、資材や人件費の高騰による建築コストの上昇が影響して、不動産価格は上昇を続けてきました。

しかし、ここにきてその状況が徐々に変わりつつあります。

投資用不動産の中でも人気が高い中古マンションの価格は、大阪市や名古屋市の中心部で築浅物件の取引数が増加したことから上昇傾向を維持し、価格水準も一段と高まっています。首都圏や東京都全体でもわずかに上昇はしているのですが、東京23区だけで中古マンション価格を見てみると連続上昇が19か月でストップしました。特に都心5区(中央区、千代田区、港区、文京区、渋谷区)では下落率が拡大しています。

主要都市別に見ると、横浜市やさいたま市、千葉市でも価格が軒並み下落していることから、上昇し続けてきた中古マンションの価格にも一服感が出始め、高止まり傾向にあることが読み取れます。

一方、首都圏での新築マンション平均価格は2015年よりも減少しています。建築費が高騰しているため、高額で販売せざるを得ない新築マンションの供給を、デベロッパーが自らブレーキをかけたからだと思われます。

表面利回りが低下傾向、その理由とは?

現段階で投資用不動産の価格に高止まり傾向が見られるのは、都心5区や主要都市の一部だけと言われています。

一般的な傾向として、都会の収益物件は利回りが低く、地方の物件は利回りが高く設定されています。都会の収益物件は、ロケーションが良ければ空室が発生してもすぐに次の入居者が決まるので、空室リスクは低いと言えます。またもともとの地価も高いので、物件価格は高額に設定されることになります。

それに加えて、安倍政権による異次元緩和で不動産投資に資金が集まるようになり、市場参入者が増えたことから、東京都内の物件価格は都心5区などの一部地域を除いて上昇傾向が続いていました。様々な不動産投資情報サイトが調査を行っており、東京23区内の区分マンションのうち、城北・城東エリアが利回りの高い傾向にあります。しかし、その上昇率は全体的に小幅となっており、「上値がやや重くなってきた」と市場関係者は捉えているようです。

その一方で、価格が高騰し過ぎた結果、消費者の購入意欲が落ちて、値下げしないと売れない状況となる地域もあり、家賃価格は物件価格ほど上昇しなかったため、都心の物件の利回りは低くなってきたのです。

投資用1棟不動産のアパートやマンションの表面利回りは?

投資用に1棟まるごと運用するアパートやマンションの利回りは高止まり傾向にあると言われています。この理由は、高価格帯の取引が多かったことや、2020年開催予定の東京オリンピックに向けて、Airbnbなどの訪日外国人向け民泊型宿泊施設の需要とした民泊事業の拡大を見込み、マンションを丸ごと1棟買い取ってリノベーションするような新しいビジネスに人気が集まっている影響などが考えられます。

近頃耳にする機会が増えた民泊については、現在政府が中心となって法整備を進めています。1棟マンションの場合、まるごと手に入れてしまえば、民泊ビジネスで生じやすい近隣住民からのクレームなどのトラブルを軽減できる可能性が高いので、人気が高まっているようです。また、施設面積や受付の設置に関する緩和法案が2016年4月に改正、実施されたことにより、さらに人気が高まることが予想されています。

今後の表面利回りはどうなる

マイナス金利政策の影響を見極めながらになりますが、当分の間、利回りは低下した状態が続くと予想されます。今後、首都圏で不動産投資を検討されている方は、表面利回り低下の原因が、物件価格の上昇なのか、賃料の低下なのかを見極めながら、情報収集を十分に行った上で投資に取り組まれることをお勧めします。(提供: 不動産投資ジャーナル

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