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(画像=Webサイトより)

すさまじい勢いで産業テクノロジーが進化しつづける近年、スイスのUBS銀行が人工知能(AI)の普及と過剰なコネクティビティー(通信ネットワークなどとの接続性)が、今後多方面に及ぼす影響を検証するレポートを発表した。

UBSは「産業にロボット技術を取り入れることは経費削減や仕事の効率化につながる」と利点を評価する一方で、産業のロボット化が人間(特に未熟練労働層)から職を奪うだけではなく、そうした動きが引き起こす経済的不平等が貧富の差を拡大させ、いずれ政治情勢を緊迫させかねないと警告している。

ロボットの侵略に最も影響を受けるのは自動車産業

ロボット化とコネクティビティーを「第4産業革命」として取り扱ったこのレポート内では、すべてがネットワークで接続され、ロボット化されることで生じる人員削減やサイバーリスクの増加のほか、それによって生じる貧富の差や政治情勢の悪化への懸念が論じられている。

確かにこのままロボット化が進めば、未熟練労働層人口が高い新興国で失業率が急騰することは想像するに容易い。新しい技術をうまく導入する資力や能力を持たない国が「負け組」、柔軟性に富んだ労働力、人材育成力、インフラストラクチャー、規制などを統率できる国が「勝ち組」になり、国同士の摩擦が表面化しても決して不思議ではないだろう。

レポートは最も失業率が高くなるセクターとして自動車産業とIT産業を挙げており、公共産業や金融、レジャーなどがそれに続く。具体的な国の格差については世界経済フォーラムによる「国際競争力レポート」のデータを用い、欧米やアジアの先進国がロボット化と共存可能な環境に恵まれており、ブラジル、ペルー、アルゼンチンといった発展途上国は苦戦を強いられると推測している。

UBSは自らの死をもってチュニジア全土に大規模な反政府デモを引き起こしたモハメド・ブアジジ氏の不幸な例を挙げ、「負け組に属するしかない人々は過激な行動に走らざるを得ないかも知れない」とレポートを結んだ。( FinTech online編集部