あきんどスシロー
(画像=Webサイトより)

全国で回転寿司店を展開する「あきんどスシロー」がIPOの準備に入ったことが4月22日、ロイター通信社により報じられた。これによると、スシローの保有ファンド、ペルミラ(コード:PERM.UL)が引受会社を選定するという動きに入ったとのこと。今回は回転寿司の業界分析と同業他社の比較からスシローの強み・弱みを分析していきたい。

安いのは当たり前!付加価値が求められる回転寿司業界

まずは近年の回転寿司業界の傾向を分析したい。現在公開されている回転寿司業界の決算書数値を拾うと、やはりネックとなっている部分は「低価格戦略による競合」により、利益率が非常に低くなっている点だ。同業他社との価格競争がある中、さらに消費者にとって回転寿司=一皿100円前後、というイメージも定着してしまっている現在、メインの寿司を値上げして利益を確保することは非常に難しい。

そのため、タッチパネル注文の導入などによる人件費の削減や、ラーメンやどんぶり物、デザートなど100円寿司以外に高利益な商品を組み入れることにより収益性を確保している、というのが業界全体の傾向だ。そういった中でどのように差別化を行い、収益を確保していくかが業界全体の課題となっている。

あきんどスシローの現状と上場背景の分析

次に、あきんどスシローの過去の社歴経緯と、現在おかれている状況について解説する。1975年にあきんどスシローのベースとなる個人営業の寿司屋「鯛すし」が創業し、その後いくつかの店舗やテイクアウト業態を経て、現在のあきんどスシローの前身となる法人「株式会社すし太郎」が1984年に設立された。

事業は順調に展開を進め、2000年に法人屋号を現在の「株式あきんどスシロー」に変更を行い、2003年に東京証券取引所 二部に上場を行う運びとなった。その後、紆余曲折を経て2008年に株式会社エーエスホールディングスがあきんどスシロー株をTOB(株式公開買い付け)を行い、2009年に上場廃止をした経緯がある。

上場廃止後は株式の転売により、現在はイギリスのファンド「ペルミラ・アドバイザーズ」の系列子会社がスシローの株式を保有しており、今回このファンドが上場の準備に入っている、というのが現状だ。

ここで注視したい現状は「ペルミラ・アドバイザーズ」がプライベート・エクイティ・ファンドであるという点だ。プライベート・エクイティ・ファンドとは、投資家から集めた資金を元に株式の過半数取得を行うことにより経営に参画、その後会社業務を健全な状態に建て直し、IPOを発行することで利益確定を行うという形で運営をされているファンドである。

つまり、今回「あきんどスシロー」がIPOによって再度市場に流通することになるが、それは見方を変えるなら業績改善を行うファンドが「現状での経営改善を終えた」というサインであると考える。

通常、IPOにより株式上場を行う際は「市場から経営に対する設備投資を行う資金を調達する」というのが本来の目的である。しかし投資家から資金を集め、また金融機関からの借入を行う事によりレバレッジを掛けることにより潤滑な資金を保有しているプライベート・エクイティ・ファンドが保有する企業が上場するとなると話は変わってくる。

これはいわば「利益確定」プロセスへの移行であり、言い方を変えるならば「現状で上場を行ってもマーケットはプラスの評価を行い、自社の保有株式価値も相対的に上がる段階だ」という判断を下している、ということの表れに他ならない。

かっぱ寿司との明らかな違い

あきんどスシローを同業の他社比較する上で欠かせないのが、「コストカッター」と呼ばれる流通・品質管理システムである。これはあきんどスシローが特許をとっているシステム(特許番号:3607253)だ。回転レーン上の寿司皿消費量や種類、時間・曜日ごとの販売傾向などを全てシステムに蓄積するというもので、これをベースに寿司の供給品目や販売戦略の企画を行う。

特許取得により同業種ではこれと同じシステムは導入することができず、顧客分析という点においてあきんどスシローは頭一つ抜けているというのが現状だ。各店舗のデータはクラウドシステム上に集積され、そこからITを駆使してさまざまな分析を行い、収益率を最大限効率化している。先に述べたとおり商品価格で差がつけれない現状の中でこのリードは想像以上に大きい。

またターゲットとしている顧客層も、現在の日本の経済情勢に沿っているのも魅力の一つだ。例えば、かっぱ寿司の場合、追加注文を通常の皿ではなく新幹線に載せて配送したり、小学校の近くなどに店舗をつくるなどして「子供向け」の顧客取り込みを行っている。

一方スシローは創作メニューやキャンペーンで「大人を飽きさせない」というコンセプトの上で経営を行っており、徐々に経済状況が回復してきているということになっている日本の現状には追い風であると考える。

こういった現在注目が集まっているITシステムを組み込んだ上でのIPOというのは非常に注目もあつまりやすく、スシロー自体もネームバリューがある企業なので、見通しは明るそうだ。あとは初期公募価格がいくらになるかであるが、大手のプライベート・エクイティ・ファンドが主導でプランを引くとなると、このあたりで失敗する可能性も低いと見て問題ないだろう。

先の展望は分からないが、面白い方向で推移する可能性は高いので、今後も引き続き推移を見守っていきたい。(土居 亮規 AFP、バタフライファイナンシャルパートナーズ)

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