東京一極集中化が叫ばれて久しいが、経済誌「フォーブス」がまとめた日本長者番付2016をみると、トップ50にランク入りした大富豪のうち、東京都出身が最多の7人となった。人口規模が最大で、ビジネス環境が整い、中央省庁の役所も集中する大都市が、億万長者を誕生させる土壌となっているのか。

今回は、フォーブスのランキングをもとに、出身地域と長者番付との関連性を探っていく。なお、一部トップ50にランクインした中で、出身地が判明しない場合と外国出身者を除いた数字をまとめた。

トップの東京に続いたのは?

トップ50にランクインした東京出身者のうち、最上位の6位となったのは森トラスト <8961> の森章社長で資産額はなんと5424億円。森ビル創始者の森泰吉郎氏の三男で慶應義塾大学出身と、絵に描いたようなエリート育ちだ。森氏に続いたのは10位にランク入りしたセブン&アイ・ホールディングス <3382> の伊藤雅俊・名誉会長(資産額4407億円)で、こちらも慶應出身。この他は、光通信 <9435> の創業者である重田康光・代表取締役会長兼CEOが資産額2599億円で16位に入った。さらに興味深いのは、トップ50にランクインした東京出身者のうち、半数以上の4人が慶應義塾大学を卒業している。

東京都出身者がトップ50のうち最も多いが、その他の首都圏出身の大富豪は意外にも少ない。東京都に次ぐ人口を抱える神奈川県から長者番付に名を連ねたのは、人材派遣のテンプホールディングス <2181> の篠原欣子会長のみで、資産額904億円の47位。

埼玉県出身者は、衣料チェーン・しまむら <8227> の創業者である島村恒俊氏で資産1525億5000万円(28位)、千葉県出身は、ファッションサイトZOZO TOWNを運営するスタートトゥデイ <3092> の前澤友作社長(資産2486億円、17位)のそれぞれ1人ずつにとどまり、首都圏だからといって必ずしも億万長者になるために有利に働いているという訳ではない事情が浮かび上がる。

東京の7人に対抗するのは、西日本最大の商業都市・大阪と思いきや、そのお隣である兵庫県の出身者が6人で、出身者都道府県別では2位となった。その顔ぶれをみると、トップ10に3人がランク入り。

サントリーホールディングスの佐治信忠会長が資産額1兆3221億円で3位、電気機器のキーエンス <6861> の創業者の滝崎武光氏が資産額9379億円で4位、楽天 <4755> の三木谷浩史社長が6441億円で5位と続いた。商人の町・大阪は、mixi <2121> の笠原健治会長が資産1593億3000万円で27位にランク入りするなど、都道府県別では3位となる3人がトップ50に名を連ねた。

億万長者は西高東低 トップ10には地方都市出身者が3人

上位50位を都道府県別でみると、東京、兵庫、大阪の大都市出身者が長者番付に多くランク入りしているが、トップ10に注目すると、そのうち3人は東京・愛知・大阪の3大商業圏以外の出身だ。

長者番付トップとなったのはユニクロを展開するファーストリテイリング <9983> の柳井正会長(資産額1兆8419億円)は、山口県出身。父親が同県で営んでいたユニクロの前身となった衣料店を一代で世界的な衣料チェーンに育て上げたことは周知の事実。2位はソフトバンク <9984> の孫正義社長(資産額1兆6837億円)で、出身地は佐賀県。8位には群馬県出身、パチンコメーカー・SANKYO <6417> の毒島邦雄名誉会長(資産額4633億円)がトップ10入りを果たした。

柳井・孫両氏に続いた兵庫出身の3人と、トップ5は西日本出身者が独占。トップ50を見渡してみても、出身地が判明した億万長者のうち、25人が西日本、19人が東日本出身と西高東低の傾向が表れた。さらに地理的に分析すると、北海道、本州、四国、九州とすべての地域の出身者が長者番付のトップ50に入った。

一方で、ランク入りした人たちの出身地は47都道府県のうち23都道府県にとどまり、億万長者を輩出していない県が半数にも及ぶのが実態だ。

東京の優位は揺らがず、地方出身者にはカリスマ性

フォーブスの長者番付トップ50からは、東京出身者が最多を占め、東京一極集中化が進むなか、改めてビジネスにおいて首都の優位性が示された結果となった。一方で、東京以外で、大規模な人口を抱える都市が、必ずしも人口に比例した億万長者の数を輩出していない結果から、お金持ちになるチャンスは大都市だけに限られたものではないだろう。

しかし、地方都市出身の場合、ファーストリテイリングの柳井会長やソフトバンクの孫社長など、飛び抜けたカリスマ性を兼ね備えていることが、億万長者となるには欠かせないということは明らかだ。(ZUU online 編集部)