ビットコインをはじめとする仮想通貨に貨幣機能が認められそうだ。仮想通貨が、法定通貨との交換や、物を売買する際の決済に利用できるとする資金決済法の改正案が成立する見通しである。
法改正の動きと並行して、ビットコインで用いられている「ブロックチェーン」と呼ばれる記録・認証の技術について、複数の金融機関が実証実験を進めていることが報じられている。
ビットコインは特定の管理者や発行者が不在であることが最大の特徴だ。仮想通貨の取引を記録する台帳は、世界中に分散する不特定多数のデジタル端末により管理・維持されている。その透明性を担保する技術の名称が「ブロックチェーン」で、革新性と利便性に注目が集まっている。
住信SBIネット銀行は台帳処理を担うシステムを「ブロックチェーン」に置き換える実験を促進。三菱東京UFJ銀行は独自の仮想通貨「MUFGコイン」の実証実験に着手している。資金決済法の改正と併せて、仮想通貨をめぐる社会環境が著しく変化しようとしている。
それでは、価格変動の幅を目的とする投機や、オンライン上の各種決済ではないところで、実際に仮想通貨を貨幣の代わりに利用している人はどの位いるのだろうか。都内有数の繁華街である六本木エリアのビットコイン取扱店で実際の利用状況を調べた。
「ハッカーズバー」ではお客の約1割弱がビットコイン支払
東京ミッドタウンの向かい側、沢山の飲食店が入居するビルの一室にある「Hackers Bar(ハッカーズバー)」では、IT技術に精通したプログラマーが、カウンター越しにプログラミングの技を披露してくれる。オーナーの中尾彰宏氏は「プログラミングで、お客様の課題を解決したいという思いがあります」と出店の動機を話す。店を訪れる客は一般客と同業者(IT関連)が半々くらいで、最近は同業者の数が若干多めとのこと。
ビットコイン決済は2014年10月に導入した。「便利な点としては決済が速い。クレジットカードは読み取り機を通して、署名したり暗証番号を入力したりする煩わしさがありますが、ビットコインはスマホでQRコードを読み取る瞬間に決済できます。慣れると、決済が圧倒的に速い」(中尾氏)。
同店が採用している決済サービスは「coincheck」。店がデジタル端末上で金額の「レジ打ち」を行なうと、ビットコインの送り先となるアドレスと、それを示すQRコードが画面に表示される。ハッカーズバーを訪れたお客はスマホでQRコードを読み取る。決済サービスの画面上では、その時点での円換算の金額が表示される。
「ビットコインはお客様の1割弱が利用されます」と中尾氏。ビットコインは比較的、外国人客の利用が多いという。約2000円から約4000円の幅の支払が多く、これは店の平均客単価に近い決済金額である。
ビットコイン利用者が1割弱である点について、中尾氏は「かなり多い方だと思います」とした上で、同店でのビットコインの決済は「これからも増えていくと思います」と話す。また、改善点として、「通貨としての親しみやすさを持たせるために、具体的な物に置き換えたり、トークンのように見せる仮想の視覚情報として置き換えたりができると、分かりやすくなるのはないでしょうか」と同氏は語った。
クラフトビールとピザの人気店、月平均7万円~8万円のビットコイン決済
「Two Dogs Taproom」は六本木3丁目にある、クラフトビールと窯焼きピザが名物の飲食店だ。2013年11月に開店後、主に30代~50代の会社員、OLを中心に賑わっている。六本木という土地柄もあり、店を訪れる客は日本人と外国人が半々くらいだそう。
「ビットコインは2014年の夏頃に導入して、現在は月平均7万円~8万円程が支払われています」(マネージャーの宮崎健二郎氏)。店の売上に対しては、かなり少額となっているそうだ。「ビットコインで支払うかどうかは別として、ビットコインに興味を持っている人が多いという印象があります」(宮崎氏)。
同店もビットコイン決済サービスには「coincheck」を採用。クレジットカードと比べた場合の手数料の安さが魅力に映るという。利用者側の作業としてはQRコードを読み取らせなければならないが、クレジットカード決済時の署名や暗証番号入力の手間と、それほど大きな差はないものと見られている。
ビットコインは決済時に「coincheck」上で円に換算されて、後日、店の口座に同額が入金される。店としては、支払いを受けたビットコインを長期間、保有するのは避けたいので(価格変動幅が大きいため)、決済時に円換算される決済サービスの存在は役立つものであるが、その後の円での入金の責任も、決済サービスの運営会社にあるために、「仮に毎月のビットコイン売上がクレジットカード決済に並んで数百万円に上るとした時には、店にとってのリスク面が大きくなるのではないでしょうか」と宮崎氏は見解を話す。
六本木エリアでビットコインを使える店が増えれば、それは街の活性化にもつながると思います、と宮崎氏は補足する。ビットコインと、実店舗での対面の決済は、けっして親和性が高いとは言えないが、六本木という街とビットコインは相性が良いのではないか、という印象を持っているそう。
日本初のビットコインレストラン、ATM両替と支払に実績
六本木五丁目交差点の近く、飲食店やオフィスが入居するロアビル地下の「The Pink Cow」は日本で初めてビットコインを導入したレストランだ。五つ星ホテルでの調理経験を持つシェフが供するカリフォルニア料理に舌鼓を打ちながら、音楽やアートを楽しめる人気店である。
ビットコインは2014年から導入。同店の寺岡直哉氏は「ビットコインは店内に置いているATMでの両替と、会計時の支払いの2通りの利用があります」と説明する。月に1回、ビットコイン利用者の集まりが催されており、その日には30~40人分の料金が支払われる。ATM両替は1日に1件以上がある。
「他にも5~10人程で、会計時にビットコインで支払う団体客の利用が、月に2件程はあります。個人でビットコインを使う人も週に4~5人はいらっしゃいます」(寺岡氏)。
同店でのビットコイン利用者は外国人が多いが、日本人にも定期的にビットコインを使う人がいるとのこと。最近は、決済の仕方が分からないけれどもビットコインで支払いをしてみたい、という客も来店するそうで、寺岡氏は「ビットコインに興味を持つ人が増えている」と感じている。
これから周辺にビットコイン取扱店が増えるかどうかを聞くと、「使い勝手の良さが分かれば、あとは店のオーナー次第ではないでしょうか」と寺岡氏。仮想通貨の関連事業は誰にとっても新しい金融サービスであるために、利用できる環境にある人は、まずは使ってみる、という姿勢が大切なのかもしれない。
国内ではビットコインの取扱店舗が少ない上に、IT関連の仕事に就いている人や、ビットコイン事業の関係者や個人投資家、外国でビットコインの利用に慣れている人からの支払いが多いという印象だ。
資金決済法の改正により、ビットコインは日常での存在感を増すことができるのだろうか。消費者保護を前提とする、ビットコイン事業者の役割と責務は大きいと言えるだろう。(提供= FinTech online )
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